事例. 1 製造業(その他の製造業) 株式会社常磐谷沢製作所 相馬事業所 福島県 経営者の声 所長 宍戸 隆秀さん  当社では、主力工場である茨城工場で障害者雇用に積極的に取り組んでいますが、そこでは障害のある社員が組立作業やフォークリフトでの運搬作業に従事していることから、当事業所でも障害者に活躍してもらえるのではないかと思い、雇用を考えることにしました。  全盲の方を採用したのですが、最初に本人専用の簡単な作業用治具を用意する必要があったことと、作業を覚えるのに少し時間がかかったこと以外は、特段困ったことはありませんでした。一般には視覚障害者には工場勤務はできないと思われがちですが、船迫さんは当社にとって欠かせない戦力になっています。本人の人柄も明るく前向きで、仕事にも熱心に取り組んでくれるので、職場の雰囲気がとてもよくなりました。  当事業所では、障害者雇用をしているという特別な意識はありません。周囲の社員が自然体で受け入れていることが、よい結果につながっているのだと思います。 直面した課題と対応策 社内の理解促進 事業所として初めての障害者雇用であったため、社内の理解を得られるか不安があった 障害者雇用の方針や採用する障害者の障害特性について全社員に説明した上で、社員からヒアリングを実施 職務選定と作業環境の整備 視覚障害者が単独で従事できる作業の選定と環境整備を行う必要があった これまでパート従業員が行っていた一連の作業工程を分割し、補助者なしで従事できる作業を見つけ出した 本人が単独で作業できるようにするための簡易的な治具を社内で作成 保護ベルト(命綱のこすれ防止)の組み立ての治具(手で長さがわかるようになっている) 保護ベルト(命綱のこすれ防止)を左図の治具にセットした状態 職場環境の整備 初めての会社勤務であり、単独で通勤できるようになることが課題であった 日本盲導犬協会の支援を受け、盲導犬と通勤する訓練を受けた 事業所内での移動や備品へのアクセスが安全にできるよう工夫する必要があった 事業所内に導線を設置したほか、備品に点字シールを貼付 Point ■ 視覚障害者が補助者なしで作業できるよう環境を整備 ■ 社内を安全に移動できるようにするための環境整備を家族の協力を得ながら実施 取組みの詳細 【全社員への説明とヒアリングを実施】 ・障害者雇用に取り組むにあたって、会社としての方針、採用する障害者の障害特性などについて、全社員に直接説明した上で、社員からも意見を聞いた。なお、障害特性や配慮すべき事項については、採用する障害者が通所していた障害者支援施設の職員に確認した。ていねいな説明を行ったこともあり、社員からは大きな反対は出なかった。 【事業所内の移動を安全・円滑にするための工夫】 ・作業場から食堂への移動など、事業所内の移動を安全に、円滑にできるよう、事業所内に導線を設置したほか、ロッカーやタイムレコーダーなどの社内の備品や自動販売機に点字シールを貼付した。なお、これらの工夫は、障害のある社員の家族の協力を得て行った。 【単独通勤の支援】 ・日本盲導犬協会から盲導犬の貸与を受けるとともに、盲導犬とともに通勤する訓練を受けた。1カ月あまりの訓練で単独で通勤できるようになり、それまで片道1時間以上かかっていた通勤時間が片道40分程度に短縮された。 通路に埋め込んだ導線 ビニールひもを活用した導線 点字の写真 導線の写真 【障害のある社員の声】 船迫 ひかるさん (視覚障害 勤続3年目)  入社当初は、部品の裏表を手触りで判別するのがむずかしくて苦労しましたが、会社の方が見本を用意して手に触れながら教えてくれたので、今では一人で作業できるようになりました。就職面接会で、いくつかの会社から、全盲の人にはどうやって仕事を教えていいのかわからない、と言われましたが、この会社ではていねいに仕事を教えてくれたのでありがたく思っています。 ● 事業所データ ■ 所在地…………福島県相馬市 ■ 従業員数………36名 ■ 事業内容………産業用ヘルメット、乗用車用ヘルメット、安全帯、換気用 風管、担架などの製造 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…2名 ■ 障害種別………身体障害 ■ 業務内容………製造作業 ■ 労働条件等……週20時間勤務 事例. 2 製造業(その他の製造業) 株式会社杢目金屋 東京都 【経営者の声】 管理部 部長 八木 信三さん  当社の代表が、創業前に障害のある人が作業しているところを見学し、障害のない人と同じように仕事ができることを実感したことがあり、機会があれば障害のある人を採用したいと考えていました。  