事例. 11 学校法人村上学園高松高等予備校 香川県 教育・学習支援業(学校教育) ポイント @ 「コミュニケーション」を大切にして、職場定着を図る A マンツーマンで支援し、頻繁に声をかける B 様々なことをやってもらう。最初は簡単なことから 経営者の声 理事長 村上 良一さん  16年ほど前、九州の障害者支援施設の理事長から頼まれ、知的障害者を受け入れることにしました。私がその施設の理事を務めていたこともあり、「やってくれないか」ということでした。他の企業では引き受けにくいと思われる方々を受け入れることにしました。  「何とかしてやらないと」という気持ちと「社会で役立つように」という気持ちで取り組んでいます。  本校には生徒のための寮があるので、その寮で本人たちの衣食住をまかない、生活支援を行っています。皆、本当に純粋で主寮長さん、寮母さんをはじめ、職員は皆、本当によくやってくれるので、とても助かっています。忍耐強く教えていくことが大切だと考えています。最近は、特別支援学校からも実習生を受け入れており、新しく採用した職員たちは自宅から通勤しています。障害者雇用にとって、私は「奉仕」の精神が大切だと考えています。本人のいいところを見ながら、一人ひとりが奉仕の気持ちを持ってくれたら、障害者雇用は進むと考えています。 職務内容と工夫 1 マンツーマンでの指導、頻繁に声かけ 障害のある職員だけでなく、全員に対して礼儀・挨拶・社会常識・時間厳守(10分前行動)を指導している。障害のある職員に対しては、配慮はするが特別扱いはしない。西田英二さんの担当業務は館内清掃、トイレ清掃。この寮に来て16年が経過した。 2 簡単な業務から取り組み、職務拡大へ  大高尚子さん(入社3年目)は、特別支援学校では清掃しか習つていなかったが、採用後は寮母さんの指示の下で調理補助を担当している。時間をかけて習熟していくことを目指している。「楽しく仕事をすることができています」とのこと。  末永昭ーさんも、この寮にきて16年が経過した。担当業務は草刈り、館内清掃。「これからもこの寮で、仕事をしてい きたい」 雇用管理担当者の声 総寮長 石井 孝明さん  休日には一緒に買い物に行ったり、大阪のテーマパークに行ったり、障害のある職員の結婚の仲人もやったこともあります。「中途半端なことはしない」、「最後まで面倒をみる」という気持ちで取り組んでいます。  ご家族とも緊密に連携しています。また、本人の将来のことを考え、年金で生活できるよう給与、貯金、私学共済、保険等の世話もしています。寮生にも、障害のある職員にも、みな「平等」を心がけ、生活習慣の細かい部分まで全部、支援しています。寮長というのは空気のような存在でいるのが一番いいと思っています。 現場担当者の声 屋島寮寮長 森下 誠司さん  寮生たちや、障害のある職員たちと毎日、寝食をともにしています。最初は簡単な仕事をやってもらいますが、本人が持っている能力を、最大限に発揮させてあげたいと思って取り組んでいます。「親代わり」という気持ちで取り組んでいます。  必要な時には注意することもありますが、本人の笑顔を見るのがうれしく、上手にできたときは、「できたんや!」と言って一緒に喜びます。時間が経過すると習熟していくものだと考えています。頻繁に声をかけ、声に出してはっきりと伝えることに気をつけています。 従業員の声 勤続3年目 松岡 大地さん  仕事は楽しくやっています。寮長さんはやさしいです。休日は友達と一緒に遊んだりしています。このまま、ここでがんばっていきたいです。 活用した制度 特になし 活用した支援機関 特になし 労働条件等:週36〜40時間勤務、正社員 法人データ ■ 学校法人 村上学園高松高等予備校 ● 所在地 香川県高松市 ● 従業員数 160人 ● 障害者雇用者数 6人 ● 障害種別 知的障害、身体障害 ● 事業内容 予備校 事例. 12 学校法人九州アカデミー学園 佐賀県 教育・学習支援業(学校教育) ポイント  @ 障害を意識することなく、能力や経験を重視して採用 A 通院と体調に配慮した勤務条件により能力発揮と継続雇用につなげる 経営者の声 学園長 温湯 勝相さん  当学園では当初、障害者雇用を積極的に進めようと考えていたわけではなく、12年ほど前に特定の経験を持った人材を募集したところ、それがたまたま内部障害のある方であったということです。また、私も、当学園に転職した後の10年ほど前に内部障害を発症しました。