事例. 6 運輸業,郵便業(道路貨物運送業) 三共貨物自動車株式会社 茨城県 【経営者の声】 専務取締役 小倉 麻利江さん 当社は、創業時より地域や社会への貢献を社是としており、障害者雇用もそのひとつとして取り組んでいます。  ハローワークからの勧めもあり、平成19年に、初めて知的障害者を雇用することとしましたが、社内で懸念や反対を示す意見がなかったわけではありません。しかしながら、職場実習として受け入れた障害のある方たちと実際に接してみることで、社員も理解を示し、採用に前向きになりました。今では、全社的に、障害のある社員に気配りできる職場になっています。 執行役員 青木 英樹さん  以前、地元の知的障害者支援施設に作業を依頼した際、障害者が一生懸命に働く姿に大変感銘を受けました。この体験から、当社で最初に障害者を雇用しようとなったとき、その支援施設から職場実習を受け入れることとしたものです。  採用後、社員からの作業指示が障害のある方にうまく伝わらないなど、苦労もありました。その後、社員のほうでも丁寧に接するようになりましたので、障害のある方も落ち着いて仕事ができるようになりました。今では、当社の戦力として活躍しています。 直面した課題と対応策 社内の理解促進 はじめての障害者雇用を前に、社内に懸念や反対の声があった 地元の支援施設で見た障害者の仕事ぶりについて幹部から社員に説明 まずは職場実習として受け入れてから雇用することで社内のコンセンサスを獲得 従事する職務の選定 採用した障害のある社員の個々の能力を最大限に活かせる仕事がわからなかった 配送センターの仕事の中から切り出した作業を原則すべて体験させて、その中から担当業務を決定した 職場定着のための工夫 知的障害者への作業方法、手順などの指示の仕方がわからず、指示どおりに作業させることができなかった 周囲の社員が、丁寧でわかりやすい指示の仕方を身に付けたことで、障害者の理解も得られるようになった スムーズに作業が進むよう全員が見られるスケジュール表で各社員の作業と時間を管理 Point ■ わかりやすい指示、スケジュール表での作業管理により、作業の円滑化を実現 ■ 各人の能力に合わせた職務の選定と段階的な職務の拡大で職業能力を向上 取組みの詳細 【社内の理解を得るための工夫】 ・はじめて障害者を雇用しようとした際には、社内からの懸念や反対の意見もあったが、障害者の働きぶりを知っていた幹部が、障害があっても十分に活躍できることを社員に説明した。 ・まずは職場実習として受入れを開始することで、社内の理解を得た。実習受入れ後、一所懸命に働く実習生の姿をみて、社員も採用に賛成するようになった。 【職務の選定】 ・配送センター内の作業のなかから、知的障害のある社員であっても担当可能と思われる作業を幅広に洗い出し、原則すべての作業を全員に体験させ、各人の得意・不得意を見きわめてから担当する作業を決めている。 ・経験を積むにつれ、徐々に他の作業も担当させ、複数の作業がこなせるようになるよう取り組んでいる。経験豊富な社員が後輩に作業の仕方を教えるなど、障害のある社員同士が助け合うような関係も構築されてきている。 【作業指示の際の工夫】 ・知的障害者へ作業の指示は、できるかぎり丁寧に行うこと、短くわかりやすい表現で伝えること、言葉だけでなく作業場所で実演することなどに配慮している。障害のない社員のなかには、これまでは自分の仕事しか関心がなかった者もいたが、障害者を雇用するようになってからは、困っている者をみかけたら声かけするなどの気配りができるようになった。 【作業の進捗の見える化】 ・次に何をするのかわからないということがないように、①各社員が自分が行いたい作業と時間を選択し、他の社員と調整した上で、②全員が見られるスケジュール表で管理することとした。これにより、作業がスムーズに進むようになった。 【障害のある社員の声】 Aさん (勤続5年目)  5年前の特別支援学校卒業後すぐに入社しました。現在は配送センターで商品の搬入・仕分・搬出などを担当しています。商品は箱詰めされた菓子類です。カゴ台車に積んで運びますが、台車いっぱいに積み込むと重くなり運ぶのがたいへんです。  楽しいと感じるのは、ドライバーの人や他の社員とコミュニケーションが取れたときです。会社のみなさんは優しいです。これからもここで働いていきたいと思います。 ● 事業所データ ■ 所在地・・・・・・・・・・茨城県桜川市 ※取材した岩瀬営業所の所在地 ■ 従業員数・・・・・・・380名 ■ 事業内容・・・・・・・自動車貨物運送事業、ロジスティック事業等 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…12名 ■ 障害種別………知的障害、肢体不自由 ■ 業務内容………スーパー配送センターにおける商品搬入・仕分・搬出等、資源リサイクル作業(ビン・缶・ペットボトル等の選別等) ■ 労働条件等……パート契約。