⑶ 地域の専門支援体制の整備状況障害者手帳の対象となることがあります。職場では、発作の予防や突然倒れる危険性への対策が重要となります。ケ 後縦靱帯骨化症 背骨を縦につなぐ靱帯は柔軟性があり、首、胴体、腰を自由に動かすことができますが、これが肥大・骨化して首等のこわばりや痛みが生じ、さらに、骨化が進行し脊髄を圧迫するようになる病気です。病気が進行して、脊髄麻痺と同様の下半身等の麻痺になると身体障害者手帳の対象になります。しかし、そこまで進行していない場合も、首等の痛みや、手足のしびれ等があり、疲労が溜まりやすく、また、転倒しやすく、脊髄損傷を起こしやすいので、仕事内容についての留意が必要です。コ 原発性免疫不全症候群 免疫機能が生まれつき機能しない病気です。主な症状は、感染症(風邪、化膿など)にかかりやすいことで、それが肺炎や敗血症等に重症化しやすいことです。通院への配慮、過労を避けること、人ごみを避けることや日頃から職場の同僚の手洗い・うがい励行や空気清浄器の設置等により、基本的に仕事はできます。 難病患者は、障害者手帳の有無にかかわらず、「障害者」として、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターによる本人と雇用事業主の双方への専門支援の対象です。また、就労系福祉サービスによる就労移行支援事業、就労定着支援事業、就労継続支援事業の対象でもあります。さらに、難病患者の治療と仕事の両立を支援するため、医療分野と就職後の産業保健分野における専門支援もあります。① 難病患者の採用に関する専門支援 各都道府県の一部のハローワークには、難病患者就職サポーターが配置され、各難病患者の体調等を踏まえ、治療と両立できる仕事について、障害者求人に限らず、一般求人についても、主治医等の確認も含めて検討し、職業紹介します。また、採用選考時から、面接等での就職後の合理的配慮や治療と仕事の両立支援を想定した事業主への情報提供や支援も実施されます。 さらに、難病法により、各都道府県には難病相談第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第8節いる人が多くなっています。その一方、最新の治療、服薬や自己注射、自己管理(過労を避ける、保温、栄養等)によって、無症状に近い状態で長期に生活できる人も増えています。障害認定や目立った症状もない状態でも治療や自己管理等を続け、神経の炎症をなるべく起こさないようにし、後遺症を残さず、障害を進行させないようにすることが大切です。カ 皮膚疾病(神経線維腫症等) 皮膚の傷つきやすさによる直接の職務遂行上の制限だけでなく、顔面や目立つ外見での腫瘍他の変化により周囲からの「感染するのではないか」等の無理解による制約を受ける場合があります。神経線維腫症は、皮膚等の腫瘍(できもの)や色素班(しみ)を特徴とする病気で、職務遂行に影響するような身体的、精神的な機能障害は基本的になく、病気が感染するおそれもありません。顔面等の腫瘍が大きくなると手術が必要になることがあります。キ 網膜色素変性症 中途の視覚障害の代表的な原因疾病です。最初は夜間や夕方、薄暗い部屋でものが見えなくなる症状が現れ、通勤時間の配慮等が必要になってくることもあります。その後、一部の視野が見えなくなる等、ゆっくりと視覚障害が進行していくため、退職年齢までに失明するとは限りませんが、状況に応じて視覚障害者用の支援機器等を早めに検討するとよいでしょう。視覚障害関係の団体に相談する等、本人の生活設計や支援機器の訓練や職業訓練等、就業継続を総合的に支えることが大切です。支援機器を活用すれば、たとえ失明しても、文書を読んだり書いたりといった事務的仕事も十分に続けることができます。ク もやもや病 脳のウィリス動脈輪という太い血管の代わりに細い血管が網の目のようにできる病気です。激しい運動をした時や過呼吸になった時に、脳の血流が不足して突然崩れるように倒れる脱力発作が起こりやすく、また、30〜40歳以降では脳卒中が起こりやすくなります。脱力発作は数分でおさまり、脳卒中も軽度のことが多いのですが、発作が重なると、脳に障害が蓄積し、身体の麻痺や言語障害、高次脳機能障害により、196
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