2人とも、人工透析のため週3日通院する必要があり、その日は早めに勤務を終えるといった配慮がなされていますが、その他では障害があるからという特別な違いはありません。  教育業界では、少子化の影響で、特に地方では生徒の確保に苦戦しているところが多いように思います。教員など特定の資格や経験を必要とする職種も多く、また、一人ひとりに割り当てられる分担も多くなるので、小さい規模の学校では、障害者雇用が進みにくい環境にあると思いますが、職務・職責を全うさえできれば、障害の有無は採用の基準に無関係です。その後の継続雇用についても、同様に全く影響はありませんし、持てる能力を十分に発揮できると考えています。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定等  Aさんは、鍼灸師科の教員として入職して12年目であり、8年前からは責任ある役職に就いている。 腎臓機能障害により人工透析のため通院して21年になるが、以前は特別支援学校で8年間ほど鍼灸関係の教員をしており、当学園に転職する際には既に腎臓機能障害があった(その点は採用時に全く影響がなかった)。 当学園の鍼灸師科は、学科長を含め専任の教員が5人と教務事務員が1人の体制であり(非常勤講師を除く)、国家試験合格率と進路決定率100%を目指して推進するなど、カリキュラムの工夫・充実を図っている中で、Aさんは教員としての講義に加え、学生に対する補講や役職者としての業務も行っている。  Aさんは、現在、人工透析のため週3日自宅に近い病院に通っているが、Aさんの知識や経験を最大限活かすために、Aさんの希望や体調を尊重した勤務条件が設定されている。一方で、人工透析のない日には、特段の支障なく職務を遂行している。 2 通院・体調に配慮した勤務条件 ● 通院日は概ね15時半までの勤務 ● 実技に関する講義・指導は行わない、代わりに個別の補講等を担当 ● 通院のない日はフルに講義、夜まで補講を行う場合あり ● 学園内の諸会議は通院のない曜日に設定 3 定年後の継続雇用  当学園は、現在60歳定年制で、希望すれば65歳までの継続雇用制度があり、さらに継続して働くことができる。 温湯学園長については、50歳代に当学園に転職し、定年後の継続雇用で勤務している時に人工透析を受けるようになったが、それからさらに10年ほど経過した現在も継続して学園長という重責を担っている。  このように、能力や意欲があれば、障害の有無や年齢に関わりなく働くことができる環境である。 当学園では、鍼灸師科や柔道整復師科を有している関係から、スポーツクラブの活動に力を入れているほか、地元のプロサッカーチームとタイアップしたスポーツトレーナーインターンシップも行っている。 従業員の声 勤続12年目 Aさん  人工透析のため、何事も通院することを軸とした生活になっています。学園は自宅から自動車で40〜50分程度の距離ですが、通っている病院は自宅のすぐ近くです。通勤の高速道路料金は自己負担になりますが、障害者割引が利用でき、通院のためにはこの方法がよいと考えています。  週3回の透析のある日は、15時半までと早めに勤務を終えますが、病院までの移動と5時間の透析で、帰宅が夜遅くなる場合が多くなります。勤務は午前8時半開始で、透析の翌朝は体調がよくないので通勤は辛いですが、午後には回復し、夕方以降は逆に調子がよくなることが多くなります。  また、通院しない日の負担が大きくなるので、健康・体調管理には十分気を配っています。インフルエンザ等の感染症リスクを抑えるためにも、電車やバスではなく自動車で通勤しますし、学生には予防などを徹底しています。学生には、うるさい先生と思われているのではないでしょうか。  体調に考慮して、通院の翌朝の勤務開始時間を遅らせたり、夜の勤務負担を軽くしたりすることは、学園も提案してくれていますが、当面は考えていません。体力が続く限りはできるだけ長く今と同じ状態で勤務を続けたいと考えています。  以前は特別支援学校で勤務していましたが、職務の性質上、地方の規模の小さな学校で障害者雇用を進めるのは、正直難しい面があると思います。一方で、能力さえあれば、障害の有無や年齢にかかわらず仕事ができる面があると思います。国家試験合格率や進路決定率など、学園としての高い目標があり、経営陣からのプレッシャーもありますが、自分だからできるというやり甲斐と責任感をもって仕事に臨んでいます。 