短時間勤務等あり。 事例. 7 卸売業,小売業(建築材料,鉱物・金属材料等卸売業) 株式会社リソーシズ 香川県 【経営者の声】 営業企画部 部長 多田 光昇さん  障害者雇用のきっかけは、特別支援学校の進路指導の先生から高等部の生徒の職場実習を依頼されたことです。当時は障害者を雇用した経験がなかったことから、不安を感じていた社員もいましたが、実習生の勤務態度がとても良好だったので、社員の不安は払拭されました。実習生は、卒業後当社に就職し、現在も活躍しています。また、これを契機に、その後も特別支援学校の卒業生を中心に障害者の採用を続けています。  当社はリサイクル事業を行っていますが、人材を募集してもなかなか応募者が集まらない悩みがあります。障害のある、なしに関わらず、当社で働くことを希望してくれる方はとても貴重だと感じています。  障害のある方を雇用したことで、他の社員にとっても働きやすい職場環境の整備につながったり、真摯に作業を行う姿が他の社員の刺激になったりと、よい影響もありました。  当社は自治体からの業務の受託などにより存立していることから、率先して地域貢献すべきと考えています。今後とも、障害者を含め、何らかのハンディを持った方に雇用機会を提供することで、地域に貢献していきたいと考えています。 直面した課題と対応策 社内の理解促進 初めての障害者雇用にあたり、どんな仕事をどこまでできるのか不安があった 本格採用前に職場実習を行うことで、職務への対応能力、良好な勤務態度等を確認することができ、社員の不安も解消された 作業環境の整備 下肢障害のある社員にとって、床でのビン選別の作業はむずかしかった 大型の作業台を設置することで、床での作業をなくし、すべて台上で作業できるようにして身体的負担を解消 周囲の機械などに気をとられ、作業に集中できない障害者がいた 作業に集中できるよう、本人の周りに囲いを設置 職場定着のための工夫 離職を防ぐためにも、ストレスを感じさせず、無理なく働ける方策を検討する必要があった 作業量の達成率による賃金格差や、処理台数などの目標設定はしないで、ストレスなく働けるようにしている 暑さ対策として屋根に高性能断熱材を導入 Point ■ 職場実習を活用することで社内の障害者雇用に対する理解を促進 ■ 障害特性による個別の課題を解決するための環境整備を実施 取組みの詳細 【採用前の職場実習の実施】 ・障害者雇用に対する社員の不安解消のため、本格的な採用の前に職場実習を行ったことで、障害者が十分に働けること、集中力を発揮して作業することなどがわかったので、社員の不安が解消され、本格採用に至った。障害者のまじめな働きぶりが他の社員に影響を与え、社員全体の無断欠勤が減少した。 【下肢障害者のための作業環境の整備】 ・従来は床でビン等の選別を行っていたが、下肢障害のある者の場合、かがみ込んで作業することはむずかしかった。このため、大型の作業台を設置し、床ではなく、台上で作業ができるよう改善した。下肢障害の者が作業できるようになっただけでなく、他の社員にとっても、姿勢を変える必要が少なくなり、作業が楽になるという効果があった。 【知的障害者のための作業環境の整備】 ・自閉傾向による多動の見られる者の場合、周囲の機械や車両の動き、音が気になり、作業に集中できなかった。本人の作業場所に囲いを設けることで、集中が持続できるようなった。 【職場定着のための工夫】 ・作業の実績評価はストレスにつながりやすいことから、作業量の達成率を賃金に反映させることや、解体台数などの個人の目標設定を行うことはしていない。社員が落ち着いて丁寧に作業ができるので、品質の維持にも役立っている。 【障害のある社員の声】 木村 達也さん (勤続14年目)  平成16年4月入社して14年目です。仕事はビンやペットボトルの選別から、いまは袋ゴミの仕分けをしています。みなさん優しく、これからもリソーシズで働いていきたいと思います。 森本 紀仁さん (勤続13年目)  平成17年4月入社の13年目です。袋ゴミの仕分けをしています。難しい仕事はないが忙しいときはあります。最近、会社が忙しいときに土曜出社を頼まれたときは跳び上がるくらいうれしかったです。これからもリソーシズで働いていきたいです。 ● 事業所データ ■ 所在地…………香川県高松市 ※今回取材した国分寺工場の所在地 ■ 従業員数………78名 ■ 事業内容………ビン・缶・ペットボトル等の資源ごみリサイクル事業等 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…16名 ■ 障害種別………知的障害、身体障害 ■ 業務内容………リサイクル工場内での、ビン・缶などの選別・圧縮など ■ 労働条件等……会社の方針により、全社員を正社員としている 事例. 8 卸売業,小売業(その他の小売業) 南海ゴルフ株式会社 徳島県 【経営者の声】 代表取締役 社長 木内 將仁さん 取締役 岸本 次郎さん  当社のネットショップの担当者が、相次いで産休を取得したり、退職したりと、手薄になることがあり、急遽対応策を講じなければならないことがありました。メディアを通じて障害者雇用に先進的に取り組んでいる企業の事例を知り、大変感銘を受けたことや、同業他社でも障害者を雇用してネットショップの業務を担当させているという話を伺ったので、当社でも本格的に障害のある方の雇用に取り組むこととしたものです。  初めての雇用でしたので、どのように採用活動をすればよいのかわからず、地域障害者職業センターやハローワークに相談しましたが、これがきっかけとなって、その後も継続して支援を受けています。コミュニケーションの取り方などは、地域障害者職業センターのジョブコーチからのアドバイスがたいへん参考になりました。  採用後は、ひたむきに働いてくれており、確実に業務をこなして、会社としてはなくてはならない存在になっています。他の社員が見習うべきところも多いです。  本人の特性上、携わるのがむずかしい職務もあるとは思いますが、これから徐々に職務の幅を拡大し、成長していってもらえればと期待しています。 直面した課題と対応策 働きやすい職場づくり 商品の種類が多く、置き場所がわかりにくかった 商品の保管棚を整理し、商品の場所がわかりやすいように、棚に商品名を書いた紙を貼付 パソコン作業中に眠気を感じて作業が進まないことがあった 眠気を感じたときの対処法を書いたカードを作成し、机上に配置 従事する職務の選定 どういった職務であれば従事できるかわからなかった さまざまな作業を一通り行わせてみて、作業状況を確認しながら職務の幅を拡大 職場定着のための工夫 コミュニケーションを取ることが苦手だった 通常は経験させる実店舗での接客業務を免除 ジョブコーチからの助言を受け、選択肢を示して質問するなど、答えやすくなるように配慮 心身面の負担軽減のため、勤務時間の調整が必要だった 雇入れ直後は終業時間を早めて勤務時間を短縮し、慣れてきた段階で終業時間を遅らせて勤務時間を長くするなど、本人の状況に応じて勤務時間を調整 Point ■ 苦手としているコミュニケーションが負担にならないよう配慮 ■ 多様な作業を体験させて、本人の得意な分野を活かせる担当業務を決定 取組みの詳細 【働きやすい職場づくり】 ・多数の商品を取り扱っていることから、保管棚から該当の商品を見つけたり、届いた商品を該当の場所に置いたりすることがむずかしかった。ジョブコーチのアドバイスにより、保管棚を整理して、商品を種類別に配置したうえで、商品名を記載した紙を保管棚に貼付することで、商品の所在をわかりやすくした。これにより、Aさん一人でも作業できるようになっただけではなく、他の社員も作業しやすくなった。 ・パソコンを使った単調な作業が続くと眠気を感じて作業が進まなくなってしまうので、ジョブコーチのアドバイスにより、「目薬をさす」など数種の対処法を書いたカード(右)を机上に置いておき、眠気を感じたときに適当な対処法を実施して、眠気を解消することとした。 【従事する職務の選定】 ・従事可能な職務が不明だったので、ネットショップ関連の作業を一通り体験させてみた。最初は商品の検品などを通じて商品知識を増やしてもらい、その後、ほかの作業などにも挑戦させた。さまざまな作業の体験を通じて、詳細なマニュアルがあれば、他の社員とも遜色なく、作業できることがわかった。 ・採用時は、ホームページ作成業務を担当させることまでは想定していなかったが、Aさんはパソコンが得意で、この業務も十分にできることがわかった。現在は、パソコンを使った業務がAさんの主な業務であり、一定のルールの下でできる業務であれば、Aさん一人に任せられるまで成長した。 【コミュニケーション上の配慮】 ・話すことが苦手なので、通常は全社員に経験させている実店舗での接客業務は行わせていない。 ・ジョブコーチからのアドバイスにより、本人が答えやすいよう選択肢を示して質問するなど、周囲の者も配慮している。 ・仕事上の必要最小限のコミュニケーションは特段問題がなかった。仕事以外では、会話を無理強いせずに、自然体にまかせている。 【障害のある社員の声】 Aさん (勤続2年目)  就職して1年8か月ほどたちました。就職の際にはジョブコーチの支援を受けました。