令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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第3章 第7節4就職・定着促進のための配慮事項、支援策第7節 発達障害者189定しながら相談を進める者もありましたが、障害者手帳を持っていてもまずは一般就労を目指す者が少なくないことも聞かれました。しかし、入職に際して職業リハビリテーションの支援を利用した事例もあります。彼らは、療育手帳・知的障害判定によるサービスを利用した事例と、精神障害者保健福祉手帳によるサービスを利用した事例にわけられます。これは発達とともに求職活動をする際の課題が変化していったという事例です。例えば、最近の調査からは、就労中の発達障害者が従事している業務としては「データ入力」や「書類の整理・管理」などの事務補助業務の他、「清掃」、「製造・加工・組立」が上位に挙がっています。対象者は直前に福祉施設(就労移行支援・就労継続支援A型・B型)に所属していた者と別の会社に属していた者が7割近くで、学校在籍であったものは1割でした。つまり、新卒で障害者枠への就労を果たしている者はそれほど多くはないということです。その背景には、職業リハビリテーションサービスの利用を勧めたとしても「一般扱い」の求人にこだわり、求人条件の変更を受け容れがたい事例も多いことが示唆されます。障害特性の理解に関する支援については、採用後においても特に慎重に本人の受けとめ方に配慮する必要があります。でどのようなことがおきたのか」などを把握することが重要です。また、学習能力の確認も必要です。特に「未修得の学習技能を明らかにすること」「誤り方のパターンの整理・分析をすること」は、問題を改善していく可能性と深く関わります。その他、健康状態を把握し、「体調管理にどのような配慮が必要か」を確認することも重要です。障害特性に合わせて、作業を効果的・効率的に行うことを支援するうえで、作業時間の調整(課題時間の延長など)が必要になる場合があります。また、作業量の調整(課題の数の限定など)が必要になる場合もあります。加えて、作業内容の調整(理解度に合わせた内容への変更など)は特に重要です。その他に、電卓やワープロ、メモ帳、付箋など、障ある青年の場合、職業リハビリテーションサービスの利用を勧めたとしても受け容れがたい事例も多いです。障害特性については、特に慎重に本人の受けとめ方に配慮する必要があります。「発達障害」といわれて成長した青年の中には、学校教育等で配慮を受けながら課題をクリア、職業リハビリテーションのサービスを必要とせずに通常教育から職業的自立を達成する事例もあるでしょう。例えば、最近の大学等の高等教育機関の障害学生支援部署に対する調査の結果からは、発達障害のある学生のうち合理的配慮を得るための相談において、大学が精神保健福祉手帳、療育手帳の所持状況を一定数把握していました。一部の学生は障害者枠での就職を想図  障害学生支援部署を利用する発達障害のある学生の障害者手帳所持状況ハローワークの専門援助部門における障害者の紹介就職・職場定着の実態調査(障害者職業総合センター,…2017)では、2015年7月からの2ヶ月間に就職した発達障害者242名の8割以上が障害者求人に応募して就職していました。障害者求人による就職者の定着率の方が一般求人による就職者に比して高く、就職時の機関連携や職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援、就職後の定着支援などは定着を支える要因とされています。学校時代は何とか過ごしても、職場ではうまくいかないという場合に求められる配慮と支援策について考えておきたいと思います。「作業中に問題とされる行動は何か」「いつ・どのくらいの頻度や強さでおこるのか」「その行動がどのような状況(環境や人)でおこるのか」「その行動の後⑵ 作業条件の配慮⑴ 職場に適応するうえでの問題の把握

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