R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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162第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮第3章 第6節るなどの問題となります。そこで、自信と自尊感情を取り戻す配慮が効果を発揮します。その方法として“ストレングスモデル”が有効であることがわかってきました。 ストレングスモデルとは、「強み・長所」に焦点を当てた援助方法です。疾患や障害、苦手なことや問題点ではなく、精神障害者自身及び取り巻く環境(家族、地域、職場、仲間その他)がもっている健康な部分や可能性に焦点を当てるものです。 精神障害者本人の関心や夢・希望もストレングスととらえます。対象者は精神障害者なので、できないことや問題点、課題などはたくさんあると思います。どうしてもそこに目がいってしまいます。しかし、精神障害があっても「何ができるのか、どのようなことが得意なのか、その人の魅力は何なのか、どのような対処法を持っているのか、どんな環境(職場)であれば働けるのか、どのような支援があれば働けるのか」に焦点をあてると、見えなかった長所や強みがいろいろと見えてきます。すると、援助する側の見方が変わります。いろいろな可能性が見えてきます。 そして、できていること、得意なこと、長所などを対象者本人に言葉にして伝えることで、対象者自身が自分の長所や強みに気づき始めます。作業中に、できたことをほめるというのは大きな自信回復になります。自信や自尊感情が回復してくると、意欲が増し、課題も改善していくことが多くあります。改善するというよりも、本来持っている力が出て来たということです。私たちは、できていないことや失敗についてはいろいろと本人に言いますが、できていることはあまり言わない習慣があります。できていること、よいことをあえて言葉に出してみましょう。 逆に、課題に焦点を当てるとどうなるでしょうか。課題に焦点を当てると、対象者本人の自信と意欲の低下、夢と希望の消失を招きます。そして、援助する側も、本人のできない理由ばかりを考えて、それを正当化してしまいます。それでは障害のある従業員は戦力として成長していきません。 また、自信を失っている精神障害者は、スト さらに、認知機能に障害があると、認知した情報を「処理する・整理する」ことがうまくできません。その場合は、「わかりやすくする」工夫が必要です。例えば、「やって見せるだけではなく手を添えて教える」「手順書をフローチャートにする」「文章や説明を短くする」などの配慮があると、さらに理解が進みます。 さらに、一つひとつの具体的な作業や行動はできるが、それらを組み合わせてまとまりのある一つの作業や行動に支障が出ることも認知機能障害の特徴です。その場合は、「仕事を細分化する」「臨機応変に対処しなければならない作業や複雑な作業をはずして、作業を構造化する」など、担当してもらう仕事を再構築する必要が起こる場合もあります。手順書が作成できないようなあいまいで複雑な作業は、認知機能障害があると対応できない場合が多いといえます。また、指示を出す場合も、一つずつ出すと混乱しません。 以上の配慮があると、最初は時間がかかっても、結局は能率が上がります。イ 勤務時間 統合失調症や気分障害などで入院治療が長引くと、心身の持久力が低下します。また、認知機能に障害があることから、職場では常に緊張状態でいることが多く、さらに休憩時間の過ごし方もどうしてよいかわからず、上手に休憩を取れない精神障害者は多くいます。このことから、入職当初は休憩の回数を多く設ける、1日あるいは1週間の労働時間を短くするなどして、仕事に慣れてもらい、その後、休憩の回数を減らしたり、労働時間を長くしていくといった配慮があるとよいでしょう。 まずは、週の所定労働時間を15~20時間から始めてみましょう。最低でも3週間後、慣れるに従って、本人や関係機関のスタッフと相談しながら増やしていきましょう。十分可能と判断できる場合は、30時間から始めてみましょう。当初に無理をしないことが長く働いてもらうためのコツです。② 自信と自尊感情が低下している場合の配慮 自信と自尊感情が低下したままだと、本来その人が持っている能力が発揮されない、少しのきつさで仕事に来られなくなる、退職につなが

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