R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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180第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮きない」という先入観が一般的にみられます。そのような先入観による採用拒否や退職勧告、その他の不利な扱いを懸念して、難病のある人の中には、病気を隠して働くことも多くあります。このような状況は、本人の治療と仕事の両立が困難になるだけでなく、企業の健康や安全への配慮上も問題となる悪循環をつくっています。 そのような悪循環を断つためには、募集採用時だけでなく、就職後も社内の従業員向けに、治療と仕事の両立支援や障害者差別禁止等の基本方針を明示し、難病のある人が差別をうける心配なく、職場で必要な配慮について相談しやすい環境を整えることが重要です。難病というだけで不採用にしたり就業禁止にしたりすることは、合理的理由のない差別的取扱となります。 また、障害者雇用率に算入されない難病のある人について「雇用のメリットがない」等の発言が企業や支援者から聞かれることがあるようです。「障害や難病のある人は働けない」「企業の負担が大きい」という先入観を除き、障害者が職業人として活躍する機会を保障し、その能力を正当に評価するという、障害者差別禁止や合理的配慮提供の義務化の趣旨を再確認することが重要です。② 募集採用時の合理的配慮 難病のある人は、就職活動において、就職後に必要となる配慮を確保するための説明と、意欲や能力のアピールの両立が困難になっています。難病のある人が無理なく活躍できる仕事は一般求人のデスクワーク等にも多いことから、難病のある人が一般求人に応募することは稀ではありません。難病のある人の募集採用時には、難病のある人が安心して病気や必要な配慮について開示できる環境整備や、十分なコミュニケーションのための時間を確保することが合理的配慮になり得ます。ア 治療と仕事の両立支援等の方針の明示 偏見や差別のおそれから、難病や配慮について就職活動で説明するかどうかを迷っている人が多くいます。治療と仕事の両立に向けて職場の理解と協力の必要性を認識していても、募集採用時の企業側の「難病」への反応を予測できず迷う人が多いのが現実です。このような人たちは「健康状態」を一般的に聞かれても回答に困っています。 現在、難病に限らず、がん等の治療と仕事の両立支援の普及が進んでいます。がんや難病は誰もがかこさない予防的な対策や、発作で突然倒れる危険性を考慮するために、産業医等も入れて仕事内容を検討することが必要です。ケ 後縦靱帯骨化症 背骨を縦につなぐ靱帯は柔軟性があり、首、胴体、腰を自由に動かすことができますが、これが肥大・骨化して首等のこわばりや痛みが生じ、さらに、骨化が進行し脊髄を圧迫するようになる病気です。病気が進行して、脊髄麻痺と同様の下半身等の麻痺になると身体障害者手帳の対象になります。しかし、そこまで進行していない場合も、首等の痛みや、手足のしびれ等があり、疲労が溜まりやすく、また、転倒しやすく、脊髄損傷を起こしやすいので、仕事内容を産業医等と検討する必要があります。コ 原発性免疫不全症候群 原発性免疫不全症候群は、体内に侵入した細菌やウイルスを排除しようと働く「免疫機能」が生まれつき機能しない病気です。主な症状は、感染症(風邪、化膿など)にかかりやすいことで、それが肺炎や敗血症等に重症化しやすいことです。免疫機能を高めるための通院への配慮と、その人の免疫機能に無理のない職場や仕事内容に主治医や産業医と相談して留意することで、基本的に就労は十分可能です。具体的には、デスクワークの仕事で人ごみを避けることや日頃から職場の同僚の手洗い・うがい励行や空気清浄器の設置等の協力が必要な場合があります。⑵ 差別禁止と合理的配慮の提供 「難病等による障害」は障害者手帳の有無にかかわらず、障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。「難病」についての先入観や偏見によらず、意欲があり適性の高い人材を採用し、本人や主治医とのコミュニケーションと正しい理解に基づき、能力を発揮して継続して働いてもらえる職場づくりの取組が重要です。「難病等による障害」は必ずしもすべてが障害者手帳制度や障害者雇用率の算定の対象にはなりませんが、適切な仕事内容と職場の理解・配慮があれば無理なく活躍できる難病のある人の公正な雇用はすべての事業主の法的義務です。① 「難病」の正しい知識の普及と差別防止 難病医療の進歩は急速であったため、正しい最新の知識の普及が十分でなく、「難病=働けない、雇用で第3章 第8節

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