令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
199/304

第3章 第8節⑷ 難病患者の理解と障害者差別禁止のポイント第8節 その他の障害者197より、難病というだけで不採用にしたり就業禁止にしたりすることは、合理的理由のない差別的取扱となります。難病患者の多くは、適切な仕事内容と職場の理解・配慮があれば仕事で活躍できるのだという正しい認識に基づく、採用や雇用管理における公正な取扱いが重要です。①  障害者雇用率カウントの有無にかかわらない事業主の法的義務 難病患者には、各自の体調に合わせて、障害者雇用に特化した仕事に限らず、自身が活躍できる多様な仕事や働き方に挑戦している人が多くいます。このような人も含め、難病患者は障害者手帳の有無にかかわらず、障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。 「難病」についての先入観によらず、意欲があり適性の高い人材を採用すること、本人や主治医とのコミュニケーションと正しい理解に基づき、能力を発揮して継続して働いてもらえる職場づくりにより、難病患者を含む障害者が職業人として活躍する機会を保障すること、その上でその能力を正当に評価することはすべての事業主の法的義務です。② 先入観にとらわれない難病の最新の正しい知識 「難病」という言葉の印象や、症状悪化時の症状等が強調される医療的な情報から、「働くことが難しいのではないか」「雇用管理等の負担が大きいのではないか」といった誤解を生じやすくなっています。症状が悪化した状況での治療や医療の課題と、症状が安定している状況で職場において理解・配慮すべき課題は異なります。 難病患者の多くは、治療と仕事の両立に向けて、通院の確保や体調管理の必要性等への職場の理解を求めている一方で、それらが職場で得られれば健康や安全上の問題はなく過剰反応が不要であることの理解も求めています。 職場においては、後述する治療と仕事の両立支援の流れに沿って、本人や主治医から正しい情報を得たうえで、労働者本人と人事労務担当者、産業保健スタッフ、上司等との関係者間で話し合い理解を深めることが重要です。③  治療と仕事の両立支援や障害者差別禁止等の基本方針の明示 現在、がん等の治療と仕事の両立支援に取り組む企業が増えています。難病も誰もがかかりうる病気であり、既に多くの難病患者が企業で働いており、支援センターが設置され、ハローワークや医療・保健・福祉機関、患者会などとの連携体制の整備も進められています。② 就職後の雇用管理の支援 障害者手帳の有無にかかわらず、ハローワークの難病患者就職サポーター、地域障害者職業センター等のジョブコーチ等は、採用から職場適応に至るまでの難病患者と事業主の双方への、雇用管理、雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等についての専門支援を実施できます。また、障害者手帳のない難病患者をハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主は、特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の申請ができます。 テレワークで遠方での雇用の場合、採用後の就業継続のフォローアップを地域の障害者就業・生活センターが担える場合もあります。③ 治療と仕事の両立支援 治療と仕事の両立支援は、労働者の健康確保対策のために、就職後の従業員を対象に実施されるもので、職場の関係者としての産業医・保健師・看護師等の産業保健スタッフや医療機関の関係者、さらに、地域の産業保健総合支援センターが専門的支援を提供します。また、両立支援コーディネーターがこれらの関係者の連携を促進します。これについても、両立支援制度を導入し両立支援コーディネーターを配置した場合、両立支援コーディネーターを活用し両立支援プランを策定し実際に適用した場合に、事業主への助成金があります。④ 障害悪化時の障害者雇用支援 採用時に障害者手帳のない難病患者でも、疾病によっては障害が進行し、肢体不自由や視覚障害等で、職務遂行や通勤等が困難となり、身体障害者手帳が取得可能となることがあります。その場合、身体障害の軽度(6級、5級等)の段階から、障害者雇用率にカウントでき、障害者雇用納付金制度に基づく職場環境改善・配慮、職場介助者や職場支援者の配置等への助成金の対象となり、重度(1級、2級)となった場合には通勤を容易にする措置への助成金の対象にもなります。 「難病=働けない、雇用できない」という先入観に

元のページ  ../index.html#199

このブックを見る