5 障害特性と配慮事項 (8)発達障害 1 発達障害とは  発達障害者支援法において、発達障害は自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現する障害を有するものとされています。  おおむね、発達期(18歳未満)に「さまざまな原因によって中枢神経系が障害された」ために「認知・言語・学習・運動・社会性のスキルの獲得に困難が生じる」ことが共通しています。  発達障害の障害者手帳はありませんが、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合には、精神障害者として「障害者の雇用の促進等に関する法律」の適用範囲となります。  療育手帳を取得する場合もあり、その場合は知的障害者として適用範囲となります。 2 障害特性 〇広汎性発達障害  (自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)) 社会性の発達障害を占めるグループは、これまで「広汎性発達障害」と呼ばれていましたが、最近、診断基準が変わり「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」という名称に変更されました。 @社会的コミュニケーションおよび対人的相互関係における持続的障害 ・他者にメッセージを伝えたり、他者からのメッセージを読みとることが苦手といわれています。例えば、人への反応や関心が乏しすぎたり、逆に、大きすぎるなど、言葉や表情・ジェスチャーなどの手段をうまく使えず、対人関係を結びにくいといったことがあります。 ・職場では、上司や同僚に対する接し方がうまくできない(誰にどう接して良いのかわからない)、タイミング良く質問することが苦手、指示されれば守れるが暗黙のルールには混乱する、注意を否定されていると感じてしまうなどがあります。 A活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗などの問題 ・活動や興味の範囲が著しく制限されていることがあります。立場を変えるとか、場を理解するなどがうまくできないことがあります。変化を怖れるということもあります。 ・職場では、複数のことを担当すると優先順位がわからなくなる、時間や場所などの予定が変更になると不安になるということがあります。 Bその他の特徴 ・視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の感覚過敏・鈍麻や、不器用さなどがみられる場合もあります。 〇学習障害  (限局性学習症(Specific Learning Disorder:SLD)) ・学習障害は診断基準が変わり、「限局性学習症/限局性学習障害」という名称に変更されました。 ・一般的には、全般的な知的発達の遅れがなく、視覚・聴覚、運動能力にも大きな困難はなく、本人の努力や環境が十分であっても、読み書きや計算能力などの限定的な障害やアンバランスがみられる状態をいいます。 〇注意欠陥・多動性障害  (注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactibity Disorder:ADHD)) ・注意が散漫で気が散りやすい「不注意」や、じっとしていられないといった「多動性」、何か思いつくと後先考えず行動してしまう「衝動性」などが特徴です。 ・職場では、不注意によるミスが多発する、一つのことを集中して続けられない、仕事を順序通りにできないなどの課題が生じることがあります。  これらの障害が重複する場合もあり、一人ひとりの状態や障害の現れ方が違いますので、個別の対応が必要となります。 3 職業上の配慮 〇本人のスキルや特性に応じた環境整備 ・できる仕事は何か、苦手な仕事は何か等を把握した上で、本人の適性に応じた配置をすることが大切です。 ・感覚の偏りがある人もいます。過敏がある場合、刺激の少ない環境を設ける、鈍麻(疲れに気づかない等)があれば必要に応じて気づきを促すなど、安定して仕事ができるよう配慮する必要があります。 〇職場のルールや文化の視覚化・明確化 ・職場において確実に守るべきルールは、文章やメモにして図表などで具体的に示す、上司や同僚に対する接し方については、それぞれの役割を明示し、モデルを示すなどの方法があります。 ・メモ帳や手帳などを利用して、担当作業をリストアップし、優先順位を明示する方法が有効です。 〇段取りや先の見通しの明示 ・変化に対する不安を軽減するには、作業時間・工程を予め確定し伝える(残業や納期の変更は早めに指示する)、メモを取って復唱させるといった方法があげられます。 〇健康の維持 ・発達障害のある人が仕事を長く安定的に続けていくためには、身体的・精神的な健康を維持することが必要不可欠です。 ・疲れやストレスが溜まっているときは、適切に対処し、自身で体調管理をするよう促すことや、自身で体調管理ができるように職場の担当者等からも配慮することが大切です。 〇キャリア形成と雇用管理 ・仕事の経験を通じて熟達化したり、可能な担当業務が拡大したりする人もいます。 ・企業では働く本人の意向、技能、体力等を確認し、状態に合わせて仕事の幅を広げたり、配置転換するなどキャリア形成の視点を持つことが重要です。 4 資料 障害者雇用マニュアル コミック版 No.5 発達障害者と働く 動画・DVD みんな輝く職場へ〜事例から学ぶ合理的配慮の提供〜 動画・DVD ともに働く職場へ〜事例から学ぶ発達障害者雇用のポイント〜 精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度) 発達障害者のための 職場改善好事例集 (平成23年度) 就職困難性の高い障害者のための職場改善好事例集−精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者−(平成27年度) NIVR マニュアル 事業主 検索 発達障害者就労支援 レファレンスブック (課題と対応例) NIVR マニュアル 48 検索