R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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158第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第6節です。そして、過去に見たり聞いたり体験した知識と受信した情報とを照合し、適切な言動を選択決定するという処理機能にも障害があることが多いようです。最後に、決定した言動を適切に相手に伝えたり表出する機能にも障害があることが多いようです。これら一連の流れを認知行動といいます。この機能に障害が出ます。そのため、言葉の理解力や記憶力に障害がなくても、コミュニケーションなどの対人技能、場に適した行動などに支障を来します。 さらに、一つひとつの具体的な作業や行動はできるが、それらを組み合わせてまとまりのある一つの作業や行動を行うことにも支障を来します。例えば、食材を包丁で切る、鍋で茹でる、フライパンで食材を炒めるなどの部分的な作業はできても、全体を調整して“美味しいカレーを作る”となると困難となってしまうなどです。 このような認知機能の障害は知的障害でも起こります。しかし、知的障害の場合は全体の知的能力に障害が出るため、周りもそれを理解し、受容する場合が多いでしょう。精神障害のように部分的な能力に障害がある場合は、周りはなかなか理解し受容できず、“怠けている”“意欲がない”と捉えられてしまい、さらに対人関係に支障を来してしまいます。イ 自信と自尊感情の低下によるさまざまな影響 精神障害の多くは中途障害であることから、障害を受ける前の自分と比較して、能力の低下を身にしみて感じることになります。また、発達障害など先天的な障害も含めて障害を受けたことによる多くの失敗経験、療養生活や庇護的な生活を送る中で長期にわたり指示をされる生活、周りの無理解や偏見、周囲が再発を心配してチャレンジさせてもらえないことなどから、自信と自尊感情が大きく低下してしまいます。 自信や自尊感情が低下すると、本来ならできる能力があっても力を発揮できなくなってしまいます。それが周りの評価をさらに下げ、自信と自尊感情がさらに低下するという悪循環に陥っている場合が多く見られます。 これは私たちでも起こりうることです。「練習ではできるのに本番ではできない」「カラオケボックスでは歌えるのに、多くの人が行き交精神障害者は医療の対象とされ、福祉や雇用の支援対象とはなっていませんでした。医療は入院中心の治療であり、退院もあまりなかったため、一般市民が地域で暮らす精神障害者と会ったり交流したりする経験もありませんでした。また、その頃のマスコミ報道も、重大事件と精神障害者を関連づけるようなされ方が多かったといえます。これらのことから、一般市民は“精神障害者を知らない”ことから偏見が起こったと考えられます。精神障害者の社会復帰施設や医療施設などの建設の際には周辺住民の反対運動が各地で起こっていたこともありました。 しかし、うつ病が増加したことから、身近な人が精神疾患に罹ることも多くなり、少しずつ偏見は薄まってきたと感じられますが、障害がわかりにくいこともあり、まだ依然として残っているといえるでしょう。このことは、精神障害者自身の内なる偏見を生み出し、彼らが障害や疾患を受け入れて、前向きに治療やリハビリテーションに取り組むことの支障にもなっています。 ⑥ 疾病と障害が併存していることが多い 精神障害者の多くは、精神科医療を継続しています。そのことから、医療的な面から見た“疾病”の側面と、生活面から見た“障害”の双方を併せもっているといえます。そして、疾病が悪化すると障害が重くなり、疾病が回復していくと障害が軽くなるというように、相互に影響を与え合うという特徴があります。 このことから、職業生活の支援を行う際にも、医療機関との連携は欠かせません。疾病と障害の影響や相互作用を良い循環にしていくような支援が理想的です。⑦ 共通した障害 精神障害は多様な疾患や脳機能の障害によって引き起こされることはすでに述べました。しかし、すべての精神障害者が必ず抱えているわけではありませんが、共通した主たる障害がみられることも事実です。特に障害としてあげられるのが、「認知機能の障害」と「自信と自尊感情の低下」です。以下にこの2点について述べます。ア 認知機能の障害 知的障害と違い、発達期に脳の全般的な機能に障害を受けているわけではありません。目の前で起こっている場面の状況を把握し理解すること、投げかけられた言葉の裏に潜む意味を理解すること、あいまいな状況を理解することなど、脳の受信機能に障害があることが多いよう

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