R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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156第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第6節⑴ 精神障害の定義精神障害者については、統合失調症、そううつ病(気分障害)などに代表されるような精神疾患に罹っている人、または精神疾患が原因となって生活のしづらさを抱えている人という理解が一般的であると思います。しかし、法律によって精神障害者の定義が少しずつ違っており、それが混乱を招く要因となっています。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下、「精神保健福祉法」という。)は医学的観点で精神障害者を定義しており、精神障害者を、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義づけています。精神作用物質による急性中毒又はその依存症とは、アルコール依存症、およびシンナーや麻薬などの薬物依存症などをさします。この定義だと、精神疾患に罹って、医療機関で診断を受けた人はすべて精神障害者ということになります。国際疾病分類(ICD-10)によると、「精神および行動の障害」の分類の中に、認知症、脳血管障害や脳挫傷等による高次脳機能障害、発達障害も精神障害に含まれています。このように、医学的観点からみると、精神疾患の概念は非常に広いものとなっていることがわかります。「障害者基本法」の定義では精神障害に発達障害が含まれており、さらに、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとされています。つまり、精神疾患だけでなく発達障害も含むことが法律に明記され、疾患があるだけでは障害者とはいえず、日常生活又は社会生活を送る上で相当な制限を受ける状態でなければならないと定義されているのです。 このように、生活の観点で精神障害を定義しています。「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下「障害者雇用促進法」という。)では、精神障害(発達障害を含む)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者と定義されています。そして、同法施行規則では1精神障害とは精神障害について定義しており、「精神障害者保健福祉手帳」の交付を受けている者、または、受けていない場合は、「統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)、又はてんかんにかかっている者」であって、「症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの」となっています。つまり、職業生活の観点から障害を定義しているといえます。さらに付け加えると、障害者雇用率に算定できる精神障害者を「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているもの」に限定しています。このことから、雇用支援策の対象となる精神障害者の範囲と、障害者雇用率の対象となる精神障害者の範囲が違っています。このことは留意しておく必要があるでしょう。さて、私たちが理解しておく精神障害者像ですが、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者となると、精神疾患、てんかん、発達障害、高次脳機能障害、認知症などが原因で職業生活を送る上で長期にわたって特別な援助が必要な者ということになります。知的障害も原因の一つに入りますが、療育手帳の交付を受ける場合が多いので、実質的にははずして構わないといえます。本稿では、これらを精神障害者と位置づけて進めることとします。なお、発達障害、高次脳機能障害(認知症含む)については別に項目を設け、詳細に解説してありますので、そちらも参照して下さい。⑵ 精神障害者の状況精神障害者の状況を示す資料ですが、医療機関にかかっている精神疾患患者と、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者の二つが考えられます。平成29(2017)年の患者調査によると、精神疾患の患者数は推計で419万3千人となっています。内訳は、多い順で、うつ病などの気分障害(127.6万人)、統合失調症など(79.2万人)、不安障害など(83.3万人)、認知症(アルツハイマー病)(56.2万人)、てんかん(21.8万人)、認知症(血管性など)(14.2万人)、アルコール依存症など(7.6万人)となっています。高次脳機能障害は認知症(血管性など)に、発達障害6第節精神障害者

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