R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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170第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮ならないこと、とされています。【問題への対処】ADHDは「行動抑制」と「実行機能」の障害であると理解され、改善のために、薬物療法や行動療法が提案されています。このような対応により、成長とともに問題が改善されていく傾向があるとされています。しかし、近年、成人期のADHDの課題についてもとりあげられるようになってきています。⑶ 知的障害のない広汎性発達障害(高機能広汎性発達障害/高機能自閉症/高機能アスペルガー症候群)/自閉症スペクトラム障害(High Functioning Pervasive Developmental Disorders:HFPDD /Autism Spectrum Disorder:ASD)【自閉症スペクトラム障害について】新しい診断分類では、「広汎性発達障害」にかわって、自閉症圏の障害としての共通性を重視した診断名として「自閉症スペクトラム障害」が使われることになります。「スペクトラム」という言葉は、連続しているという意味で使います。図2では、「自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)」という用語について、定型発達から典型的な自閉症までを自閉症の強弱で一続きのものとみなす点で、広汎性発達障害を広く統合する概念であるという考え方を表しています。ここでは従来の診断分類による「特定不能の広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」なども自閉症圏の障害であること、しかし、「自閉症」という診断名に比べると自閉症の特徴は軽度であることが示されています。ただし、自閉症の要素(社会コミュニケーション及び対人的相互作用の問題・行動や興味、活動の制限の問題)は共通していても、その現れ方は多様です。自閉症圏の障害にもさまざまあって、見た目には違う症状のように見えても自閉症として連続しているのだ、というものです。また、「スペクトラム」は、知的に障害のある場合もあるが、ない場合もあり、それは連続しているという場合にも使います。高機能自閉症や高機能アスペルガー症候群という表し方をするときには、「自閉症スペクトラム障害」の高機能(知的障害を伴わない)者をさしています。【診断基準:DSM-5】自閉症スペクトラム障害は、自閉症圏の障害として2つの基準にそって診断されます。A 社会コミュニケーション及び対人的相互作用の問題B 活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗などの問題これまでと異なる点としては、感覚に対する反応の乏しさや過度の反応に関する点が着目されたことがあげられます。なお、症状は児童期早期に存在しなければならないが、社会的な要求が制限された能力を超えるまで、十分に顕在化しない可能性もあるとされています。【問題への対処】自閉症スペクトラム障害は、認知的・社会的そして行動上の機能に重大な混乱と影響を及ぼす複合的な障害であると理解されています。このため、治療・教育・支援に際しては、薬物療法や行動療法をはじめとしてさまざまな方法が試行されてきましたが決定的な治療法は未だないというのが実状です。個別の重症性や複合性に対応した包括的なアプローチが必要とされており、現実にプログラムも提案されています。しかし、このような対応によっても、長期的予後を含め、問題解決の困難な障害であるとされています。高機能の自閉症スペクトラム障害者の場合、言葉の遅れが目立ちにくいことから、一見、コミュニケーションに困難が少ないと受け取られることがあります。これは、知的機能の障害を伴わないことによるものですが、基本的には自閉症圏の障害の特性の問題と認識することが重要であると考えられています。図2 自閉症スペクトラム障害 (井上,2011)定型発達特定不能の広汎性発達障害アスペルガー症候群高機能自閉症自閉症第3章 第7節

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