R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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161第6節 精神障害者⑴ 採用時の留意事項① 意欲や希望を重視する 応募してきた精神障害者の採用を検討する場合、疾病の診断名、精神症状の重症度、入院期間、職業前訓練の実施などを採否の判断に用いることが多くあると思います。しかし、これらと就労達成率との間に相関はないというのが、国内外の研究によって明らかになってきました。唯一就労率と相関があるのは、「本人の働きたいというモチベーションの度合い」でした。そのため、意欲や希望を重視することが重要であるといえます。② 就業支援機関の意見を十分に聞く いままで述べたように、精神障害者の障害は多様化しています。これは、障害によって表れる特徴が多様化していること、障害のレベルに個人差が大きいことと、(職業)リハビリテーションを受けた度合いにも個人差が大きいことが考えられます。 そこで、採用に当たって、就業支援機関のスタッフに、障害状況や対処方法について聞くことが大切です。送り出す側の就業支援機関スタッフは、企業側に対して、助言および協力する義務があると思って差し支えありません。納得するまで、わからないことは就業支援機関のスタッフに何でも聞くとよいでしょう。 また、障害者の雇用の促進等に関する法律が一部改正され、平成28(2016)年4月から、事業主は、雇用した障害者の障害や能力に応じた合理的配慮をしなければならなくなりました。そのためにも、具体的な配慮内容を就業支援スタッフに聞くことはますます必要となるでしょう。③ スタッフ同行の職場実習を行って判断する 就業支援機関のスタッフから精神障害者の障害状況や対処方法を聞いても、それはあくまでも予想であり、職場での実際の様子ではありません。また、よほど経験豊富なスタッフでなければ、的確な助言はできません。結局は、障害者に実際の作業場面を体験してもらい、自己の職業能力を評価してもらうとともに、企業の目で評価することが確実です。職場実習は、企業側に事実を知ってもらうための有効な方法です。特に、精神障害者の雇用が未経験であったり、過去にうまくいかなかった経験がある企業の場合は、職場実習2精神障害者に対する雇用上の配慮の際に就業支援機関のスタッフに同行してもらうと、適切に判断できる確率が大幅に上がります。 職場実習の制度または、それに関連する制度としては以下のものがあります。  ア 障害者トライアル雇用(窓口はハローワーク)  イ 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業(窓口は地域障害者職業センター)  ウ 職務試行法(窓口は地域障害者職業センター)  エ 就労移行支援事業および就労継続支援事業(窓口は障害福祉サービス事業所)④ 各種援助制度の活用 精神障害者を雇用する際には、上記の制度のほか、事業主の経済的負担の軽減を中心として、人的サービスまでを含めて多種多様な援助制度が整備されています。これらの制度は、障害程度、採用経路、所定労働時間、賃金などによって利用できるかどうか決まり、また、サービス内容にも長短があります。要件等が複雑なので、経験豊富な就業支援機関のスタッフ、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県支部に相談するとよいでしょう。⑵ 採用直後の配慮事項 精神障害者に共通する障害として認知機能障害と自信および自尊心の低下が挙げられます。ここでは、採用直後の配慮事項として2つの障害について取り上げ、さらに、疾患別の対処方法について知っておくべきことを述べることとします。① 認知機能障害への配慮ア 仕事の教え方と選び方 人間が状況を認知する方法は、視覚(目)、聴覚(耳)、触覚(皮膚など)、臭覚(鼻)、味覚(舌)です。認知機能に障害がある場合は、視覚と聴覚など多様な方法を活用することで、情報漏れが少なくなり、効果的です。ですから、仕事を教える場合は、「言葉で説明する(聴覚)」ことに加えて、視覚からの情報として、「やって見せる」、「手順書」および「説明書・解説書」を渡す、「仕上がり状況を絵や写真で見せる」などの配慮があると理解が進みます。第3章 第6節

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