R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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153第5節 知的障害者⑵ 雇用継続のポイント知的障害者について安定した雇用を継続していくためのポイントをまとめてみます。① 風通しの良い職場にする知的障害者は意思表示が苦手であることから、仕事や人間関係、職場環境に対する不満や悩みがあっても自分から相談することは不得手なことが多く、職場内で孤立してしまいがちです。このため、キーパーソンを中心に周囲から日常的に声かけをしたり、職場内で定期的な話し合いの時間をつくることが大切になります。知的障害者の受け入れ態勢などについて、社内で十分な話し合いを行い改善していくことが、結果的に障害のない社員にとっても働きやすい職場環境となります。② 企業だけで抱え込まない知的障害者が職場内で不適応などの課題が生じた場合には、企業だけで課題を解決するには限界があります。知的障害者が就職するまでには、特別支援学校、就労支援などの福祉施設、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど、地域の支援機関との関わりがあることが多く、企業はこうした就労支援のノウハウを熟知した支援機関と連携しながら課題解決を図っていくことが効果的です。本人にとっても、以前関わりのあった支援機関とは信頼関係ができていることが多く、安心して相談や支援を受けることができます。こうした地域の社会資源を大いに活用してください。③ 職場実習を通してミスマッチをなくす知的障害者の採用に際しては、当人の特性と職務内容や職場環境とのマッチングを十分に考慮することが必要です。ミスマッチを防ぐためには、面接だけではなく、職場体験を通して見極めていくのが有効な方法です。実際に働く職場環境の中で、作業態度、作業遂行力、意欲、対人態度などを長期間にわたり観察・評価することになります。実習を行う側も、自己の適性を確認し、就職に対する不安を取り除く機会になります。ハローワークが実施する職場実習であるトライアル雇用制度の実施期間は最長3か月間ですが、特別支援学校や就労支援機関が行う職場実習は1週間から数週間程度が多いようです。このように採用前の段階で障害者の適性や能力を③ 職務内容の検討知的障害者の場合、適職の見極めが難しいことから、配置する職務内容については試行錯誤を繰り返ししながら検討していく必要があります。採用前から本人に関わってきた支援機関などからの情報やアドバイスを得ることも大切なことです。職務内容の検討の際には、作業そのものだけではなく、作業を行う場所、一緒に働く同僚などの職場環境についても併せて検討する必要があります。また、採用当初には必要に応じて職場適応援助者(ジョブコーチ)も活用しながら職務内容について検討することが、本人の能力を長期的に最大限伸ばしていくことになります。④ 作業指示・伝達の方法知的障害者に指示を出す際には、その障害特性に配慮し、言葉による説明だけではなく対象者の理解力に合わせた指示の出し方が必要となります。その際、仕事内容は全体を小さな作業単位で切り分けて手順を説明することも大切です。具体的には、まず指示者が実際にやってみせる、次に本人と一緒にやってみる、そして一人でやらせて確認する、といった手順を理解するまで時間はかかりますが、くり返し根気よく進めていきます。そして、上手くできた時には褒めることが本人にとって大きな自信となり、就労意欲や作業能力の向上にもつながります。また、作業手順の理解を高めるために、文字に替えて図や写真、イラストを使ったマニュアルの作成は効果的です。言葉を通しての理解は苦手でも、視覚に訴えた図や絵による指示や説明で理解が早まります。さらに、目盛りの読み取りなど数量の操作についても、決められた量や長さにテープで印をつけるなどの工夫を行うことにより苦手を克服することができます。⑤ 安全への配慮働く環境の中には、取り扱いに注意が必要な機械や薬品、危険な場所等が存在することがあります。知的障害者は事前に危険を察知し、避けることが不得手です。こうした場所を改善したり、回避の対応方法、緊急時の避難方法など事前に安全確保のための教育・訓練を徹底する必要があります。特にてんかんを重複している知的障害者に対しては、高所での作業や危険物の周囲での作業を避けるなど、発作を想定した対応を確認しておくことが大切です。第3章 第5節

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