2 採用計画の検討・採用の準備 (4)労働条件(雇用形態・就業時間・賃金) Q 障害者の雇用形態や就業時間、賃金などはどのように考えたらよいでしょうか? A 雇用形態や賃金などは、職務内容や責任の範囲、就業時間などを踏まえて決定します。障害があるだけでフルタイム勤務ができないことはありません。一人ひとりの状況に応じて考えていきます。 雇用形態  一般的に社員の雇用形態は、職務内容やその責任の範囲、勤務時間などの労働条件、本人の希望などを踏まえ、正社員、嘱託・契約社員、パート、アルバイトなどに決定します。障害者雇用の場合も同様です。障害者を雇用する場合、その雇用形態は正社員に限るものではありません。また、「障害者だから正社員として雇用しない」ということは絶対にしてはいけません。 ●障害者雇用率への算定  常時雇用している労働者(正社員以外含む)であれば、障害種別・程度、週の所定労働時間により、障害者雇用率に算定することができます。  ※常時雇用している労働者とは 「雇用期間の定めがなく雇用されている労働者」及び「一定の雇用期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用期間が反復更新され雇入れの時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者、または過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者」をいいます。 <障害種別・程度、週の所定労働時間別の障害者雇用率の算定> 週の所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満(短時間労働) 身体障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 身体障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 知的障害者(重度以外) 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定 知的障害者(重度) 1人を2人として算定 1人を1人として算定 精神障害者 1人を1人として算定 1人を0.5人として算定(※) (※)精神障害者である短時間労働者で、@かつAを満たす方については、1人をもって1人とみなす。 @新規雇入れから3年以内の方または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方 A令和5年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方 就業時間 ●時差出勤  肢体不自由者、視覚障害者などについては、通勤において、朝夕の混雑時や日照の状況などにより公共交通機関の利用を含む移動がしにくかったり、負担が大きい場合があります。このような場合には、勤務開始時間や勤務終了時間を繰り上げたり繰り下げたりすることで、労働時間を維持しながら通勤の負担を軽減することができます。 ●短時間勤務  精神障害者の障害特性の一つに「緊張が強く疲れやすい」ことがあり、フルタイム勤務では短期間で離職につながりやすい人もいます。このような場合には、例えば1日4時間などの短時間勤務から開始し、状況を見ながら徐々に勤務時間を長くしていくことも一つの方法です。 ●残業や夜間勤務の可否  肢体不自由者や内部障害者の中には、定期的に通院している、体力が不足している、長時間勤務は身体への負担が大きいなど、残業を避けた方がよい人もいます。このような場合は、一人ひとり障害の状態が異なりますので、事前に本人の状況を確認して残業や夜間勤務に従事させるかどうかを決めましょう。  また、精神障害者やてんかんのある人の場合は、睡眠不足、不規則な睡眠などが症状を悪化させたり、発作を誘発したりする可能性があるので、本人と本人を通じて主治医の意見も聞いて判断するとよいでしょう。 ●休暇取得への配慮  精神障害者やてんかんのある人、そのほか病院への定期的な通院や検査が必要な人に対しては、時間単位での休暇の取得など休暇の取得について配慮することが望ましいでしょう。また、通常の有給休暇とは別に通院休暇制度を設けている企業もあります。 賃金  賃金の額は、企業ごとの基準(職務遂行能力、職務の内容、責任の範囲、在籍期間など)に基づいて決められていると思います。障害があるから職務遂行能力が劣るというわけではありませんので、障害者の賃金も同様の考え方にそって決めていくことが望ましいでしょう。したがって、同一職務であれば別の賃金体系にする必要はありません。 ●賃金を決める際の留意点 1 最低賃金の遵守  障害者を雇用した場合も最低賃金法が当然適用されますので、最低賃金は遵守します。 2 職務評価・業績評価の反映  モチベーションを維持したり高めていくためにも、職務行動評価や実績評価を給与に反映させることは有効です。考え方は基本的には一般社員と変わりません。 3 障害者の賃金水準  基本的には同一労働同一賃金です。同じ配置部署・職種では同じ賃金体系の適用となります。ただし、障害の状況によっては、同一職種でも対応できる職務が限られたり、他の社員と比べて職務遂行能力が低かったり、また、習熟に期間を要したりする場合があります。この場合は次の点に注意するといいでしょう。 ・同一職種の社員と比べ対応できる仕事が限られる、職務遂行能力が低いなど明らかに差がある場合には、他の社員に比べ低い水準からのスタートになることがあります。 そのような場合は、本人のモチベーションの向上のためにも長期的な視野で職務遂行能力の向上への支援を行い、昇給につなげていくことが必要です。 ・生産性だけでなく、企業への貢献度を加味する企業もあります。