令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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…第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第8節 在職中に進行性の難病等を発病しても、そのことを隠して働き続けてストレスを抱え、症状がかなり進行してから職場に相談があり、その時点では職場で対応が困難となる状況が見られます。「(4)難病患者の理解と障害者差別禁止のポイント」で示したように、難病患者がより早期に職場に相談しやすい職場環境整備が重要です。④ 病状悪化や障害進行時の雇用継続支援 病状の進行により職務遂行や通勤等が困難となった場合、設備改善等や配慮の必要性に応じて、障害者雇用関係施策の活用策についても本人と相談し、医師の意見を確認するとよいでしょう。 働き盛りで発症した難病患者等、職務上の経験を積み、判断力等の管理的な仕事能力の高い人も多くいます。身体機能が障害されても、知的能力には影響がない疾病も多くあります。情報通信技術の進歩により、通勤の負担の少ない働き方や、仕事の進め方にも多くの可能性があります。10年以上かけてゆっくりと症状が進行する疾病も多く、本人の得意分野を活かせるように、本人、主治医、職場等でよく情報交換し、長期的視野で働き方の多様化に向けた就業規程の改正も含め、支援機器の導入、キャリア計画や職業訓練、テレワークの導入等、多様な方策を検討するとよいでしょう。【参考文献】1…)障害者職業総合センター:「難病患者の雇用管理マニュアル(2018)2…)障害者職業総合センター:「難病患者の就労支援のために」(2016)3…)厚生労働省:「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(2019)4)治療と仕事の両立支援ナビ https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/5…)障害者職業総合センター:「難病患者の職業リハビリテーションハンドブックQ&A」(2021)(春名 由一郎) 難病患者が健康かつ安全に働き続けるためには、定期的な診察や検査のための通院が不可欠です。外見からは何も問題がないように見えることから、職場の同僚や上司に通院の必要性が理解されにくく、本人が通院しにくくなったり、職場での人間関係の悪化等につながらないよう、必要に応じて上司や同僚に説明する等、理解や協力が得られるようにすることが重要です。ウ 計画的な休職と復職の支援 難病の治療方法は日進月歩であり、より症状を安定させられる治療法に変更するために、数か月の入院が必要な場合があります。そのためには、職場での業務調整を含め計画的に実施できるように、両立支援プランを新たに作成することもよいでしょう。エ 進行性の難病への対応 進行性の難病であっても、通勤や職務遂行等に影響が出る程度に症状が進行するまでには数年〜10年以上かかることが一般的であり、将来の治療の進歩により状況が改善する可能性もあります。本人も職場も将来不安から過剰反応することなく、進行の見通しを確認し、現在と当分の間の対応と将来への長期的プランを分けて考えることが重要です。③ 在職者の難病発症への対応 在職者が難病を発症した場合には、情報不足による不要な退職を防止することや、進行性の難病の早期に安心して職場に相談できる環境づくりが重要です。ア 「びっくり退職」の防止 難病は働き盛りでの突然の発症も珍しくなく、最初の激しい症状で入院し、難病という診断・告知に本人も企業も情報不足のまま自主退職等(「びっくり退職」)となり、その後数か月で症状が安定し、十分復職が可能であったことが分かったという例が少なくありません。従業員が難病で入院・休職となった時には、早めに主治医等から治療の見通しや就労可能性について情報を収集するとともに、会社の休職規程等を踏まえ、不必要な退職を防止し、スムーズな復職につなげる支援が重要です。イ  進行性の難病の発症初期から相談しやすい環境づくり200

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