R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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178第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮要です。進行の早い時期に職場に相談があれば、長期的視点でのタイムリーな対策も可能であり、在宅勤務の導入等の検討の準備も行いやすくなります。進行に伴う設備改善等や配慮の必要性に応じて、障害者手帳の取得についても本人と相談し、医師の意見を確認するとよいでしょう。④ 多様な身体障害等の原因疾患としての難病等 専門的に言うと、「難病等」とは医学的な診断治療の対象である疾病のことであり、一方「障害」とはそれによる生活機能(心身機能、活動、参加)の問題状況を意味します。難病等は多様な身体障害等の原因疾患となり、その一部は障害者手帳制度の対象となります。一方、「難病等による障害」には障害者手帳制度の対象となっていない生活機能の問題状況も多く含まれ、障害者手帳の有無にかかわらず職場の理解や配慮が重要です。代表的な難病で例を示します。ア 炎症性腸疾病(潰瘍性大腸炎、クローン病) 下痢や下血、腹痛で入院し診断されることが多く、それをきっかけとした退職が多くなっていますが、実際は治療により数ヶ月で症状は安定するため、就業継続(休職と復職)の支援が重要です。小腸や大腸の炎症に対して、手術で腸を切除して身体障害者手帳の対象となっている人もいますが、現在では治療・服薬と自己管理で症状を抑えている人が多く、その場合は障害者手帳の対象になりません。難病の中でも最も就労例の多い疾病です。イ 自己免疫疾病・膠原病(全身性エリテマトーデス等) 免疫機能が自分自身の体に対して反応してしまい、体の様々な部位で炎症が起こる、女性に多い病気で、様々な種類があります。全身性エリテマトーデスは、その代表的なもので、日光の紫外線に皮膚が過敏に反応したり、過労等がきっかけとなり、湿疹、口内炎、消化器炎、腎臓・心臓・呼吸器等の臓器障害、関節炎、筋肉炎等が多発し、発熱や全身疲労が顕著になりやすいことが特徴です。症状が進行して関節障害等や腎臓機能障害の程度が大きくなった場合では、障害者手帳制度の対象にもなりますが、ステロイド剤等の服薬や自己管理によって症状を抑えている人の多くは障害者手帳の対象ではありません。 重労働はもちろん、運搬等の中程度の肉体労働も、筋肉痛や関節痛が起きやすいため、膠原病のある人たちには苦痛となり得ます。けでなく、難病のある人が差別の懸念から必要な配慮の申出が困難になる等、職場での理解や配慮のためのコミュニケーションの大きな妨げとなっています。職場においては、後述する治療と仕事の両立支援の流れに沿って、主治医から正しい情報を得たうえで、労働者本人と人事労務担当者、産業保健スタッフ、上司等との関係者間で話し合い、関係者ができるだけ納得を得られるような形で対応することが重要です。イ 体調悪化の兆しの自覚の職場で申出のしやすさ 体調悪化の兆しとして、痛みや倦怠感、疲労や発熱など症状として本人に自覚されますが、そのような症状の有無や程度は外見からは分かりにくいものです。主治医から正しい情報を得たうえで、上司等から労働者本人に声掛けを行うなど、労働者本人が体調の変化について申出をしやすくし、体調管理を確実に行える職場環境を整えることが重要です。ウ 症状のない場合でも定期的通院等が必要であることへの理解と協力 難病等は病状や体調が安定している場合であっても、完治しているわけではなく、定期的な通院で診察や検査を継続することが不可欠です。特別な検査のために別途通院が必要となる場合もあります。外見からは何も問題がないように見えることから、職場の同僚や上司に通院の必要性が理解されにくく、本人が通院しにくくなったり、職場での人間関係の悪化等の原因にもなったりします。難病のある人が健康かつ安全に働き続けるためには、定期的通院の確保が必要であることについて、必要に応じて上司や同僚に説明する等、理解や協力が得られるようにすることが重要です。エ 進行性の難病の発症初期から相談しやすい環境づくり 難病等の中には、進行性で現在の医療では進行を止めることが困難な疾病があります。在職中に進行性の難病等を発病しても、通勤や職務遂行等に影響が出る程度に症状が進行するまでには数年〜10年以上かかることが一般的です。現状では、症状がかなり進行してから職場に相談があることが多いのですが、今後、進行性の難病のある人がより早期に職場に相談しやすくし、発症初期に職場に相談があった場合、本人も職場も将来不安から過剰反応することなく、進行の見通しを確認し、現在と当分の間の対応と将来への長期的プランを分けて考えることが重第3章 第8節

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