R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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176第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮8第節その他の障害者① 難病対策による難病の慢性化に伴う新たな障害 我が国では難病対策として、国の研究班による治療研究、医療費助成、さらに長期の治療を続けながらの社会参加を支援しています。「難病等による障害」はすべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象であり、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)やハローワーク等による職業リハビリテーションの対象でもあります。ア 難病とは 1970年代に国の難病対策が開始された時には医療費助成の対象となる難病は8疾病でしたが、その後、新たな難病が特定され診断治療も進んだ結果、令和3年4月現在、医療費助成の対象となる「指定難病」は333疾病で、その患者数は約90万人強となっています。 難病には全国の患者数が数万人になるパーキンソン病や潰瘍性大腸炎のような疾病だけでなく、全国の患者数が10人未満という疾病も多く、専門医以外の一般の医師や産業医にも知られていない疾病も多くあります。 平成27年施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)では、難病を「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」としています。特に生産年齢(15歳以上65歳未満)で患者数が多い疾病としては、消化器系疾病(潰瘍性大腸炎、クローン病等)、自己免疫疾病(全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎等)、神経・筋疾病(パーキンソン病、もやもや病、多発性硬化症/視神経脊髄炎、重症筋無力症等)があります。その他、難病は患者数の少ない多様な疾病を含むものであり、血液系(原発性免疫不全症候群等)、内分泌系(下垂体機能異常症等)、視覚系(網膜色素変性症等)、循環器系(特発性拡張型心筋症等)、呼吸器系(サルコイドーシス 医学の進歩にかかわらず完治が困難な「難病」と呼ばれる病気は多くあり、誰もが発症する可能性があります。我が国では1972年から難病対策を進めてきました。その結果、多くの難病は、治療を続けながら就労を含む暮らしを送れるまでに症状を抑えることができるようになりました。 しかし、多くの難病は未だ最新治療によっても完治させることが困難であるため、安定した就業継続、障害悪化の防止や早期対応等のためには、職場での治療と仕事の両立支援への理解と協力が不可欠です。治療で障害の進行が抑えられていれば障害者手帳制度や障害者雇用率制度の対象ではないこともありますが、「難病等による障害」は障害者手帳の有無にかかわらず、すべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。 ここでは、難病等による障害のある人(以下「難病のある人」という。)が、治療の継続と両立しながら、能力を発揮して継続して働ける職場づくりのポイントを紹介します。具体的には、「難病」についての先入観や誤解を正す、意欲があり適性の高い人材を採用する、本人や主治医等とのコミュニケーションにより多様で個別性の高い難病を正しく理解するなどです。⑴ 難病等による障害の特徴 仕事による疲労は適度の休憩や勤務時間外の体調管理や睡眠、休日を使って疲労回復し、疲労と回復のバランスをとることが職業生活を継続できる大前提です。難病のある人の場合、仕事による疲労の蓄積と休養による疲労回復のバランスが、障害のない人よりも多かれ少なかれ崩れやすくなっています。難病等の症状が悪化した場合の症状は疾病により多様ですが、症状の悪化を防ぎ職業生活を安定させる雇用管理の課題は疾病にかかわらず共通しています。このような体調悪化の兆しは外見からは分かりにくいため、雇用管理のためには職場でのコミュニケーションが重要になります。1難病等による障害第3章 第8節

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