⑸ 募集・採用選考から職場配置における合理的配慮り得ます。難病患者の中には、採用面接時に、病気のことばかりを聞かれて、適性や意欲をアピールできなかったという経験を持つ人がいます。ハローワーク等からの紹介の場合、支援者が事前に主治医等に病気の内容や必要な配慮等について確認を行っている場合もあります。そのような支援者が面接に同伴することを認めることも、理解を進めるための合理的配慮となります。 また、面接だけでなく、職場実習、職場体験、障害者トライアル雇用制度等を活用することで、仕事による負荷や疲労、休憩や休日による体調の維持等について、職場で調整を進めるとともに、難病患者の主治医等とも疾病管理上の情報交換も可能となり、本人、職場、支援者等の納得につながる採用への合理的配慮となります。② 職場配置時の合理的配慮 採用選考時での理解を踏まえ、実際の職場での合理的配慮の確保に向けた取組につなげることが重要です。ア 休日・休憩・通院等の条件のよい仕事内容であることの確認 治療と両立できる仕事内容については、一方的な過剰な配慮にならないように、本人とのコミュニケーションが重要です。例えば、休憩・休暇時や特定の業務を上司や同僚がその都度カバーするだけでは、「職場の迷惑になっている」と本人の心理的負担が大きくなったり、「なぜ、あの人だけが特別扱いなのか」と職場の人間関係が悪化しやすくなります。また、単に仕事の負担を減らすように業務調整をすると、本人は「閑職に追いやられた」と仕事上の不満を高めやすくなります。イ 上司・同僚の病気の正しい理解 治療と仕事の両立に関係する職場の人間関係のストレスは、離職の大きな原因です。職場での健康管理・通院・休憩がしやすい配慮、通院等への出退勤時刻や休憩等の職場配慮・調整、体調悪化につながる無理な仕事内容の回避等が、周囲の同僚の不公平感を招くことにならない丁寧な対応が重要です。 後述する職場と本人で納得できる両立支援プランの共有や、上司や同僚の疲労等についての第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第8節在職中の難病発症もあります。しかし、難病患者が偏見や差別をおそれて職場に必要な配慮を申し出ることが困難な状況がみられます。このような状況は、本人の治療と仕事の両立が困難になるだけでなく、企業の健康や安全への配慮上も問題となる悪循環となっています。 そのような悪循環を断つためには、募集採用時だけでなく、就職後も社内の従業員向けに、治療と仕事の両立支援や障害者差別禁止等の基本方針を明示し、難病患者が差別をうける心配なく、職場で必要な配慮について相談しやすい環境を整えることが重要です。 難病患者には、各自の体調に合わせながらも、一般求人を含め、自分の能力を発揮して活躍できる仕事への挑戦をしている人が多くいます。募集・採用選考から職場配置にかけて、就職後の治療と仕事の両立のための事業主とのコミュニケーションが困難となりやすいため、合理的配慮が必要です。① 募集・採用選考時の合理的配慮 難病患者の募集・採用選考時には、難病患者が安心して病気や必要な配慮について開示でき、意欲や能力のアピールも含め十分なコミュニケーションを取れるようにすることが合理的配慮になり得ます。ア 治療と仕事の両立支援等の方針の明示 治療と仕事の両立に向けて職場の理解と協力の必要性を認識していても、募集採用時の企業側の「難病」への反応を予測できず迷う人が多いのが現実です。このような人たちは「健康状態」を一般的に聞かれても回答に困っています。 企業として、治療と仕事の両立支援や、障害者差別禁止や合理的配慮提供に取り組んでいるならば、それを募集採用時に明示すること自体が合理的配慮になり得ます。そのような方針を明示した方が人材確保に有利であるという考え方もあります。イ 能力や適性と必要な配慮を理解するための時間確保 面接において、適性や意欲等の確認と、必要な配慮等の理解のために、体調等にも配慮しながら面接時間を延長することも合理的配慮とな198
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