R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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194第3章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮ミュニケーションが難しくなってきた場合には、質問や会話の内容に関連した実際の品物を示すとよいでしょう。言葉に身振り(ジェスチャー)を付けたり、わかりやすい文字で書いたり、スマートフォンなどの画面に表示したりすることも有効です。視覚以外にも、音やにおいなどが理解の手掛かりになることもあります。伝える側の態度や顔の表情も大切です。表情が重苦しかったりすると、認知症の人は敏感に反応します。また、話し方も早口にならないよう、ゆっくりと穏やかなトーンで話します。会話の時には、ものの名前がなかなか出てこないということがよくあります。質問の時には「おやつは何がいいですか?」といった開放型の質問には「さあ・・なんでもいいです」としか答えられなくても「お饅頭とケーキはどちらがいいですか?」といった選択型の質問には答えられます。わかりやすい言葉を使うこと、会話の途中で否定したり、中断しないこと、事実と異なることを言ったら、さりげなく自然に訂正することなどを心がけると、会話が円滑にできるようになります。認知症の人とのコミュニケーションは、その人の尊厳を取り戻し、自信をつけるようなポジテイブな言葉かけが効果を生みます。⑹ 今後の課題近年は、障害のある人、がんなどの慢性疾患の治療を受けている人などが働きやすいよう、企業における治療と仕事の両立支援が重要視されてきています。適切な治療を受けながら仕事を続けることができれば、労働者にとっても企業にとってもメリットがあります。しかし、これらの対象となる疾患とは異なり、若年性認知症は人数も少なく、認知度が低いだけでなく、現時点では治癒・回復することが困難で、進行する疾患という特徴があります。そのため、企業においては、若年性認知症に対する理解がまだ乏しく、従業員に該当者がいた場合の対応にも遅れが出ていると考えられます。退職すると収入が減り、若年性認知症の人のいる世帯では、経済的に困難な状況になります。既に報告したように、家族調査において、認知症になってからの世帯収入は6割で減っており、家計状況は、「とても苦しい」と「やや苦しい」が合わせて4割でした7)8)。さらに調査時の困りごととして、今後の生活や経済状態に不安がある」が上位に挙げられており、経済的な問題が不安の要因として大きいことは明らかです。わが国では、若年性認知症対策は常に認知症施策の勤中及び勤務中の本人の安全確保及び事故防止」があげられ、取り組みとしては、「契約期間が満期となったら、契約更新を行わない事とする」「休職とせず業務継続を図り給与を維持したが、1年後、症状進行により給与を見直し、降級を実施した」「作業内容を変更したが、業務定着が不可能となり、合意退職した」などがありました。⑷ 相談機関や制度・サービスの認知度若年性認知症の人の就労継続支援に関する相談機関に関する知識では、約5割の企業で、「市町村の相談窓口」を把握しており、次いで、「地域障害者職業センター」が約4割でした。「その他」として、「従業員に認知症サポーターがいる」「認知症110番」「民生委員」などが挙げられました。若年性認知症と診断された従業員が利用できる制度やサービスに関しては、知っていると答えた企業がもっとも多かったのは「障害者手帳」であり7割以上でした。次いで、「高額療養費制度」「障害年金」「傷病手当金」「確定申告による医療費控除」「介護保険制度」「障害者雇用率制度」が6割以上でした。一方で、これらの制度を実際に利用している企業は少なく、最も多かった「傷病手当金」でも8.3%で、無記入の企業が多くみられました。「その他」の制度として「成年後見制度」が挙げられました。⑸ 接し方のポイント6)認知症が進行すると、次第に言葉で意思を伝えることが難しくなり、対応に苦慮するでしょう。言葉によるコミュニケーションは私たちの日常で最も重要であり、言葉が通じないと、認知症の人とのコミュニケーションは難しいと考えてしまいがちです。しかし、言葉以外でもコミュニケーションは可能であり、認知機能が低下しても、この「非言語的コミュニケーション」は保たれているのです。また、単に情報を伝えるだけでなく、コミュニケーションを通じて、お互いを信頼し、仲間意識を分かち合い、その人の存在を認めるという意味もあります。具体的には、認知症の人は注意障害のため、集中できないことが多いので、きちんと向き合い、アイコンタクトをとることで、話し手に集中してもらいます。目の高さを合わせ、名前を呼んだりして注意をひきます。周囲が雑音などでうるさかったり、照明が明るすぎたりする場合はなるべくそれらの原因を取り除きます。静かな環境に移動してもよいでしょう。また、言葉だけでのコ第3章 第8節

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