R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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147第4節 内部障害者レ、せき、くしゃみ、シーツの共有等で感染することはありません。血液感染といっても蚊やダニを介してHIVが感染することはありません。通常の職業生活では、HIVが他人に感染することはなく、食品の取り扱い、美容師やマッサージ師など顧客に接触する仕事でも制約はありません。職場の出血事故で直接傷と傷が接触するという稀な事態にも、後述の出血事故への適切な対処によって、感染の可能性を限りなく少なくすることができます。社員寮等の共同生活でも、衛生管理(カミソリ・歯ブラシ等の血液がつきやすいものを共用しない等)や一般的な安全・健康指導で十分です。⑵ HIVによる免疫機能の低下免疫機能とは一種の「防衛体力」です。空気中、食べ物、様々な物には、細菌、カビ、ウイルス等が多く存在しますが、人々が何の問題もなく生活できるのは、免疫機能がこれらの異物を排除しているからです。HIVは、ヒトの免疫機能の中枢であるヘルパーT細胞(血液中やリンパ節にある白血球の一種)に入り込み、その内部で増殖を続け、これを破壊します。免疫機能の低下は、ヘルパーT細胞の数(「CD4数」と呼ばれる)の検査の他、日和見感染症(通常の免疫力があれば問題を起こさない非常に弱い病原体による感染症)の発症によっても分かります。エイズ(AIDS)とは、HIV感染による重度の免疫不全症候群のことを言い、後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)の略です。通常の免疫力があれば発症することはない特定の疾患が確認された時点でエイズと診断されます。⑶ HIV感染症の治療と障害認定現在、わが国では、エイズが発症した場合でも1〜2ヶ月の入院後、多くの場合、適切な治療を行うことで職場復帰が可能な例が多くなっています。治療を継続することで、免疫機能は障害のない人と変わらないレベルまで回復し、血液中のHIVも検出できない程度に低下している人も多くなってきました。免疫機能障害は、エイズ発症の有無や、血液検査のデータを含む12の指標項目を総合的に判断して認定され、おおまかに1〜2級がエイズ発症、3〜4級がエイズ発症前の免疫機能低下のレベルに相当します。前述のように、適切な治療により免疫機能は回復しますが、現在HIVを完全に消失させる治療方法はないため、治療を中断するとHIVは再増殖し、免疫機能は低下してしまいます。このため、服薬によって免疫機能が回復している人も障害認定は継続しています。実際の免疫機能低下の程度については、エイズの診断や障害等級ではなく、免疫機能の検査値等での個別の確認が必要です。⑷ 服薬・通院について抗HIV薬は複数の錠剤を組み合わせて、各人の免疫状態やライフスタイルに合ったものが選択されます。かつては複数の錠剤を仕事中にも服薬する必要があるなど負担が大きかったのですが、最近では服薬回数が一日に1回〜2回と、仕事中の服薬の必要がなくなってきています。また、HIV陽性者自身の健康管理も取り組まれています。通院は、特に体調に問題がない場合でも、予防的な意義もあり、月1回から数ヶ月に1回、定期的に必要です。⑸ 雇用上の注意点(合理的配慮を含む)職場において、同僚の科学的に根拠のない恐怖や誤解、偏見による差別や混乱が生じることを防止するために、本人とのコミュニケーションや、情報管理、啓発に慎重な対応が必要です。また、疾患管理と職業生活の両立の支援、衛生管理や出血事故対処の一般手順に留意します。① 病気についての情報収集既述のように、HIVによる免疫機能障害あるいはHIV感染それ自体では、通常、職務遂行のための適性と能力に直接関係しません。労働安全衛生法上の「病者の就業禁止」にはあたりませんし、HIV感染それ自体は解雇の理由に該当しません。HIV感染を本人から告げられた場合に、それで過剰反応を起こすことなく、あくまで本人の適性と能力に焦点をあわせ、病気により不利な扱いをしてはいけません。そのことを明確に本人に示すことで、本人の安心にもつながります。また、HIV感染のことを明示することを望まない人もいることから、一般的に採用選考時等に、HIV感染についての情報の収集は行うべきではありません。健康診断も、HIV抗体検査証明が必要な国での勤務といった、合理的・客観的な理由がある場合等を除いて、HIV感染の検査は行わないことが原則であり、また、検査を行う場合には内容と理由を本人に事前に周知すべきです。第3章 第4節

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