令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
84/304

⑷  社内への障害(疾病)の伝え方と内容についての本人との共有化コーチ)による支援を依頼し、専門的な立場から作業の選択と勤務時間の組み合わせ、勤務時間の延長方法、職場の環境整備方法、本人が職場で必要とする生活面の支援方法(特に本人が自覚していない体調不良等に対する留意事項)及び家族や各支援機関との連携方法等についてアドバイスしてもらうことも可能です。また、精神障害者を試行的に短時間勤務で雇用し、一定の期間をかけて、職場への適応状況をみながら、徐々に就業時間を伸ばし、週20時間以上働くことを目指していく障害者トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)の活用も有効です。障害者短時間トライアルを含めて、障害者トライアル雇用助成金の適用においては、管轄するハローワークに障害者トライアル雇用に係る求人申込みを行い、ハローワークに求職登録している精神障害者をハローワークの紹介により雇い入れ、事業主と対象労働者との間に有期雇用契約を締結する必要があります。その他の留意事項としては、精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新手続が必要となりますので、更新日の確認が大切です。障害を伝えて、社内が障害特性などを的確に理解し、協力体制を構築することは、障害者の雇用の質の向上につながる大切な取り組みです。しかし、職場に障害を伝えることは、本人の障害や疾患に関する機微に関わるものですから、画一的に考えるものではなく、相手に応じて対策を講じながら慎重に対応していくことが求められます。障害の多様化などにより、他の社員から見ると、採用した障害者がどのような障害があるのか分かりにくい事例があったり、最近では障害名や疾患名をSNS等で調べて重篤な事例や誤った情報を入手し、障害者に対して適切とはいえないような対応をしてしまうケースが発生することもあります。また、本人は人事担当者と職場の上司だけには障害のことを伝えたいが、その他の社員には障害を伏せて働きたいという方もいます。そこで、障害者を職場実習で受け入れたり、採用しようとするときには、障害の内容や配慮すべき事項に第2章 障害者の雇用管理上の留意点第2章 第4節話通訳を同席させて採用面接を行うなどの配慮も望まれます。手話は聴覚障害者にとってなじみのある言語なので、リラックスして自己表現できる有効手段でもあります。手話通訳の席は面接者と並ぶ位置におき、手の動きが相手によく見えるようにします。面接の時には口話でも会話ができることがありますし、聴覚障害者の中には手話を使わない人もいます。口話で採用面接の会話をするときには、口の動きが相手によく見えるように顔を正面に向けて、ゆっくりと、口を大きくあけて話すことが大切です。しかし、口話だけではこちらの言葉が正しく伝わらないことや聴覚障害者が上手く読み取れず正確に受けとめていないこともあり、また補聴器をしていても相手の発音がよくわからないことも多いため、十分にコミュニケーションをとるためには慎重に対応することが望まれます。【精神障害者の面接時の配慮等】精神障害者の中には初めての場面では緊張が強く、自分を十分に表現しにくい人が多いようです。また、採用面接には慣れていて、一見緊張感を感じさせずに上手に対応できるものの、経歴や実績などでつじつまが合わないことや質問されることに的外れな答えをしてしまい、内面の緊張を伝えられずに能力を低く見られてしまうという方もいます。したがって、事業主が精神障害者の採用面接を行う場合には、本人が支援を受けた地域障害者職業センターや、その精神障害者とかかわった福祉・保健・医療機関、障害者就業・生活支援センター等のスタッフに同伴してもらうことが望まれます。そうすることで本人の気持ちがほぐれますし、自分自身で表現が不十分なところは同伴者が口添えできます。ただし、事業主が支援機関の同伴を面接時の必須要件としたり求人票に記載することはできません。事業主が初めて精神障害者を雇用するような場合は、雇用主の不安感を少しでもなくすために、本採用になる前に障害者トライアル雇用(助成金の利用)制度があります。障害者トライアル雇用の実施に当たっては、職場適応援助者(ジョブ82

元のページ  ../index.html#84

このブックを見る