当社の制作部門は「分業化」と「見える化」により、大学卒、専門学校卒の若い社員がすぐに戦力になれる仕組みを作っています。障害のある人を受け入れるときに、地域障害者職業センターにどのような作業で受け入れたらいいか助言を受けました。そののち、就労移行支援事業所から就労を希望している人を推薦してもらい、職場体験実習を実施し、トライアル雇用で採用しました。  最初は、口調や言葉遣い、どんな話題で声をかけたらよいのか分からなかったのですが、作業日報を活用して体調や作業の感想を書いてもらうことで、本人の理解を深めることができました。  採用した障害のある人は予想以上に戦力として活躍しています。また、さまざまな特性のある社員を雇用することでチーフのマネジメント能力が向上しています。直接障害のある人を部下にもたない社員も気配りの心を持つようになりました。  今後も障害のある人の雇用を進めていきたいと考えています。知的障害のある人の雇用も考えたいですが、経験がないので、作業体制や指導体制をどのように進めるとよいか検討が必要と考えています。 直面した課題と対応策 従業員の戦力化 障害者を戦力として活用したかった 従来から行っている業務の分業化に加え、障害者個人のスキルの上達度がわかるスキルマップシートを活用 「障がい者雇用促進室」を設置し、企業在籍型ジョブコーチ研修を修了した専任指導者がマンツーマンで指導 職場定着のための工夫 どのようにコミュニケーションとればいいかわからなかった 作業日報を活用して、体調の変化や指導した内容が伝わっているかを確認 職場での面談(月1回)、支援機関の職員が同席しての面談(不定期)を実施 体調を崩しがちな障害者がいた 専任指導者が仕事中に声かけし、体調面や精神面の変化を把握 体調の変化に自分で気づけるようにするため、睡眠時間や気分などを自分で記入するセルフケアシートを導入 Point ■ 制作部門の「分業化」、「見える化」に加え、専任指導者による個別指導で戦力化 ■ 作業日報、スキルマップシート、セルフケアシートを活用して業務の理解度、体調を把握 取組みの詳細 【分業化、見える化、個別指導による戦力化】 ・従来から制作工程を分業化しているため、障害者が従事する業務の切り出しがしやすかった。また、スキルが向上した場合に次の工程ヘステップアップすることも可能であった。 ・業務の進捗状況や自分のスキルの上達度を把握するために「スキルマップシー ト」(P41参照)を活用した。作業工程をどこまでできるか自己評価し、上達度を見える化することでやりがいを持てるよう工夫した。 ・「障がい者雇用促進室」を設置し、企業在籍型ジョブコーチ研修を修了した専任指導者が、マンツーマンで金属への火の当て方、加工の仕方など実際にやり方を見せながら指導を行った。 【作業日報やセルフケアシー トで体調の変化を把握】 ・作業日報に今日の目標、行った作業、結果、感想、体調などを記入している。日報の内容や体調に関する自己評価をふまえ、専任指導者の評価と違いがあれば、本人に声かけをして体調の変化や作業の理解度を確認している。 ・他の社員と同じような仕事の割り振りをしてしまし\障害者が負担に感じたことがあった。そのため、月1回職場で面談を行うほか、専任指導者が朝礼・終礼時や仕事中に声かけを行し\表情が暗い、口調が普段と違うなど体調面や精神面の変化を把握することとした。 ・体調を崩しがちな障害者がいたため、職場定着のために自分自身で健康状態をチェックできるようにセルフケアシー ト(P39参照)を導入した。睡眠時間や食事、今日の気分などを記録し、それに対しとのようなケアをして効果があったなと推移がわかるようにしている。 担当者の声  作業日報の活用や日々の声かけ、月に1回の面談を通じて、障害のある社員の人となりを理解できたと思います。就労支援機関も定期的に障害のある社員をフォローしてくれて助かっています。みなさん、丁寧な仕事ぶりで当社の戦力となっています。 【障害のある社員の声】 北原 宏樹さん (勤続6年目)  地金の切り出し、加工を担当しています。お客様から喜びの声をいただいたときに、やりがいを感じます。品質が安定するよう作業をしていきたいです。 Aさん (勤続5年目)  地金の仕込み、磨き作業を担当しています。磨き残しや汚れが残らないように丁寧で速い作業ができるようになりたいです。就業時間を配慮してもらっているのがありがたいです。 ● 事業所データ ■ 所在地…………東京都渋谷区 ■ 従業員数………184名 ■ 事業内容………伝統技術「木目金」を用いた結婚指輪の企画・製造・販売 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…6名 ■ 障害種別………精神障害、発達障害 ■ 業務内容………制作部門 ■ 労働条件等……1日5時間15分 6時間、週5日、正社員 事例. 3 製造業(その他の製造業) 株式会社呉竹 奈良県 【経営者の声】 代表取締役社長 綿谷 昌訓さん  呉竹では、機械で製造する製品以外に、手作業で一つひとつ仕上げる工程もあり、例えば箱折りや袋入れ、ラベル貼りなど、さまざまです。それらの一部を知的障害の方が担当してくれています。  ただ、誰でも得手不得手はあります。集中力が続かないこともあります。  知的障害者の方を受け入れて気づいたのは、誰にでもそうした個性があるということです。工程の中の危険性にはどんなものがあるのかを常に考えさせてもらいました。これまでは作業者のスキルだけでこなしてきたことを、どんな人でもできる作業にするという課題を見つけさせてくれたことが良かったのではないかと思います。そして、その作業の監督者に対して、ダイバーシティの意識、仕事の教え方、育成の仕方を学ばせる機会をいただいたと思っています。  障害者の方が、いかに社会人として仕事をし、自立していくかを考えることが会社の宿命と考えています。さまざまな仕事を経験してもらい、その方の特性を生かして適材適所に配置し、誰もが安全に仕事ができる環境と、誰もがどんな仕事もできるような職場づくりをしていきたいと考えています。いわゆる、属人的な仕事の仕方ではない体制であり、中小企業だからこそ、縦割りではなく横断的に人員配置できるような体制をつくることが理想です。 直面した課題と対応策 従事する職務の選定 作業で使用する機器、用具等でけがをしないように、安全確保が課題だった 新しい職務を増やす時には、障害者の配置前に、総務部の担当者が作業場所で直接見て、安全性を確認 一人ひとり得意・不得意があるので、どのような作業で能力を活かせるかわからなかった さまざまな作業を体験させてみて適性を判断 職場定着のための工夫 職場の担当者と上手に関係構築ができないことがあった 採用後1年間は、障害のある者だけのグループに配置 専門の指導担当者が障害者を指導・育成 適性をみて、各部署に配置 長期勤務者の高齢化により、老眼や集中力低下などの問題が見られるようになった 作業環境の改善、業務や勤務形態の見直しにより、働き続けられるよう支援 Point ■ 採用後は、専門の指導担当者がきめ細かに指導、育成 ■ 高齢化した社員にも、職場環境の改善や勤務形態の見直しなどにより支援 取組みの詳細 【安全確保への対応】 ・作業の切り出しに当たっては、安全面に問題がないか、作業場で実際に作業工程を見ながら十分確認するようにしている。また、作業途中で特に注意を必要とする事項があるときは、写真付きのわかりやすい資料を作業場に掲示して、注意喚起を行っている。 【指導担当者の配置】 ・以前は、社内のいろいろな部署に障害者が点在していたが、職場の担当者と上手に関係を築けないことがあったので、採用後1年間は研修期間として、障害者だけを同じ部署に配置している。 ・この部署には、専門の指導育成担当者を配置しており、作業の指示、作業の進捗管理のほか、例えば身だしなみのチェックなども毎日行っており、障害者を育成している。 ・また、いろいろな仕事に挑戦し、仕事の幅を広げる努力もしている。 【長期勤務者への対応】 ・高齢化により、老眼、集中力低下といった問題がみられたことから、スタンドライトの設置により照度をあげて見えやすい環境に改善した。また、同じ作業を継続するのではなく、作業を切り替えることで集中力の低下を防止した。さらに、家族も含めて相談し、勤務時間を短縮したり、休日を増やしたりして、疲労から回復しやすくした。 【障害のある社員の声】 Hさん (勤続1年目)  はじめはできないことが多くて、泣いてしまうこともありましたが、教えてもらいながら少しずつできるようになってきました。楽しく働いています。 担当者の声  入社当時は、自分で決めるということができず、全て周りの人任せでした。しかし、社会人として働く以上、たとえば「明日、お休みをしたい」ことなどを自分で伝えられるようにならなければなりません。まずは、「自立」してもらおうと、自分の言葉で話してもらいやすいように心がけ、時には厳しく、時には褒めて、じっくり待ち、向き合いながら接してきました。入社直後は「うん」か「いいえ(首を振る)」しか言葉がありませんでしたが、今では自分の気持ちをゆっくりですが伝えられるようになってきました。仕事(作業)をするだけでなく、一社会人として呉竹で成長してくれたら嬉しく思います。 ● 事業所データ ■ 所在地…………奈良県奈良市 ■ 従業員数………261名 ■ 事業内容………墨、書道液、書道用品、筆ぺん等の製造・販売・輸出入 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…6名 ■ 障害種別………知的障害、聴覚障害 ■ 業務内容………製造業務、包装の業務、箱詰めの業務、事務 ■ 労働条件等……1日8時間、週5日(契約社員、パート)、1日6時間×週4?5日(パート) 13 事例. 4 情報通信業(情報サービス業) 株式会社サイバーコネクトツー 福岡県 【経営者の声】 代表取締役 松山 洋さん  当社では社員数の増加に合わせて障害者の採用を進めてきましたが、一時期定着できず法定雇用率をクリアできていない時期がありました。  以前、仕事にうまくなじんでいたと思っていた精神障害のあるスタッフがある日突然離職してしまったことがあります。  開発中のゲームに不具合が無いかをチェックする業務だったのですが、他スタッフとのコミュニケーションも必要な部分があり、本人にとっては想像以上にハードルが高く、悩んでいたことが後になってわかりました。  それ以降は障害の特性を踏まえた業務内容や部署配置、段階的に業務を調整するなどの対応を行うようにしています。  結果、現在では障害のあるスタッフにも定着してもらえるようになっています。  当社が障害者を雇用しているのは法定雇用率をクリアするためだけではありません。  障害のあるスタッフにできる仕事をどんどんやってもらうことによって開発スタッフが本来やるべき仕事に集中することができ、効率化につながっています。  また、社員が以前と比べ気配りができるようになったと感じています。  今後は開発部門にも障害のあるスタッフを積極的に配置し、活躍できる環境を作っていきたいと考えています。 直面した課題と対応策 従事する職務の選定 障害のある社員が配属される部署内の業務だけでは、担当させる仕事の量が十分でなかった 総務課から社内の各課に対し、専門的知識がなくても行える作業の提案を行うよう依頼し、十分な量の作業を確保 職場定着のための工夫 雇用していた精神障害者が職場のコミュニケーションの問題で離職したことがあった コミュニケーションが負担になる障害者の採用時には、負担とならない業務の従事から始め、段階を踏んで業務の幅を増やしていった コミュニケーションが苦手でない社員についても、就労支援機関との定期的な面談や社内サークル活動への参加などにより、悩みを抱え込まないような環境づくりを行った Point ■ 社内の各部署に専門的知識がなくても行える作業の提案を依頼 ■ 最初はコミュニケーションがあまり必要ない業務から始め、徐々に業務の幅を拡大 取組みの詳細 【社内の各部署に作業の提案を依頼】 ・障害のある社員を配属する際に、配属部署の総務課内だけでは週40時間勤務に相当する業務量の確保がむずかしい状態だった。 そこで総務課より各課に対して、専門職以外でも行える各課の業務を提案してもらうよう依頼を行った。 集まった業務について、各課の担当者からヒアリングを行った上で、業務レベルを合わせた選定を行い、業務を確保した。 【障害特性を踏まえた職務設定】 ・以前、ゲーム開発を行う部署に配属していた精神障害者がコミュニケーションの問題で離職したケースがあったことから、コミュニケーションが苦手な障害者を雇用した際は、まずは清掃や軽作業などコミュニケーションをあまり必要としない業務から始め、名刺作成や事務書類作成など徐々に難易度を上げながら、業務の幅を広げていくことにした。 ・現在、精神障害を持つ社員1名を開発部署に配属している。この社員はコミュニケーションが苦手ではないものの、就労支援機関との定期面談の実施のほか、社内サークル活動に参加してもらって他部署のスタッフとも積極的にコミュニケーションをとってもらっている。 困っていることや悩んでいることを抱え込まない環境づくりを行っている。 【障害のある社員の声】 Aさん  元々ゲームをプレイすることが好きで、ゲーム関連に携わることができる仕事を求人で見つけ応募しました。現在デバッグ業務に従事しています。物事を伝えることや覚えることが苦手なところがあるのですが、職場の上司、同僚の方からこちらのペースに合わせて話を聞いてくださるので助かっています。 Bさん  社内の環境整備のほか、名刺のデータ登録などの事務補助業務に従事しています。コミュニケーションが苦手なので、電話応対は外してもらっています。頼まれた業務に対してお礼を言われるなどにやりがいを感じます。 Cさん  書類整理や来客準備を始め、社内設置している書籍の登録・差し替えなど総務業務に従事しています。現在では内線の応対もできるようになり仕事の幅が増えてきました。