R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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146第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第4節ヒト免疫不全ウイルス(HIV: Human Immunodefi-ciency Virus)は免疫機能を担う白血球を破壊しながら数年〜10数年をかけて増殖し、重篤な免疫不全の原因となります。しかし、1980年代の治療法のなかった時代や、現在でも発展途上国等で治療を受けられない状況とは異なり、わが国では1990年代後半以降、治療法の進歩により感染者でのHIVの増殖を抑えることができるようになり、服薬や通院を続けることで職業生活が可能な人が多くなっています。現在では血液中にHIVを検出できない程度に抑える治療も一般的になり、その場合、感染の危険性もほとんどなくなっています。その一方で、病気への誤解や偏見への心配から、職場に配慮等を申し出にくく、心理的なストレスを抱えている人が多いことも明らかになっています。平成10年からは内部障害に追加され、医療費の自己負担が軽減されるとともに、障害者雇用率制度の対象にもなっています。病気についての正しい理解に基づき、安定した職業生活を送れるような支援が求められます。8ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害⑴ HIVの基礎知識HIVはウイルスですが、インフルエンザ、風邪、下痢等のウイルスとは異なり、普通に生活している同居者にも感染しない非常に感染力が弱いウイルスです。HIVは感染者の血液、精液、膣分泌液、母乳に含まれますが、空気中や水中では死滅してしまうため、直接傷口や粘膜に接触しないと感染しません。また、少し触れただけでは感染しません。また、服薬を継続しているHIV陽性者(発症の有無にかかわらずHIV抗体検査が陽性であった人として、このように呼びます。)の血液や体液中のHIV量は検査で検出できる限界未満となっている場合が多く、その場合、感染の危険性はないとされています。HIV感染についての不合理な「万が一」の心配は、結果として、HIV陽性者の雇用差別につながります。主な感染経路は、「性的感染」、「血液感染」、「母子感染」となっています。コップの回し飲み、握手、涙・汗、キス、同じ鍋をつつく、風呂やプール、トイより、腸管の切除が必要となることがあります。③ 先天性小腸閉鎖症先天的に小腸の内腔に閉塞を認めるもので、早期に腸切除を要します。⑵ 中心静脈栄養法従来、輸液といえば水分・電解質❶の補給が主体でしたが、現在では、病態により栄養補給の意味づけを強くした輸液が可能となりました。末梢静脈からでも、適当な輸液剤と脂肪乳剤を併用すると1,300kcal程度の投与が可能とされます。しかし、末梢静脈からの輸液は血栓性静脈炎❷の発生が高率であり、長期の栄養管理には適しません。そこで行われるのが、中心静脈栄養法です。これは、カテーテル先端を鎖骨の下から挿入し、中心静脈に留置した状態で輸液管理を行う方法で、長期の、さらに高カロリーの輸液が可能となりました。カテーテルの清潔維持、電解質や糖代謝異常出現の監視(血液・尿検査)が必要であり、医療管理下で行われます。小腸機能障害のために長期の中心静脈栄養法が必要で、かつ一般状態が安定し、患者・家族の協力が得られる場合、中心静脈栄養法を在宅で行う方法がとられつつあり、医療保険の適応対象にもなっています。これにより、患者・家族の社会参加を助ける効果も出てきています。輸液のシステムをジャケットやショルダーバッグに装填して移動が可能なものができており、輸液を行いながらの就労も可能となってきました。⑶ 雇用上の注意① 高熱環境の職場、肉体労働主体の職場などでは発汗量も多いことから、電解質バランスの異常や脱水状態をきたしやすくなるので、職場としては不適当です。② 中心静脈栄養法は厳重な医療監視下で行われるべき方法であり、定期的な医療機関の受診は欠かせませんので、定期的通院に配慮が必要です。(佐久間 肇)❶ 電解質:特定の溶媒に溶かしたときに、溶液が電気伝導性をもつようになる物質のことで、体内電解質とは、Na、Cl、K、Ca、Pなどが重要視される。❷ 血栓性静脈炎:局所の感染に基づく静脈炎で、局所の静脈の肥厚と血栓の形成をみる。

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