R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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191第8節 その他の障害者3若年性認知症⑴ 若年性認知症とは認知症は“物忘れ”という症状を起こす病気の総称であり、年齢を重ねるとともに発症しやすくなり、一般的には高齢者に多い病気です。しかし、年齢が若くても認知症になることがあり、65歳未満で発症した場合には「若年性認知症」とされます。高齢であっても若年であっても、病気としては同じで、医学的には大きな違いはありませんが、「若年性認知症」として区別するのは、この世代が働き盛りであり、家庭や社会で重要な役割を担っているので、病気によって支障が出ると、本人や家族だけでなく、社会的な影響が大きいためです。本人や配偶者が現役世代であり、認知症になると仕事に支障が生じ、結果的に失職して、経済的に困難な状況に陥ることになります。また、子供が成人していない場合には、親の病気が子どもに与える心理的影響が大きく、教育、就職、結婚などの人生設計が変わることにもなりかねません。① 認知症の定義と症状認知症は、脳の神経細胞が十分に働かなくなるために起こる病気です。脳が縮んで小さくなったり、血管が詰まったり切れたりして脳が変化し、記憶などの知的な働きが低下していきます。記憶以外にも、時間や場所の感覚(見当識)、計画的に段取りよく物事を進める力(実行機能、遂行機能)、判断力、言葉をうまく使う、ものを見分けるなどの働きが障害されます。その結果、日常生活や仕事などの社会生活がうまく送れなくなります。認知症になると、新しい記憶、つまり最近の出来事が思い出せなくなります。しかし、以前のことや身についた記憶(手続き記憶)は思い出せます。また、見当識の障害により、道に迷ったり、「今日は何日?」と何回も聞いてくることがあります。さらに、実行機能が障害されると、料理のようにいくつかのことを同時に段取りよく行う作業がうまくできなくなりますが、野菜を切ったり、皿を並べたりという1つ1つのことは今まで通りにできます。職場においても、同時に複数の作業をすることは苦手になりますが、1つ1つ、順番に行うことはできます。これらの症状のあらわれ方は、原因疾患によっても異なり、個人差もあります。原因疾患によっては、暴言や幻覚・妄想などの認知症の行動・心理症状と言われる症状が現れることがあります。特に前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症では、行動・心理症状が目立つとされています。認知症の原因が変性疾患(アルツハイマー病など)の場合は、いつの間にか始まって、ゆっくりと進んでいくことが多いです。症状の進み方は人によってさまざまです。進み方に影響する要因としては、病気の原因疾患が大きいですが、治療法や対応の仕方、周囲の人との関係性など、本人を取り巻く環境も重要です。② 若年性認知症の実態若年性認知症の全国疫学調査はこれまでに3回行われており、最新の結果が令和2年3月に公表されました(基準日は平成29年1月1日)。それによると、全国の若年性認知症の人は35,700人であり、人口10万人(18~64歳)当たりの有病率は50.9人でした。前回平成21年の調査1)ではそれぞれ、37,800人、47.6人でしたので、有病率は若干増加しているのに有病者数が減少しており、当該年代の人口が減少しているためと考えられます。高齢者の認知症では、年齢階級が5歳上がるごとに有病率が倍増する傾向がみられますが、若年性認知症においても40歳代以降で、このような傾向がみられました。また、男性に多い傾向は同様でした。発症年齢は平均で54.4歳であり、前回の51.3歳より3歳ほど上がっていますが、働き盛りの年代であることには変わりありません2)。日常生活自立度は、Ⅲ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが日中を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが夜間を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲb)が約3割と最も多く、次いでⅡ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内でも多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱb)が約2割でした。基本的な日常生活動作では、歩行と食事では約6割が自立していましたが、排泄、入浴、着脱衣では自立は5割以下であり、2割以上の人が全介助を必要とし、介護者の負担が大きいことが明らかになりました。第3章 第8節

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