R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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106第2章 障害者の雇用管理上の留意点かせるということにつながると考えられます。なお、この「繰り返し」はやりすぎると、かえって話を聞いていない印象を与えることにつながってしまうことや、また相手の発言のどの部分を繰り返すのか(なるべく相手が重要だと感じていると思われることのほうがよい)について留意する必要があります。「要約」は「繰り返し」と似ている機能がありますが、「繰り返し」がクライエントの発言の一部をそのまま繰り返すのに対し、「要約」は相談員が聴いたことを相談員なりにまとめて確認をするという点が異なります。この「要約」も、クライエントの話を整理し、クライエント自身に話について再認識してもらうこと、また相談員が理解したことについて確認し、次の話に進めていく、という役割があります。相談を求める人の中には、問題が複雑に絡み合い、混乱している場合もあります。相談員が相談中、要所要所で要約をすることで、解決には至らないものの、少し頭の中が整理されるというクライエントもいることでしょう。③ 開かれた質問、閉ざされた質問クライエントの話をさらに探る必要があり、質問をする必要がある場合もあるでしょう。質問には「開かれた質問」と「閉ざされた質問」とがあります。一般的には、開かれた質問の方がクライエントにとっては自由に話すことができるため、多めに使用した方がよい、とされています。ただし知的障害や精神障害のある人にとっては、開かれた質問ばかりではどう答えたらいいのか分からなくなり困惑したり、混乱したりすることも少なからずあると思われます。もちろん、閉ざされた質問ばかりでも、「取り調べ」や誘導尋問のようになってしまうこともあるので、望ましくはありません。クライエントの認知的な能力や、話の内容などを勘案しながら、開かれた質問と閉ざされた質問とのバランスを取っていくことが必要でしょう。なお、開かれた質問のうち、特に「なぜ~?」とある行為などの理由を相談員がクライエントに聞きたくなることもあるでしょう。この「なぜ」の質問もあまりに多用するのは望ましくないとされています。クライエントに限らず一般的に人は、自分の行動の理由を全てわかっているわけではありません。また、「なぜ〇○した(○○しなかった)?」という問いかけを多くしてしまうと、「責められている」と感じることもあります。「なぜ」の質問は使ってはいけないということではないのですが、その使用方法には留意が必要です。④ 感情の反映相談場面でのクライエントの発言の中には、不安、怒り、悲しみなどのネガティブな感情的な要素が含まれていることが多いです。また、単純に一つの感情だけではなく、関心がある反面不安もあるといった、複数の感情が含まれていることも少なくありません。このようなクライエントの感情について相談員が確認しフィードバックしていくことは重要です。相談を進めようとすると、その内容・事実の確認に相談員は焦点を当てがちです。相談内容の確認も確かに重要なのですが、最終的にはクライエントの意思を探り、決定していくことが重要です。感情の反映をすることは、共感をすることになりますので信頼関係の構築が促進されます。また、その感情が言語化されることで、クライエントの感情が外在化され、自分の感情を客観的に捉えることにつながります。例えば、モヤモヤした気持ちが「悲しんでいる」「怒り」というネーミングを与えられることで明確化され、クライエントから再認識されることになります。さらに、その感情に関連する思考などを掘り下げることにもつながり、自己理解を進めることにもつながります。以上のことから、相談の内容・事実確認だけにとらわれず、感情にも十分に焦点を当てて、クライエントの感じ方・見方を尊重した相談を行っていくとよいでしょう。⑶ 複数回に渡る相談全体の組み立て・見通し障害者職業生活相談員の場合、会社で働く障害者であるクライエントへの心理的なカウンセリングを行うだけでなく、具体的な問題解決を図るという役割が期待されています。つまり、クライエント本人とその職場・生活環境の双方に具体的に働きかけることが求められています。そして、そのためには、どのような方向に進めるのか、クライエントとともに検討し、問題解決を図っていくことが重要です。ところで國分は、カウンセリングの全体の手順(構造)について、①リレーションをつくる(面接初期)、②問題の核心・本質をつかむ(面接中期)、③適切な処置をする・問題を解決する(面接後期)と示しています。つまり、問題解決の前に、関係性の構築や問題の吟味の重要性が指摘されています。問題の解決を急いでしまうことで、クライエント本人の気持ちがなかなか追いつかず、相談員側の解決策第2章 第10節

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