R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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167第7節 発達障害者現率を示すものではない点には注意が必要です。学校教育における対応は義務教育を中心として充実してきたところですが、指導上の困難は、教育的対応によってどのように改善されるのか、あるいはどのように深刻になっていくのか、障害との関連をどのように推計していくのか、について注目していく必要があります。あわせて、職業リハビリテーションの支援を必要とする場合には、特に、高等学校や専修学校、大学・大学院における進路指導やキャリアガイダンスで計画・実施される移行支援について注目していく必要があります。⑵ 発達障害者支援法の対象者平成17年4月施行の発達障害者支援法では、「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされています。これまで、診断に携わる医学はもとより、療育や教育、福祉、職業リハビリテーションの関係者において、“知的障害は、発達障害に含まれる”と受けとめられてきました。しかし、知的障害はすでに教育・福祉・障害者雇用等の施策の対象として法的に位置づけられていることから、発達障害者支援法の対象はこ●れ●ま●で●の●施●策●の●対●象●に●該●当●し●な●い●とされた障害を中心として定められた経緯があります。したがって、発達障害者支援法が定める発達障害の範囲は、いわゆる発達障害の範囲から知的障害を除いたものとなっていますが、これらの障害と知的障害の合併の有無について明記されているわけではありません。知的障害については発達障害に区分される障害ですが、すでに雇用対策上の障害としてまとめられていますので、第5節を参照してください。⑶ 障害者施策における発達障害我が国における障害者施策は、障害者基本法等により、障害者の自立及び社会参加の支援等、基本的にノーマライゼーションの理念に沿った社会を実現することとされています。また、障害者の定義については、障害者基本法の一部改正(平成23年)により「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とされています。これを受けて、障害者総合支援法や障害者の雇用の促進等に関する法律でも発達障害は「障害者の範囲」の中に同様に位置づけられています。⑷ 本節で扱う発達障害の範囲 ――知的障害との関係――発達障害は、“発達期”に“様々な原因によって中枢神経系が障害された”ために“認知・言語・学習・運動・社会性のスキルの獲得に困難が生じる”と説明されています。損傷部位や損傷時期が明確でない点が脳損傷や脳血管障害とは違いますが、中枢神経系の障害が推定される点では高次脳機能障害(第8節の2)と類似した特徴をもつ場合があるという見方もあります。また、発達障害とは、発達期に起こる“様々な障害”を包括する概念ですが、どのような障害を包括するのかについては、未だに明確な分類基準はありません。しかし、療育や教育をはじめとする対応や処遇に関する類似性並びに共通性からみると、知的障害、広汎性発達障害・学習障害・注意欠陥多動性障害などを包括するものとして概念化が進んでいます。ここでとりあげている障害の場合、学習障害の定義では“知的障害はない”と明記されていますが、注意欠陥多動性障害では、診断基準に知的障害の合併の有無は明記されていません。また、知的障害と合併することの方が多いとされている広汎性発達障害では、合併しない場合を「高機能」自閉症や「高機能」アスペルガー症候群などと呼んで区別することがあります。一方、知的障害の場合の「軽度」は「中・重度ではない」を意味します。発達障害のある生徒への教育対応としては、通常学級や高等学校において特別な支援を行う場合だけでなく、特別支援学級(心障学級など)や特別支援学校(注)発達障害の診断はアメリカ精神医学会のDSM-5(診断統計マニュアル第5版)かWHO(国際保健機関)のICD-10(疾病・傷害及び死因の統計分類第10版)のいずれかで行うことが一般的です。これらの診断分類や基準はそれぞれに改訂の歴史がありますが、発達障害については2015年にDSM-5が公表され、大きく改訂されました。一方のICD-11は2019年に改訂が採択され、DSM-5に共通した構成となりました(自閉症圏の多様な診断名が「自閉スペクトラム症」に統合される等)。なお、発達障害者支援法の発達障害の定義はICD-10によっていますので、日本語版が発行される予定の2022年までは現行の条文で説明される見込みです。当面、従来の診断名が混在する状況があることに注意が必要です。第3章 第7節

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