活用した制度 特になし 活用した支援機関 特になし 労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 学校法人九州アカデミー学園 ● 所在地 佐賀県鳥栖市 ● 従業員数 75人 ● 障害者雇用者数 2人 ● 障害種別 内部障害 ● 事業内容 専門学校(医療、看護、福祉の3校)の経営、歯科医院、老人福祉施設、保育園等のグループ施設あり 事例. 13 医療法人清和会 奈良県 医療・福祉(医療業) ポイント @ 法人トップの考え、理念を現場で受け止め、安心して働くことができる環境を整備 A 本人の状態を見極め、配置転換や勤務時間の調整により職場定着 経営者の声 理事長 国分 清和さん  当法人のように、職員に対する目が行き届く事業所規模の場合、トップの考え方に左右されますので、理念が大事だと思います。  私は、各施設長を集めた会議などで、「障害のある方が働けるように、まずは自分たちの取り組める範囲から協力しよう」と発信しています。言い続けることも必要です。  現場の職員は協力的で、障害のある方が働きやすい環境づくりを進めてくれています。  これからも、障害のある方の能力や特徴、得意なことを活かし、伸ばしていく取組を進めていきたいと思います。障害のある方にも、自分の適性を見つけ、自信をもって働いていただければ、幸せにもつながるのではないかと思います。 職務内容と工夫 1 担当職務の設定(Aさん)  身体障害(心臓機能障害)のあるAさんは、医療施設で看護師として勤務している。  他の看護師とほとんど差異はないが、重労働を制限したり、夜勤・早出勤務を免除したり、勤務時間や定期通院できるようにといった配慮を行っている。 2 担当職務の設定(Bさん)  知的障害のあるBさんは、介護補助員として働いている。 入職前は、ハローワークや特別支援学校、就労支援機関とのチーム支援により、仕事内容を相談し、マニュアルを整備した。 利用者の食器洗いからスタートし、現在では、食事の配膳、トイレ・お風呂への誘導、清掃などに従事している。  利用者とコミュニケーションをとり、「ありがとうございました。またいらしてくださいね。」といった見送りも行っている。 3 担当職務の設定(Cさん)  精神障害のあるCさんは、ケアワーカーとして、食事の世話やトイレ・お風呂の介助、おむつ交換といった入所者30数人の介護全般の業務を行っている。  体調の変化が激しくなる場合もあるので、日々の体調確認に留意し、事務局長や上司(副主任)による相談体制を整備している。また、身体的・精神的負担に配慮し、仕事内容を変更したり、勤務時間を調整したりといった工夫を行っている。職場内での障害情報の開示について、最小限にとどめるといった配慮も行っている。 4 マニュアルの整備  Bさんの採用当初、指導者が細かく指示をしていたが、時間の区切りごとに職務を固定化しマニュアルとして明確にすることで、Bさんは仕事を覚えやすくなり、指導者はお互いの状況に応じて声かけをしやすくなった。  雇用後3年が経過する現在はマニュアルを活用しなくても順調に職務を遂行できている。 5 配置転換と勤務時間の調整  Cさんについては、以前は訪問入浴介護の担当だったが相手方家族や3人1組での仕事にストレスが生じたため、施設内介護の担当に配置換えを行った。勤務時間も15時30分までに短縮し、本人の体調を等に配慮している。 雇用管理・現場担当者の声 事務局長 石橋 昭さん  知的障害のある方は、特別支援学校の先生から配慮が必要な事項について教えてもらい、受け入れました。  本人と仕事がマッチングし、今は環境に馴染んで、自分の役割を全うしています。法人トップや現場の理解もあり、思っていた以上に良い方向に進んでいますし、本人も一歩一歩成長しているように感じます。  精神障害のある方も、同じように良い方向に進んでいると思いますので、本人と職場が相互理解を深められれば、雇用によるメリットがさらに大きくなると思います。難しい点は、本人の障害の情報を、どの範囲まで公開したらいいのかという点です。葛藤はありますが、最小限にとどめ、本人の希望に沿って働きやすいようにしています。  本人たちも利用者の方々と積極的に関わり、誠意をもって支援してくれているので、職場も明るくなったと感じます。これからも、本人たちと相談しながら、また、特別支援学校や就労支援機関と連携をとりながら、一歩一歩焦らず着実に取り組んでいきたいと思います。 従業員の声 勤続2年目 Cさん  以前は訪問入浴を担当していましたが、今は入所している方々の身の回りのお世話をしています。疲れて辛くなる時もありますが、上司が「辛い時は言って」と常々言ってくれているので、安心して働くことができます。