R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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131第3節 聴覚・言語障害者⑴ 言葉の習得が困難聞こえる人の場合には、耳から周囲の人々の音声言語を聞くことによって言葉を習得していきます。聴覚障害者の場合、聞こえなくなった時期にもよりますし、個人差がありますが、聞こえの障害の結果として言葉の習得が遅れがちです。先に述べたように、音声言語の概念を習得する2、3歳の時期までに聞こえなくなった場合には、言葉を獲得するのに相当の困難を伴います。耳から入る情報は相当な量であるにもかかわらず、その手段をもち得ないからです。また、言葉を発する際にも、自分の発音が正しいかどうかを耳で確認できないので、どうしても不明瞭な発声になりがちです。⑵ コミュニケーション障害が発生する多くのコミュニケーションは音声言語を介して行われるので、聴覚障害はコミュニケーション障害といえます。加えて、外見からはその障害が見えにくいため、コミュニケーションについての正しい理解が得にくい側面があります。例えば、聴覚障害者だからコミュニケーションが全くとれないと考えられたり、逆に補聴器さえつければあとは全く不自由がないと思われたりします。また、中途失聴の場合、話すことができると、「聞こえ」についても問題はないものと思われて、全く配慮されないこともあります。このように、自分の意思を十分に相手に伝えることのできないもどかしさ、コミュニケーションの困難さに伴う聴覚障害者の心の葛藤は相当なものです。コミュニケーションは日常生活にとって欠くことのできない要素です。職場においてもそれは何ら変わることはありません。作業を進めるうえで障害が少ない2聞こえに障害があると…と考えられがちであった聴覚障害者は、生産現場を中心にその雇用が進められてきましたが、職場におけるコミュニケーションの難しさによる対人関係の問題や、教育訓練上の配慮の問題が指摘されるようになってきました。⑶ 情報障害が発生する聴覚障害そのものは、「聞こえ」についての機能障害といえますが、日常生活においては「聞こえ」の問題に由来するさまざまな制限や制約があります。例えば、列車内で事故等による列車の遅れに関する車内放送が聞こえないために、適切な迂回方法がわからず時間をロスしてしまうなど不利益を被るような問題が発生します。単に聞こえないだけでない「情報障害」の側面に注目する必要があります。また、聞こえる人は、耳から入る情報を自然に取捨選択し、自分との関係を判断しています。ところが、聴覚障害者にとっては、それが自分に関係する内容なのか、そうでないのかは教えられない限りわかりません。もし本当に関係のない話だとしても、聴覚障害者の人を前に数人で話をしていたとしたらどうでしょう。「直接あなたには関係のない話だから、後で結果を伝えてあげるよ」といわれても疎外感はぬぐえません。さらに、情報が十分に得られないために、常識が欠如していると見られてしまうことがあります。それは、聴覚障害者本人の責任であるように思われがちですが、その常識ともいうべきことが、音声言語以外の方法で本人に伝えられてきたのかどうかを考えなければなりません。次にこれらの特徴を踏まえたコミュニケーション方法について、見ていくことにします。⑵ 言語障害とは言語障害とは声を全く出せないか、声は出せても言葉が不明瞭というように、音声や言語によって意思を伝えることができない障害のことをいいます。聴覚障害に起因する言語機能の損失、失語症などの言語中枢神経の障害によるもの、咽頭の損失や障害・異常によるもの、発声筋のまひによるもの、口蓋裂など構音機能障害によるものなど、その原因はさまざまです。言語障害は、必ずしも聴覚障害と連動はしていませんが、聴覚障害者の中には言語障害を併せもつ人もいます。また、中途で言語障害となった人の場合、意思を発声によって伝えられないもどかしさを強く感じることになります。本節は、聴覚・言語障害者としてまとめていますが、以降は主に聴覚障害に焦点をあてて述べていくことにします。第3章 第3節

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