令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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障害の特性をどこまで含めるかという問題でもあります。教育用語としての「LD」は広い範囲の多様な学習上の困難を想定しているという見方もありますので、医学で診断されるLearning…Disorderが「読字」「計算」「書字」に焦点をあてるのとは対照的です。教育用語として使われている「学習障害」は…Learning…Disabilitiesを翻訳した時にあてられた用語のうちの1つです。しかし、教育、臨床の関係者をはじめとして、保護者も本人も、この用語を適切でないとして「LD」と称する場合が多いのです。「LD」という呼称には、根底に“障害が学習に関する能力の限定的な障害であり、その点について配慮し、その障害の克服を手助けしていけば、健常児と同じように知的な能力を発揮できる”という考え方があります。このような考え方を背景として、「障害児と健常児の間の子ども」「グレイゾーンの子ども」であるために、適切な支援をうけることができないという「学習障害」観が成立することになりました。したがって、義務教育のみならず、高等学校以降の学校教育において特別な教育的支援が充実するに伴い、教育の効果に対する期待が一層高まっているといえます。歳以上)では5項目を満たす場合に診断されます。また、症状は、反抗、挑戦、敵意、または課題や指示が理解できないなどによるものではないとされています。さらに、多動性・衝動性または不注意の症状のいくつかが12歳以前に存在し、障害を引き起こしていること、これらの症状による障害が2つ以上の状況(例えば学校〔または仕事〕と家庭)に存在すること、社会的・学業的または職業的機能を損なっている、もしくはその質を低下させているという明確な証拠が存在しなければならないこと、とされています。【問題への対処】ADHDは神経心理学的には「実行機能」の回路に障害があるとされ、最近では「報酬系の障害」(例えば“目の前の報酬に反応しやすい等”)としての理解もすすんでいます。改善のために、薬物療法や行動療法が提案されています。このような対応により、ADHDの症状は成人期まで持続するものの、成長とともに問題が改善されていく傾向がありますが、成人期まで困第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第7節 表2 現行の文部科学省の定義学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。ます。表2は文部科学省が示している学習障害の定義です。この定義では、「読む」「計算する」「書く」のいずれかの困難に、「聞く」「話す」「推論する」の困難を加えています。さらには、教育並びに臨床の関係者の中で、さらに広い範囲を認める立場もあります。こうした立場に立つ人々は、発達性協調運動障害(不器用)、注意欠陥多動性障害(ADHD)をこれに加えている場合があります。最も広い範囲を認める立場では、“社会性に困難がある子ども”をも含めています。これは、主として「教育的な対応が必要な子どもたちの問題を考える」ということを意味していますが、多様な発達ADHDは不注意、多動性、衝動性を特徴とする持続性の行動障害とされています。幼児期にはその特徴が認められ、児童期から様々な適応の問題が生じ、否定的な自己評価や不安、抑うつなどに悩むことも少なくないといわれます。不注意もしくは多動性・衝動性について、発達水準に照らして相応しない不適応症状が長期(6ヶ月以上)にわたって継続した場合に診断されます。次頁の表3のうち、不注意については6項目以上で頻発する場合に診断される対象となります。また、多動性・衝動性については6項目以上で頻発する場合に対象になります。ただし、不注意も多動性・衝動性も、青年、成人(17186⑵ 注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)(Attention-Deficit/ Hyperactivity Disorder : ADHD)【診断基準:DSM-5】

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