第3章 第8節第8節 その他の障害者199声掛け等ができる職場環境整備が重要です。ウ 職場での対処スキル等の相談・助言 多くの難病患者は、繁忙期の通院や休憩の確保、職場の上司・同僚との理解を促進しやすいコミュニケーションの取り方等に悩んでいます。障害者職業生活相談員としては、例えば、「繁忙期でも必要な通院を自覚的に行うことは結局は就業が安定して職場のためになる」「できないことばかりを言うのではなく、病気でも何ができるかを積極的に上司等とも相談して考えていく」「職場の配慮については、お互い様であっても、感謝の気持ちを伝えるようにする」といった本人への相談・助言も重要です。 難病患者の治療と両立した就業継続のためには、無理なく活躍できる仕事内容や、休憩や通院等がしやすい職場での調整のため、主治医、職場、産業医等のコミュニケーションが重要です。そのスムーズな実施のためには、厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に沿うとよいでしょう。2020年3月からはその参考資料としての「企業・医療機関連携マニュアル」の事例編にも難病が追加されています。① 主治医への勤務情報提供と意見書の要望 難病医療は日進月歩であり、また外見からは分かりにくい難病の症状や留意事項もあるため、主治医の意見書を求めることは重要です。一方、主治医としては、仕事内容や職場の状況が分からなければ信頼性の高い意見を示すことは困難です。 両立支援の枠組みでは、まず、労働者である患者本人から勤務情報を主治医に提供し、両立支援のためという目的を明確にして本人の同意の下で主治医の意見書を求めます。その際、機微な健康情報を取り扱うことになるので、産業医等がいる場合には、産業医等を通じて情報のやり取りを行うとよいでしょう。ア 特に禁止や留意すべき業務等 疾病の種類や重症度により、個別の機能障害や、失神・脱力発作、突然の不動状態、免疫低下、皮膚の障害等、個別の症状による、本人の健康状態の悪化、職場での安全確保の観点を踏まえて、特定の業務を禁止したり、特別な留意をしたりする必要がある場合があります。イ 定期通院等のために休暇や出退勤時刻の調整の必要性 たとえ体調がよく、特に問題がない場合でも、定期的検査や服薬の調整、医療的な相談等は、急な体調悪化や入院、休職、障害の悪化等を予防するために重要な意義があります。専門病院では休日診療が受けられないことも多く、受診予約日に無理なく通院ができるような配慮が必要な場合もあります。ウ 就業中の休憩や疾病管理等の配慮の必要性 疲労や痛み等は本人の自覚症状以外では分かりにくいので正しい理解が重要です。エ 症状の進行や治療の見通し 進行性の疾病なのかそうでないのか、進行性の場合は現在の仕事がいつごろまで継続可能なのか。進行性でない場合は、どの程度症状が安定しているのか。休職後の復職については、どれくらいの期間で復職が可能なのか、原職復帰は可能なのか。これらについて専門の主治医から必要な情報を得ることが必要です。② 主治医の意見書を踏まえた両立支援プランの作成と共有 主治医の意見書を踏まえて、職場として、本人、所属長、人事労務担当者、産業医等の同意を得て、具体的な両立支援プランを作成します。具体的には、治療の方針や見通しの確認、休職後の職場復帰や体調管理と両立できる仕事内容や勤務条件の調整スケジュール、職場としての具体的な就業上の配慮事項、フォローアップ面談のスケジュール、その他、同僚への説明の方針、突然の体調悪化にも対応できるように、チームで引き継ぎを意識した仕事の仕方にすること、上司が異動する時には引き継ぎをすること、病状の進行に合わせた見直し等、話し合いの結果を文書として確認し共有します。ア 体調悪化の兆しの自覚の職場で申出のしやすさ 体調悪化の兆しとして、痛みや倦怠感、疲労や発熱などの症状が本人に自覚されますが、そのような症状の有無や程度は外見からは分かりにくいものです。上司等から労働者本人に声掛けを行うなど、労働者本人が体調の変化について申出をしやすくし、体調管理を確実に行える職場環境を整えることが重要です。イ 症状のない場合でも定期的通院等が必要であることへの理解と協力⑹ 就職後の合理的配慮
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