R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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157第6節 精神障害者はうつ病や不安障害などを中心としてそれぞれに分布していると考えられます。また、高次脳機能障害は、精神疾患として分類されていない可能性も多分にあります。病院報告によると、精神科における精神疾患の入院患者数はゆるやかに減少しており、令和元(2019)年では27万2,096人となっています。また退院患者の平均在院日数は265.8日となり、こちらも若干減少しています。精神障害者保健福祉手帳について見てみましょう。平成30(2018)年度保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)によると、年度末に精神障害者保健福祉手帳が交付されている精神障害者(交付台帳登載数)は全国で106万2,700人となっています。この中には、入院中や症状または障害が重く、働くことが困難な者や働くことを希望しない者も含まれています。なお、この数は毎年5-7万人ずつ増加しています。以上の統計資料からみて、精神疾患に罹っていて治療を受けている人が約400万人、発達障害や高次脳機能障害など精神科医療機関で治療を受けていない人も含めて、長期にわたり日常生活および社会生活に制限がある人が約100万人という状況がイメージできます。⑶ 精神障害の特徴精神障害者は、障害者としてさまざまな雇用・福祉の対象となることが、身体及び知的障害者と比べて大きく遅れました。しかし現在は、雇用においても福祉においてもほとんど制度上の格差がなくなりました。その上で、精神障害者の特徴について概観します。① 脳機能の障害であるために障害が見えにくい 精神疾患、てんかん、発達障害、高次脳機能障害、認知症などは脳神経の機能に異常が出るという障害です。そのため、肢体不自由および視覚障害のように外見で障害があることを判断することはできません。相手が話した言葉の本当の意味や相手の気持ちを理解したり、自分の周りで起こっている状況を察知するなど、認知機能を発揮しなければならなくなったときにはじめて障害が見えてきます。また、過剰なストレスに遭って混乱したときにはじめて障害がみえてくるのです。 全般的な知的能力に障害がなく、認知機能に障害があるということの理解は、一般市民や企業関係者はなかなかわかりにくく、それがさらに障害の理解を難しくしているといえます。② 脳機能の障害であるために自分自身で障害を把握しにくい 自分自身に障害があるかどうかの判断・理解は自分の脳が行います。例えば、足に障害があれば、外見や動作から自分の脳が自己の障害を認識します。このように、脳というのは重要な機能ですが、その障害の有無を認識する脳の機能に障害があったらどうでしょうか。障害がなくても、自分の性格や考え方のクセは自分自身ではわかりにくいはずです。脳機能に障害があるということは、それ以上に自分自身で把握しにくいのです。③ 中途の障害が多い 発達障害や多くのてんかんを除くと、多くの精神障害は中途の障害です。それも多くは青年期以降の発症です。そのため、障害を受ける前の自分自身のイメージが残っており、障害をもってしまった今の自分自身をなかなか受け入れることができません。 また、それまでの生活が一変し、新たな人生を再構築していかなければなりません。その精神的な負担は相当なものであるといえます。その他、仕事、収入、社会的地位と自尊感情、家族の役割変更などが激変することも多々あります。このように、心理面も含めて多様な援助が必要とされます。④ 要因となる疾患が多様である 精神障害には、統合失調症、気分障害、不安障害、依存症などの精神疾患、発達障害、高次脳機能障害、認知症、てんかんなど、要因となる疾患等が非常に多様です。以前は、精神障害といえば統合失調症のことを指していました。しかし、その後にうつ病などの気分障害が精神疾患の多くを占め、さらに、うつ病の疾患像も5年ほど前から様相が大きく変わりつつあります。それに加えて発達障害が大きくクローズアップされてきました。 そこからいえることは、障害のある個人によって障害となる部分が違うことです。このことから、支援を行う際には個別性がかなり重視されます。“精神障害者の就労支援”と考えるのではなく、“精神障害があるこの人の就労支援”というように考えて支援することが求められます。⑤ 精神疾患に対する根強い偏見が残っている 一般市民が受け止めている伝統的な精神障害者像としては、統合失調症に罹っている人があげられます。わが国の精神障害者支援策は統合失調症患者を中心に考えられてきました。そして、1980年代後半までは、第3章 第6節

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