R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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135第3節 聴覚・言語障害者職場における合理的配慮の事例として国の「障害者差別禁止・合理的配慮指針❶」では聴覚・言語障害について、採用後の配慮事例として、業務指示・連絡に際して、筆談やメール等を利用することや、危険個所や危険の発生を視覚で確認できるようにすることなどがあげられています。これらはそのまま職場定着のための雇用上の配慮にもつながるといえます。⑴ 職場のコミュニケーション職場のコミュニケーションというと、1対1の作業の指示上の問題に焦点があてられがちですが、職場外でのインフォーマルな場面も含んだコミュニケーションについて考えることも大切です。コミュニケーションには、①内容の伝達と、②関係の伝達の二つの側面があるといわれています。作業に関する指示、仕事上の留意点など内容のコミュニケーションは、作業を進めるうえで非常に大切であり、確実に内容が伝達されるためには、前述のようなさまざまなコミュニケーション手段が駆使される必要があります。コミュニケーションにおける関係の伝達の側面とは、話をする相手との人間関係を形成するという機能です。上司と部下なのか、あるいは同僚同士なのか、フォーマルな関係なのか、インフォーマルなものなのか、コミュニケーションのとり方によってその二者間の関係が伝わることになります。聴覚障害者はコミュニケーションが困難なことから、仕事中は筆談でやりとりしてくれても、昼休みや仕事帰りのときなど、職場の仲間の輪に入っていくことができずに寂しい思いをしていることが多くあります。採用された直後は、同僚の関心も高く、いつでもどこでも習いたての手話でコミュニケーションの輪が広がったのに、時間の経過とともにその機会も減っていってしまい、寂しい思いをした聴覚障害者も少なくありません。作業の場面やフォーマルな場面でコミュニ5雇用上の配慮ケーションがとれていればそれで完全ではないのです。それから、職場全体の情報に関するコミュニケーションの側面も忘れてはなりません。聴覚障害者は聞こえる人のように、作業をしていて自然に周囲の音声情報が入ってくるわけではありません。周囲の音声情報には、職場全体にかかわる情報から、同僚のちょっとした動向などさまざまです。いずれにせよ、こうした情報から取り残されると、例えば、「会社のことをわかっていない」、「気がきかない」といった評価に結びついてしまうこともあります。また、会社あるいは自分の所属する職場の現状や向かっている方向を知らされないまま、今、担当している仕事についてどんなに「がんばれ」といわれても、全体におけるその位置づけがわからないままに意欲を持続するのが難しいのは当然です。後にも述べますが、職場での会議や朝礼などで、聴覚障害者にすべての情報を伝えるのは容易なことではありません。しかし、こうした情報の保障は、聴覚障害者の職場適応を考えるうえでもきわめて重要なことなのです。⑵ 職場配置聴覚障害者の職場配置に当たっては、雇用している聴覚障害者数にもよりますが、一つの職場に聴覚障害者を集中配置するところと、分散させて配置させているところがあります。いずれも長短があって、集中方式では、情報の提供などが一元化でき効率的ですが、コミュニケーションの取りやすさから当然のこととは言え、聴覚障害者同士が固まりやすく、聞こえる社員との交流をもちにくいといわれています。一方、分散方式では、聴覚障害者が孤立しやすく、情報提供の際も非効率であるといったことが一般的にはいわれています。しかしながら、同じ聴覚障害者だからうまくいくかというとそうとは限らず最終的には本人の適性やての作業成果が十分に現れないことがあります。⑶ 行動面での特徴人間が社会生活において自然に耳から得ている情報は少なくありません。当然、個人差はありますが、職場における常識などが身についていなかったり、気づくのに時間がかかって常識に欠けていると判断されたりしてしまうこともあります。次に、このような聴覚障害の職業特性を踏まえ、職場における問題点とそれを解決するための方策について考えてみることにします。❶ 「差別禁止・合理的配慮指針」については、第4章第4節並びに資料編第4節及び第5節参照。第3章 第3節

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