令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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第3章 第8節第8節 その他の障害者195ている人も多くいます。筋肉が疲労しやすいため、例えばビンのふたを開けるのに手助けを必要としたり階段を上るのに困難があったり、休憩なく1日働くと、まぶたが落ちてきたり、声がかすれてきたりすることを典型的な症状とします。休憩がないと短時間勤務しかできない人でも、途中で横になれる短時間の休憩を組み込めばフルタイムで働くことができる場合もあり、1日の仕事の組み方や休憩の取り方によって無理なく働けるかどうかが大きく左右されます。これらの症状が重い一部の人の場合、上肢・下肢あるいは視覚障害等で障害者手帳の対象となる場合があります。エ  進行性の神経筋疾病(パーキンソン病、脊髄小脳変性症等) パーキンソン病は高齢者に多い病気ですが、その10%程度は40歳未満で発症し若年性パーキンソン病と呼ばれます。症状を一時的に抑える特効薬があり、服薬しないと体が動かず身体障害の重度認定があっても、薬が効いている時には普通に動け、ただし薬効は数時間しか続かないという「ON-OFF症状」という特徴があります。10年以上かけて病気が進行し、薬が効きにくくなったり、薬の副作用が現れたりします。その間、周囲に病気を隠してストレスを抱えている人も多くいます。 脊髄小脳変性症は、病気のタイプによっては、より若い年齢での発症があり就職活動の時期と重なることもあります。現在、特効薬はなく、運動障害が10〜25年程度かけてゆっくりと進行しますが、将来の治療の進歩等により進行の見通しは流動的です。 この他、進行性の神経筋疾病には、発症から数年で全身麻痺に病状が進行する場合もあり、症状の軽いうちに主治医や本人と集中的な情報交換を行い可能な対策をとることが重要になります。オ 多発性硬化症/視神経脊髄炎 多発性硬化症/視神経脊髄炎は、脳や脊髄の中枢の神経の炎症が起こりやすい病気です。様々な部位の神経が炎症を起こすと、対応する様々な感覚(視覚等)、運動機能が障害を受けるため、症状は多様で、炎症の度に障害が悪化し、中年以降に身体障害者手帳の対象となってりにくいため、職場ではサボり、怠け等と誤解されやすくなっています。エ 身体の痛み 難病患者には、全身の関節痛、頭痛、腹痛等を抱える人もいます。これらの痛みは、個別に業務上の支障につながったり、仕事の集中力を制限したりするだけでなく、仕事やストレス等により痛みが悪化することもあります。② 疾病に応じた多様な就労問題と支援ニーズ 一方、難病は多様な疾病であり、それぞれの症状、発症年齢や性差、治療の内容や治療の効果、同病者の多さによる社会的認知等により、就労問題や支援ニーズに一定の特徴があります。以下に、代表的な多様な難病の例を示します。ア 炎症性腸疾病(潰瘍性大腸炎、クローン病) 下痢や下血、腹痛で入院し診断されることが多く、それをきっかけとした退職が多くなっていますが、実際は治療により数か月で症状は安定するため、就業継続(休職と復職)の支援が重要です。小腸や大腸の炎症に対して、手術で腸を切除して身体障害者手帳の対象となっている人もいますが、現在では治療・服薬と自己管理で症状を抑えている人が多く、その場合は障害者手帳の対象になりません。難病の中でも最も就労例の多い疾病です。イ  自己免疫疾病・膠原病(全身性エリテマトーデス等) 免疫機能が自分自身の体に対して反応してしまい、体の様々な部位で炎症が起こる、比較的女性に多い様々な病気です。全身性エリテマトーデスは、その代表的なもので、日光の紫外線に皮膚が過敏に反応したり、運搬等の肉体労働、過労等がきっかけとなり、湿疹、口内炎、消化器炎、腎臓・心臓・呼吸器等の臓器障害、関節炎、筋肉炎等が多発し、発熱や全身疲労が顕著になりやすいことが特徴です。重篤な後遺症としての関節障害等や腎臓機能障害は障害者手帳制度の対象になりますが、ステロイド剤等の服薬や自己管理によって重篤な後遺症がない人も多くなっています。ウ 重症筋無力症 神経と筋の間の伝達の障害により、普通よりも筋肉が疲労しやすく休憩をとると回復するという特徴の病気です。症状の進行もなく、働い

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