業務説明の際に写真入りの手順書があったので、理解しやすかったです。 ● 事業所データ ■ 所在地…………福岡県福岡市 ■ 従業員数………192名 ■ 事業内容………ゲーム製作 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…4名 ■ 障害種別………身体障害、知的障害、精神障害 ■ 業務内容………業務部(事務補助)、開発部(開発補助) ■ 労働条件等……週30時間勤務 事例. 5 運輸業,郵便業(道路貨物運送業) 株式会社ジーマック 沖縄県 【経営者の声】 代表取締役社長 新垣 善博さん  障害者雇用の最初のきっかけは法定雇用率の達成に向けた指導があったからですが、その後は、法令遵守は企業の責任と考えて徐々に雇用数を拡大してきました。  当社は運輸業ですので、敷地内は多数のトラックやフォークリフトが常時運行しています。安全確保には特に気を遣いますが、大型車両の通行がないピッキングエリアであれば障害者を雇用していくことができるだろうと判断し、雇用を開始しました。  実際に雇用してわかるのは、障害の有無で区別する必要がないということです。十分に育成していけば、障害のある方であっても、他の社員と同様に働くことができます。当社では、障害の有無の区別なく、実績次第で雇用形態などの変更を行いますし、業務経験が長い社員による新人への教育も行われています。  最近は物流量が増えており、とにかく人材が不足しているなかで、障害がある方も十分戦力として当社を支えてくれています。 直面した課題と対応策 社内の理解促進 障害のある社員と周囲との間でうまくコミュニケーションがとれなかった ジョブコーチが個人ごとの性格や留意点の一覧を作成し、コミュニケーションを円滑化 特に、日常的に業務指示を行うリーダーには、障害特性についての理解を促進 従事する職務の選定 敷地内は多数の車両が運行し、安全確保の面で不安があった 配置する職場として車両の運行がなく、比較的安全なピッキングエリアを選定 職場定着のための工夫 職場定着を推進するためモチベーションの向上を図りたかった 能力を適正に評価し雇用形態や勤務時間の変更によるキャリアアップを図ることによりモチベーションを維持・向上 Point ■ ジョブコーチが作成した障害のある社員ごとの性格・留意点一覧を参考にコミュニケー ションを円滑化  ■ 能力が高まれば、雇用形態をパートから準社員に変更、勤務時間も見直し 取組みの詳細 【ジョブコーチによる支援】 ・徐々に障害者数を増やしていくなかで、障害がある社員と周囲とのコミュニケーションが課題となった。このため、地域障害者職業センターのジョブコーチに支援を依頼した。 ・ジョブコーチに、障害がある社員ごとの性格と接する際の留意点を一覧にしてもらい、その一覧を参考に障害がある社員と接するようにしたところ、コミュニケーションを円滑にすることができた。 【安全確保への対応】 ・敷地内は多数のトラックやフォークリフトが運行していることから、安全確保が第一と考え、障害者のために新たな職務を切り出すのではなく、既存業務のなかから、安全性の高いピッキングエリアでの業務を障害のある社員に担当させることとした。 ・現在は、ピッキングエリアの棚に商品を補充していく業務を担当している。 【モチベーションの維持・向上のための工夫】 ・パートとして採用するが、業務遂行能力が高くなったと判断できれば、準社員に変更する。勤務時間もフルタイムになるので、社会保険にも加入できる。この取扱いは、障害の有無にかかわらず同じである。 ・また、障害の有無にかかわらず、経験を積み、業務に精通した先輩社員には新人への教育を任せている。 ・こうした取組を通じて、社員のモチベーション維持、向上につなげている。 【障害のある社員の声】 Aさん (勤続8年目)  採用から8年間がたちました。最初はピッキング業務を担当していましたが、現在はピッキングに必要な商品を棚に補充していく業務を行っています。この業務に就いた頃よりも業務量も、担当できる商品範囲も増えました。  採用されたとき、人間関係がうまく築けるか不安である旨を職場に伝えていたところ、配慮してもらえました。今では、メンバーと冗談を言い合ったりすることもあり、職場の雰囲気には満足しています。 ● 事業所データ ■ 所在地…………沖縄県浦添市 ■ 従業員数………330名 ■ 事業内容………道路貨物運送業 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…7名 ■ 障害種別………知的障害、身体障害 ■ 業務内容………ピッキングエリアでの棚補充業務、ドライバー ■ 労働条件等……一日8時間、週5日、準社員