令和7年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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生したとしても、すぐに支援者が駆けつけることができます。それに加えて、障害者本人はテレワーク時の孤立感について、支援者は障害者本人の体調判断について、どの程度なのか確認できます。そして、テレワークを本格的に開始する前に対策を立てることができます。このように、いきなりテレワークを開始するのではなく、充分に訓練を積んでから開始することで定着しやすくなります。もちろん、訓練以外にも、雇用管理や緊急時の連絡体制など事前に決めておくべきこともたくさんありますので、準備を怠らないよう気をつけてください。【参考文献】1)…障害者職業総合センター調査研究報告書No.70:「精神障害者の職業訓練指導方法に関する研究」(2006)2)…田中萬年・大木栄一編著:「働く人の『学習』論」学文社(2007)3)…南雲直二監修:「重度障害者の職業リハビリテーション入門」荘道社(2010)4)…道脇正夫:「障害者の職業能力開発[改訂新版]」雇用問題研究会(2011)5)…新井吾朗,上田勇仁,小澤力,佐藤大介,谷口雄治,中村陽文,深江裕忠,湯浅幸敏:「12訂版 職業訓練における指導の理論と実際」職業訓練教材研究会(2022)6)…厚生労働省:「都市部と地方をつなぐ障害者テレワーク事例集」…厚生労働省(2020)7)…障害者職業総合センター調査研究報告書No.171:「テレワークに関する障害者のニーズ等実態調査」(2023)8)…障害者職業総合センター支援マニュアルNo.25:「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」(2024)(深江 裕忠)第2章 障害者の雇用管理上の留意点第2章 第4節活動を諦めている多くの障害者にとって、テレワークでの在宅勤務の雇用は救いになるでしょう。とはいえ、いままで職場で作業してきたことをテレワークに変更することで、働き方や仕事環境に大きな変化が生じます。この変化に障害者本人が対応できるように、何らかの職業訓練が必要になります。ここでは、障害者のテレワークを導入するときの職業訓練について、いくつかのポイントを紹介します。まず、テレワークで働くためには、PCスキル以外にも必要なものがあります。『テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発』(障害者職業総合センター支援マニュアルNo.25)によれば、「作業環境の整備」「情報管理能力」「自己発信力」「作業の自己管理力」「体調の自己管理力」「テレワークに必要な力を踏まえた自らの得意・不得意の理解」も必要になります。テレワークだと、職場のように、すぐ近くに相談できる支援者はいません。また、支援者が様子をみてアドバイスしてくれることもありません。そのため、障害者本人が様々なことを管理できて、さらに必要な情報を発信できるように訓練する必要があります。詳しくは『テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発』にて支援プログラムが教材付きで提供されていますので、ご参照ください。ところで、テレワークと相性が悪い障害特性の人もいます。例えば、マウスやキーボードでの操作が難しかったり、長時間ディスプレイを見るのが困難だったり、状況に応じた判断が難しかったり、文字ベースでの指示理解が難しかったりするときは、テレワークよりも職場で勤務するほうが相性が良いでしょう。逆に、テレワークの方が相性が良くて作業効率が上がる人もいます。そこで、テレワークを導入するときの職業訓練では、相性も見極めるようにします。つまり、テレワークで働くかどうかの最終判断は、職業訓練後に決定することがポイントです。具体的には、テレワークをトライアルします。障害者本人だけで作業する環境を再現するために、職場内の個室を自宅にみたてて、障害者本人は個室に1人で居て、コミュニケーションツールの指示だけで作業をしてもらいます。もし、障害者本人が職場に移動できず自宅でトライアルするときは、支援者が自宅近くで待機します。これなら、もし障害者本人が対応できない事態が発94

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