職場に理解してもらっているという安心感があり、「こんなことを相談していいのかな。言ったらどう思われるだろう。」という不安や遠慮なく、困ったことの相談ができるようになりました。  これからも、疲労やストレスを溜めないようにし、焦らないように臨機応変に対応できるよう気をつけながら、自分のできることを増やしていって、将来的にはケアマネージャーの資格取得を目指したいと思います。また、障害のある者に理解のある企業が増え、働きやすい環境になることを期待します。 活用した制度 職場実習 活用した支援機関 ハローワーク、特別支援学校、職業能力開発校 労働条件等:1日6時間、週5日間勤務、契約社員(Aさん、Bさん) :1日8時間、週5日間勤務、契約社員(Cさん) 法人データ ■ 医療法人清和会 ● 所在地 奈良県奈良市 ● 従業員数 102人 ● 障害者雇用者数 4人 ● 障害種別 身体障害(心臓機能障害)、知的障害、精神障害 ● 事業内容 医療施設・介護老人保健施設の運営等 事例. 14 社会福祉法人紀伊松風苑 和歌山県 医療・福祉(社会保険・社会福祉・介護事業) @ 障害者雇用を進めることで、企業全体の離職率が大幅に減少 A マニュアルの整備とマンツーマン指導で職域拡大とキャリアアップ 経営者の声 総施設長 横山 マリコさん  障害者雇用に当たっては、「自分たちで仕事をしている」と、本人に感じてもらうことが大切だと考えています。  当法人は1948年に認可された救護施設等をルーツに、「人を育てる」ことに力を注いできました。「自立」を念頭に置き、様々なことを試して課題が出てきたらその都度改善をしていく、というスタイルで雇用を進めています。  現在、当法人では奨学金を負担してベトナムからの留学生を迎え入れていますが、障害者雇用の経験が、外国人に対する教育に非常に役立っています。マンツーマンで指導し、複数の指導者が指導方針を共有するといった方法、マニュアルにはルビを振る・短文にする・動詞文にするといった配慮が共通しています。  障害者雇用を進めたことで、組織に多様性が生まれ、全職員の人材育成につながりました。離職率が大幅に減少したのです。  今後は、障害のある職員が介護記録を書けるようになるまで成長していけばいいなあと考えています。介護記録を書くには、業務上の改善点を考えて文章を書くという難しさがあるのですが、育てていきたいと思っています。 職務内容と工夫 1 手厚い新人教育。マンツーマンで指導を実施。  マンツーマン指導により、指導者は障害のある職員の気持ちがわかってくる。指導をどのようにしていけばよいかを考え、自身のスキルアップを実感することもできる。  田中さんは介護職としてフルタイム勤務。ヘルパー2級の資格を所持。現在は移乗介助とおむつ交換を担当。 2 業務の習熟度に合わせて勤務時間を拡大。本人の職域拡大を図る。  藤本さんは介護補助職として、車いすの掃除、シーツ交換、施設清掃等を担当。  採用当初は対面型の業務を担当するのは難しい状況だったが、次第に苦手だったコミュニケーションをとることができるようになり、約4年後にフルタイム勤務となった。 雇用管理担当者の声 介護士長 小浦 直子さん  障害者雇用では「壁」というものは、思ったほどないと考えています。  障害者雇用を進めたことで、周囲の職員が試行錯誤して考えていくようになり、既存の職員の能力も確実に伸びています。 現場担当者の声 主任 山ア 浩祐さん  支援機関や学校の先生と連携して、必要な改善を進めてきました。キャリアアップは本人のモチベーションの一つなっています。 従業員の声 勤続5年目 藤本 太輔さん  介護補助職として勤務しています。半年前からフルタイム勤務となりました。増えた給料で父と旅行したり、貯金したり、MT車の免許を取得したいと思っています。 従業員の声 勤続2年目 田中 友章さん  職場実習を経て、卒業後に介護職として採用になりました。利用者の方が笑顔になってくれるのがうれしく、いずれは食事介助の業務も担当したいと思っています。 