令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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いる特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象となるのは、この376疾病です。 難病は、障害者手帳制度の対象となる多様な身体障害等の原因疾病となっています。一方、難病患者には、障害者手帳制度の対象となっていない「その他の心身機能の障害」による共通した就労問題と支援ニーズがあります。まずその共通性を理解し、その上で多様な疾病による個別性の理解を深めるとよいでしょう。① 多様な難病に共通した就労問題と支援ニーズ 難病患者の場合、仕事による疲労の蓄積と休養等による疲労回復のバランスが崩れやすくなっています。仕事による疲労は適度の休憩や勤務時間外の体調管理や睡眠、休日を使って疲労回復し、疲労と回復のバランスをとることが職業生活を継続できる大前提です。このため、難病患者の雇用管理の課題には疾病にかかわらず共通性があります。仕事への影響は比較的軽い程度から重い程度まで個別多様ですが、外見からは分かりにくいものも多いため、本人や専門の医師等の話を聞いて理解することが重要です。ア 病状の悪化や進行の可能性 従来の身体障害等は障害が比較的固定しているのに対して、難病患者は普段は問題なく働けても体調が重症化する可能性があることで、通院や体調管理、業務遂行のスケジュール等の見通しが困難となることで仕事に支障が生じやすくなっています。イ 少しの無理で体調が崩れやすいこと 難病患者が仕事等で少しの無理をすると体調が崩れやすく、体調回復に時間がかかることについて、職場で理解されにくい状況があります。各人の病状だけでなく、仕事内容や勤務時間等により、体調の崩れやすさは大きく異なります。ウ 全身的な疲れ、活力や集中力の低下、体調変動 多くの難病患者には体調の波があり、1日の中で変動することもあれば、通院や治療のスケジュールと関連した週単位・月単位での変動、季節的な変動等があります。完全に体調が崩れないまでも倦怠感等が強くなり、仕事に集中できる時間の制限、休憩の増加、休暇の増加等が伴うことがあります。倦怠感等は外見から分か⑵ 多様な難病による就労問題と支援ニーズ第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第8節 当初、医療費助成の対象となる難病は8疾病でしたが、その後、新たな難病が特定され診断治療も進んだ結果、令和7年4月現在、医療費助成の対象となる「指定難病」は348疾病となっています。医療費受給者証は、指定難病患者で一定以上の重症度の基準を満たす場合に発行され、令和5年度の生産年齢にある受給者は56万人程度です。なお、令和6年度からは、軽症化している等で医療費助成の対象とならない指定難病患者についても、医学研究と治療の継続性と、福祉や就労等の各種支援の円滑な活用のために、更新不要の難病登録者証が発行されています。③ 「障害者」としての難病患者 従来から、難病による重度な後遺症は障害者手帳制度の対象となってきました。しかし、近年、重篤な後遺症が防がれているため障害者手帳制度の対象とならない難病患者が増加しています。このような患者も、難病が完治しているわけではなく、就職や就業継続が困難となることが多く、職場での理解や配慮、専門支援のニーズが大きいことが明らかになってきました。 このため、障害者雇用促進法においては、障害者手帳のある難病患者が障害者雇用率制度等の対象となるだけでなく、障害者手帳のない場合でも、障害者雇用率のカウントの有無にかかわらず、障害者差別禁止や合理的配慮の提供義務の対象であり、また、専門的職業紹介等の職業リハビリテーション全般や障害者雇用納付金関係助成金(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金)の対象とされています。これは、同法第2条第1号における「障害者(身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害のある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう)」の定義に基づくものです。 また、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)では、身体障害、知的障害、精神障害以外でも、指定難病には患者数の多さ等から含まれない関節リウマチ等の難病患者も含め、医療費助成の有無にかかわりなく、376疾病を「難病等」としてサービスの対象としています。なお、雇用支援制度において、障害者手帳の対象となっていない難病患者を新たに雇用し配慮を行う企業向けに設けられて194

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