節第3章 第8節1難病等による障害8第第8節 その他の障害者193当時原因不明の疾病に対して、国が研究班を作って診断・治療の成果を上げたことに始まります。それをモデルとして、従来は「難病奇病」と呼ばれることが多かった多様な疾病について国は研究班を作り、現在では300以上の疾病について診断・治療の対象として明確にしてきました。 難病法では、難病を「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」としています。ただし、この定義によって、一律に、難病患者は働ける状態ではないと考えるのは誤解です。難病の多くは、依然根治治療は難しいものの、最新の治療により、通院や服薬、自己管理等を継続することによって、症状を抑えて暮らしを送れる難病患者が増加しており、多様な仕事や働き方で働いている難病患者も多くいます。 一口に「難病」と言っても、実際は多種多様な疾病であり、消化器系、免疫系、神経・筋系、血液系、内分泌系、視覚系、循環器系、呼吸器系、皮膚・結合組織系、骨・関節系、腎・泌尿器系等が含まれます。全国の患者数が数万人になる疾病もあり、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症等、聞いたことがあるのではないでしょうか。一方で、難病には全国の患者数が10人未満という疾病も多く、専門医以外の一般の医師や産業医にも知られていない疾病も多くあります。 難病の各疾病の詳細は、難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)が一般向けに提供しています。② 長期の高額医療を支える医療費助成と「指定難病」 国の難病対策においては、長期の高額医療費の自己負担の軽減が大きな柱となっており、これにより難病患者は継続的に最新の医療を受けることが可能となっています。 医療の進歩等により、定期的通院や服薬等の継続により難病の症状を一定程度抑えることができている難病患者が増加しています。継続的な治療により重度の後遺症が回避できている場合、障害認定されないことも多いのですが、難病が完治しているわけではありません。このような状況で、現在、治療の継続と両立しながら、能力を発揮して継続して働くことに挑戦する難病患者が急速に増加しています。 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)により、難病患者で就労困難性のある者は、障害者手帳制度の対象でなく障害者雇用率にカウントされない場合でも、すべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。また、ハローワーク等も障害者手帳の有無にかかわらず、難病患者と雇用する事業主の双方を支援しています。さらに、難病は、主治医と職場・産業医等の連携による治療と仕事の両立支援の対象にもなっています。 このような制度の整備も踏まえながら、ここでは、難病患者が通院や体調管理と両立として活躍できる仕事内容や働き方、職場での誤解や過剰反応を避けながらの理解と配慮の確保、病気の悪化や進行がある場合の早めの対応等のポイントを紹介します。 医学の進歩にかかわらず未だ完治が困難な「難病」について、我が国では1972年から難病対策を進め、2015年施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)により、国の研究班による治療研究、長期の治療を続ける患者の医療費助成と治療と両立した社会参加を支援しています。難病の範囲としては、医療費助成の対象となる348疾病の「指定難病」に限らず、特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象となる376疾病の「難治性疾患」等があり、診断等の発展により、難病とされる疾病は増加し続けています。① 多様な難病の明確化と難病の慢性疾病化 我が国の難病対策は1970年代に「スモン」という⑴ 難病とはその他の障害者
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