活用した制度 ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、地域障害者職業センター 労働条件等:1日8時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 社会福祉法人 紀伊松風苑 ● 所在地 和歌山県和歌山市 ● 従業員数 208人 ● 障害種別 身体障害、知的障害、精神障害 ● 障害者雇用者数 5人 ● 事業内容 特別養護老人ホーム、ショートステイ、ホームヘルプサービス、デイサービス、地域包括支援センター、救護施設かつらぎ園、認知症対応型共同生活介護事業、事業所内保育施設、小規模多機能型居宅介護 事例. 15 株式会社美交工業 大阪府 サービス業(その他の事業 サービス業) ポイント @ 職務内容を細分化することにより効率的な職務設定が可能に A 専任支援者の配置による社内体制作りでトラブル発生を未然に防止 経営者の声  専務取締役 福田 久美子さん  はじめは当社での障害者雇用の導入は難しいと考えていました。清掃業務の特徴で本社と現場が物理的に離れていますし、障害のある方への知識が少なく不安だったからです。  障害者雇用に本格的に取り組んだのは「大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)*」との出会いがきっかけです。エル・チャレンジとの連携を通じて、経営者と現場の意思疎通を図るための社内体制を作りましたし、雇用継続には不可欠な日々発生する問題への支援も得ることができました。  当社では、障害者雇用をどうメリットにつなげるかを考え戦略的に取り組んできました。社内の意思疎通をスムースにするための体制作りは会社の空気を良くし、従業員満足度の向上につながりました。これは結果的には顧客満足度にもつながっていると捉えています。また、中小企業にとって「雇う力」は生き残り問題ですが、固定概念を崩して新たに組みなおすという障害者雇用における職務設計の方法は、今後の人材確保に活かせるノウハウだと考えています。 *大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)  社会福祉法人 大阪手をつなぐ育成会、社会福祉法人 大阪市手をつなぐ育成会、株式会社 グッドウィルさかい、株式会社 ナイス、社会福祉法人 精神障害者社会復帰促進協会、一般社団法人エル・チャレンジを組合員とする障害者の就労支援団体 職務内容と工夫 1 職務の細分化により効率的な職務設定  同社では、一日の清掃工程を「掃除機かけ」「トイレ清掃」「フロア清掃」「階段清掃」「手すりや備品の拭き掃除」などに分類し、一つの工程をさらに細分化している。これにより、障害のある従業員の適性に合った職務設定ができ、効率的な職務遂行につながっている。  例えば、視覚情報の多さがパニックとなる特性のある山口さんは、階段清掃を専門に職務担当とすることで集中した取組が可能となっている。  また、トイレの個室清掃を苦手とする従業員がいた際は「トイレ清掃」工程のうち「洗面台側」を専門とし、別の従業員に「個室側」を担当させていた。  このように、「障害特性」「得意な職務」を見極めることと、職務の再構築により「一人分」の業務量を設定でき、戦力となっている。 2 本社と現場の温度差を解消するための受入体制  障害のある就業員の受入を現場の大きな負担にしないための体制として、障害について知識のある「専任支援者」を配置している。専任支援者がいることで、障害のある従業員それぞれの特性に適した指導や、トラブル発生時の臨機応変な対応が可能になっている。  また、本社人事担当者による現場巡回や社外の支援者も含めた定期的な打合せによって、専任支援者が悩みや課題を抱え込むのではなく全社的に取り組む体制を整えている。 雇用管理担当者の声 総務主任 佐藤 弘美さん  会社全体の労務管理を担当しています。労務管理ではどんなトラブルでも早期対応がポイントになりますが、障害者雇用も同様です。早く対応するには、現場と人との間に信頼関係が成り立っていることが大切で、それには「今どうにかして欲しい」という訴えは後回しにしません。  また、経営者に早めにこまめに相談できることも私にとって重要です。企業規模の小ささを活かして柔軟で臨機応変に動けることはメリットだと考えます。 従業員のみなさん 勤続 7年目 向山 実さん 勤続 12年目 西尾 誠剛さん 勤続 12年目 山口 篤一さん 勤続 1年目 前田 海さん 勤続 12年目 守岡 章さん (左から) 大阪市庁舎の清掃を担当する従業員のみなさん 活用した制度 トライアル雇用、ジョブコーチ支援 活用した支援機関 ハローワーク、障害者の就労支援団体* 労働条件等:1日6時間、週5日間勤務、正社員 法人データ ■ 株式会社 美交工業 ● 所在地 大阪府大阪市 ● 従業員数 129人 ● 障害者雇用者数 23人 ● 障害種別 知的障害、身体障害 ● 事業内容 ビルメンテナンス業 パークマネジメント