5 障害特性と配慮事項 (6)精神障害 1 精神障害とは  精神障害は、さまざまな精神疾患が原因となって起こります。主な精神疾患には、統合失調症、気分障害(うつ病、そううつ病など)、精神作用物質(アルコール、薬物など)による精神疾患があります。  障害者雇用促進法上では、精神障害者の範囲を、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人または統合失調症、そううつ病、てんかんにかかっている人で、症状が安定し、就労が可能な状態にある人としています。  精神障害者保健福祉手帳は、1級〜3級の等級となっています。  なお、障害者雇用率に算定できるのは、精神障害者保健福祉手帳所持者のみとなります。 2 障害特性 〇統合失調症 ・統合失調症は患者数が多く、急性期から回復しても各種の障害が後遺症として残って社会での自立した生活を困難にすることが多くあります。 ・統合失調症から回復した人によく見られる特徴としては「細かな指先の動作が苦手」「複雑なことが苦手」「臨機応変に判断することが苦手」「新しいことに対して不安が強い」などが指摘されています。 〇そううつ病 ・生活に支障をきたすほどに異常に気分が沈んだり高揚したりする状態が長く続く病気です。 ・うつ病では、一般に身体と精神の両方に症状が現れます。身体症状としては、睡眠障害、食欲不振、性欲減退、頭痛・腰痛・肩の痛み、疲労感・倦怠感などが見られます。精神症状は、身体症状に隠れて見逃されがちですが、抑うつ状態、日内変動(特に朝方の憂うつ感がひどく、夕方になるにつれて軽くなっていく状態が続く)、集中力低下、注意力散漫、意欲低下、不安、取り越し苦労、自信の喪失などが特徴的です。 ・「そう」は、「うつ」とは逆に気分の高揚が特徴で、「何かをしなくてはならない」という感覚や考えが次々にわいて止まらないという症状が現れます。例えば、社交性が高まり、あちこちに電話をかけたり、話が止まらなかったり、過度の馴れ馴れしさが出たりといった特異な行動が見られることがあります。うつの睡眠障害とは反対に、寝なくても平気である場合が多いのが特徴です。 ・そう状態とうつ状態が交互に繰り返されるのがそううつ病です。 〇適応障害 ・落ち込み、涙もろさ、絶望感などの抑うつ気分や不安といった感情面の異常、気力や思考力、集中力の低下といった機能障害、暴飲暴食や無断欠席などの行動面の異常が見られます。 ・病気、大切な人との別れ、人間関係のもつれといったストレスや入学、結婚、仕事の引退などの人生におけるイベントが発生してから3カ月以内に発症すると言われています。 ・ひとたびストレス原因がなくなったら、症状が持続することはなく、回復が早いという特徴があります。 ・ただし、適応障害のために現れていると考えられていた抑うつ症状が、実は統合失調症や認知症の初期症状である場合もあり、注意が必要です。 〇不安障害など ・生活に支障が出るくらいの過剰な不安によりパニックになったり、無意味な行動を繰り返したりする症状が見られます。 ・不安や恐怖の対象・状況・性質などによって、「社交不安障害」「パニック障害」「全般性不安障害」などに分類されます。 ・「社交不安障害」は人との交流において、他人から否定的な評価を受けることに対して、過剰な不安・恐怖を抱くことが特徴です。 ・「パニック障害」はパニック発作が主な症状であり、発汗、動悸、めまいなどの身体症状を伴うことが特徴です。 ・「全般性不安障害」はさまざまな出来事や活動についての過剰な不安・心配が、少なくとも6か月間持続することが特徴です。 3 職業上の配慮 ・心身が疲れやすいので、本人と相談の上で短時間勤務からはじめ、体力の回復状況をみながら徐々に延長するとよいでしょう。 ・職場で日常的に関わることができ、信頼関係を築くことのできる援助担当者を決めておくことも大切です。 ・判断・責任などの精神的プレッシャーに弱い場合には、当初は安全なストレスレベルから始めます。工夫・応用が苦手なことがあるので、作業の流れや手順を決めるとよいでしょう。 ・通院・服薬の遵守に配慮することが必要であり、必要に応じて医療機関や支援機関と連携してサポートすることも大切です。 ・連携を支えるツールとして情報共有シートがあります。情報共有シートは障害者が自分の心身や仕事の状況について自らチェック(見える化)し、その情報を職場の同僚や上司、支援者(医療機関や就労支援機関、家族等を含む)と一緒に確認することで、必要な支援について話し合うきっかけを提供するシートです。本人の同意を得た上で、活用について話し合うことが必要です。 ※情報共有シートの活用 (情報共有シート活用の手引(2019年3月 (独)高齢・障害・求職者支援機構 障害者職業総合センター)より) 情報共有シートは、障害のある人が自分の状況を見える化し、その情報を関係者と共有することで、障害のある人と関係者のコミュ ニケーションを円滑にすると共に、適切なセルフケアやラインケア、外部の専門的なケアにつなげて、安定した職業生活の継続に資することを目的としています。精神障害者以外にも必要な人に活用できます。   ⇒参照:3(5)「社内支援の準備」 NIVR マニュアル 60 検索 4 資料 障害者雇用マニュアル コミック版 No.4 精神障害者と働く 動画・DVD みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ合理的配慮の提供〜 動画・DVD ともに働く職場へ〜事例から学ぶ精神障害者雇用のポイント〜 精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度) 就職困難性の高い障害者のための職場改善好事例集−精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者−(平成27年度) NIVR マニュアル 事業主 検索 精神障害者雇用管理 ガイドブック 「企業からみた」 精神障害者雇用のポイント 精神障害者の就労支援における 医療と労働の連携のために NIVR マニュアル 検索