困ったことがあっても、会社は相談にのってくれるし、ジョブコーチも支援してくれるので助かっています。仕事にもだいぶ慣れてきました。自分が関わった商品が売れたときは本当にうれしいです。これからも南海ゴルフで働いていきたいと思います。 ● 事業所データ ■ 所在地…………徳島県徳島市 ■ 従業員数………27名(パート等含む) ■ 事業内容………ゴルフショップ(実店舗、ネットショップ)の運営、 テニスショップの運営、ゴルフクラブ会員権売買等 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…1名 ■ 障害種別………発達障害 ■ 業務内容………ネット上のゴルフショップの運営等(注文処理、メンテナンス等) ■ 労働条件等……勤務時間は9時から16時30分までのパート契約 事例. 9 学術研究,専門・技術サービス業(技術サービス業) 株式会社阪技 兵庫県 【経営者の声】 代表取締役社長 後藤 純次さん  当社が障害者雇用に取り組み始めたのは十数年前のことになります。当初の目的は法定雇用率の達成であり、現場には「障害のある社員は戦力になるまでに手間も時間もかかる」という意識がありました。しかし、雇用を進めるにつれ、障害がある社員のまじめな働きぶりや、障害があるからこそ活躍できる部分がだんだん見えてきて、現場の理解が進みました。  大切なのは、障害のあるなしにかかわらず、適材適所で働いてもらうことです。適性に合った仕事を任せることで、本人もやりがいを感じることができ、長く働くことにつながると考えています。数ある仕事のうち、障害のある社員の適性に合った仕事を見つけて切り出すことによって、障害のある社員が活躍できると同時に、ほかの社員の負担も減ります。このことは、働き方改革にもつながると思います。 直面した課題と対応策 従事する職務の選定 採用した障害者がなるべく早く戦力になり、安定して働けるよう、採用した障害者が能力を発揮でき、やりがいを感じられるような業務を見つける必要があった 採用前に職場実習を行う際、実習生の得意分野や特徴を特別支援学校から事前にヒアリングし、実習内容を決定 現場で行われている業務の作業工程を分析・細分化し、障害のある社員の特性や適性を見きわめながら仕事の切り出しを実施 職場定着のための工夫 聴覚障害のある社員について、コミュニケーションの面で不安があった 職場の同僚や上司が意思伝達について意識しているほか、問題が生じた場合は特別支援学校の先生や保護者を交えて面談を実施 Point ■ 一人ひとりの特性や適性を見きわめ、マッチングを検討 ■ 聴覚障害のある社員について、日頃から意思伝達に留意するとともに、必要に応じて先生や保護者を含めた面談を実施 取組みの詳細 【職場実習の受入れ】 ・同社では、障害者の採用に当たっては、採用前に職場実習やインターンシップを行い、職務への適性をみることにしている。職場実習は毎年1名程度の採用を目途に実施している。 ・特別支援学校から職場実習を受け入れる際には、学校側に同社の業務内容をできる限り伝えるようにしているほか、実習生の得意分野や特徴(パソコン作業が得意、細かい手作業が得意、経験がどの程度であるかなど)について、あらかじめヒアリングした上で、実習で行う業務を決めている。 【従事する職務の選定】 ・同社では、社員一人ひとりの特性や適性を見きわめ、マッチングを検討している。業務の分担を割り振る際には、作業工程を分析・細分化したうえで検討を行うが、なるべく「障害者に向いた業務」という決めつけは行わず、本人の得意な作業、本人がやりがいを感じられる業務を割り当てるよう留意している。 【職場定着のための工夫】 ・同社では、聴覚障害者を3名雇用しているため、職場の同僚や上司が意思伝達について意識している(話しかけるときは正面を向いて口の動きが見えるように話す、必要に応じて筆談を行うなど)。また、コミュニケーションの行き違いなどの問題が生じた場合は、特別支援学校の先生や保護者を交えて面談を行なっている(頻度は半年に1回程度)。 【障害のある社員の声】 Aさん (勤続10年目)  紙媒体の記録のスキャンや電子データ化を担当しています。入社当時に比べると、担当業務が複雑化し、量も増えましたが、データの件数など目に見える成果があり、やりがいを感じています。障害があることで周囲が変な目でみることはなく、職場の雰囲気は良好です。 福間 愛莉さん (勤続6年目)  聴覚障害がありみなさんとコミュニケーションができるか不安がありました。入社後は周囲の協力もあり、それほど苦労はありません。配慮されていることとしては、例えば毎朝朝礼の後、もう一度話して伝えてくれるなどがあり助かっています。 ● 事業所データ ■ 所在地…………兵庫県高砂市 ■ 従業員数………238名 ■ 事業内容………発電プラントの計画、原動機(タービン)の設計、生産技術、品質関係業務、システム開発など ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…5名 ■ 障害種別………聴覚障害、内部障害、下肢障害 ■ 業務内容………設計業務、事業作業(記録入力、スキャニング等) ■ 労働条件等……正社員待遇 事例. 10 宿泊業,飲食サービス業(飲食店) 株式会社エイチケイアール 北海道 【経営者の声】 営業サポート室・管理部 マネージャー 國分 晋吾さん  飲食店では、通常、一人の社員がいくつもの業務をこなさなければなりませんが、当社が運営している回転ずし店では食器を大量に扱うため、洗い物だけで十分な作業量があることから、障害者雇用にマッチしていると思い採用を始めることとしました。  障害者雇用で地域に貢献したいという考えのもと、一人二人と採用していったところ、職場にうまく溶け込み、ほとんど離職者が出なかったため、とんかつ店など他の業態でも雇用を進めることとしました。  障害があるからといって特別扱いしないことが、当社で障害者雇用がうまく進んでいる理由のひとつだと思います。一人の社員として与えられた仕事をきちんとこなすことを原則としているので、周りの社員からの反発もありませんし、本人も懸命に仕事に取り組みます。  障害のある社員は、貴重な戦力になっているだけでなく、店舗全体の雰囲気をよくしてくれています。また、障害者雇用に取り組み始めてから、各店舗の店長が人材の多様性を意識した店舗管理を行うようになりました。人手不足のため、高齢者などの受入れを進めていかなければならないなかで、貴重な視点を得ることができたと思っています。 直面した課題と対応策 社内の理解の促進 店舗としての採算や効率性の面から、各店舗で障害者の採用を積極的に進めるのがむずかしかった 障害のある社員の人件費の半分を本部で負担することとし、各店舗が障害者を採用しやすくした 入社前の適性の把握 洗い物の作業は立ち仕事であり、一定時間業務に集中できるかを入社前に把握する必要がある 特別支援学校の生徒を職場実習生として受け入れ、入社後に行う仕事を実際に体験させて適性を把握 能力の発揮に向けた工夫 入社する社員の障害特性や障害の程度が様々であり、仕事を覚える早さに個人差がある 採用内定者について、特別支援学校が、入社後の作業に即した訓練を在学中に実施 入社後は、各店舗の店長が、OJTで丁寧な指導を実施 Point ■ 各店舗での採用が進むよう、本部が人件費の半分を負担 ■ 職場実習、在学中の訓練から職場定着まで特別支援学校と密接に連携 取組みの詳細 【障害のある社員の人件費の半分を本部で負担】 ・各店舗の店長は、障害者雇用による地域貢献の必要性については認識しているものの、店舗としての採算を考えると、こなせる作業の量が少ない障害者の採用には抵抗があった。そこで、障害のある社員については人件費の半分を本部で負担することとした。各店舗としては、少ない人件費で戦力となる社員を雇用することができることになったことから、積極的に採用に取り組むようになった。 【特別支援学校との密接な連携】 ・特別支援学校の生徒を職場実習生として受け入れ、3~4時間の立ち作業を集中して行えるかなど、各人の適性を把握している。特別支援学校では、採用内定者に対し、洗った食器の振分けや仕込作業など、入社後の作業に即した訓練を行っているほか、就職後も、店舗を訪れ定着状況を把握するなどのフォローを行っている。 【店長のOJTによる指導】 ・障害のある社員は仕事を覚える早さに個人差があるので、各店舗の店長がOJTにより指導を行っている。本部からは指導内容として統一的なものは示していないが、店長には寿司職人など親方タイプで面倒見のよい社員が多いことから、各人の能力や適性に合わせた丁寧な指導が行われている。 現場担当者の声  障害のある社員は、各店舗で戦力となっているので、各店舗の店長は積極的に採用を進めていると同時に、OJTにも熱心に取り組んでいます。 障害のある社員の声 佐藤 謙介さん  現在働いている店舗は、入社してから2店舗目です。いまの職場にもだいぶ慣れてきました。引き続き、皿洗いの仕事を頑張って、もっと早く洗えるようになりたいです。 ● 事業所データ ■ 所在地…………北海道函館市 ■ 従業員数………183名 ■ 事業内容………飲食店の経営 ● 雇用障害者データ ■ 雇用障害者数…12名 ■ 障害種別………身体障害、知的障害、精神障害、難病・その他 ■ 業務内容………飲食店の洗い場、調理補助業務 ■ 労働条件等……週20時間勤務、週30時間勤務