R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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18第1章 障害者雇用の理念と現状この障害分類の試案は、次のような実践的な意義があります。第一は、障害を総合的に把握する視点を与えたことです。障害は、心身の「機能・形態障害」としてばかりでなく、個人的なレベルとしての「能力障害」や社会的レベルとしての「社会的不利」も含めて、多面的にとらえるべきであることを明らかにしました。第二に、障害の各水準は、独立した側面のあることを明確にしたことです。「能力低下」は「機能・形態障害」を、また、「社会的不利」は「能力低下」と「機能・形態障害」を契機として発生する、という因果的な関係が成り立つことは確かです。ですが同時に、能力障害は必ずしも機能・形態障害によって、また、社会的不利も能力障害や機能・形態障害によって、完全に規定されるわけではありません。第三に、障害の各水準と直接的に対応した異なるアプローチが必要であることを示しています。独立した側面があるがゆえに、機能・形態障害に対しては治療的な手法で、能力障害に対しては対処行動の開発で、社会的不利に対しては環境の改善によって、障害の軽減や除去は可能であることを明らかにしました。第四は、異なる視点をもつ職種や専門職あるいは立場の違いを超えて、障害の多面性についての共通した言語や理解をもたらしたことです。⑵ 生活機能の分類最初の試案(ICIDH)は、1990年以降になって、数多くの構造モデルの提唱と議論がなされました。そうした経過を踏まえて、2001年に「国際生活機能分類(ICF)」として改訂され、図1のモデルが提唱されています。これは、従来のような障害の状態を分類するのではなくて、障害のない人も含めたすべての人を対象とした「健康状態」そのものに焦点を当てています。そうした状態のあり方が、心身の「機能や構造」、個人レベルでの「活動」、社会レベルでの「参加」のそれぞれで異なることを示しています。しかも、その違いは、「個人因子」や「環境因子」といった「背景因子」の影響下にあることを強調しています。障害は、こうした健康状態の変調であることから、すべての人に起こり得ることとされます。ですから、最初の試案(ICIDH)で示された「機能・形態障害」「能力低下」「社会的不利」などは、それぞれ、「機能や構造の変調」「活動の制限」「参加の制約」として現れること、しかもそれらは、年齢や性別、価値観などの「個人因子」や、物理的あるいは社会的態度や法制度などの社会的な環境を含む「環境因子」によって異なることを示しています。⑶ わが国の障害者の定義障害者対策の基本的な理念を示した「障害者基本法」では、障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害」とし、また、てんかん・自閉症・障害を伴う難病などは附帯決議で補足しています。しかし、実際に行われる施策では、同法の理念を踏まえて作成された各種の法律や制度によって定義や範囲が少しずつ異なります。例えば、18歳以上の身体障害者、知的障害者は、身体障害者福祉法にある「身体障害程度等級表」による身体障害者手帳の所持者や、知的障害者福祉法に基づく療育手帳の所持者です。これらの人は、手帳の有無と記載された等級に応じて、法に明記されている各種の行政サービスの対象者となります。また、精神障害者は精神障害者保健福祉手帳の交付などで、その範囲が規定されています。さらに、学校教育の分野では、特別支援学校の入学基準として、障害の種類ごとに「心身の故障の程度」が定められています。また、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」としたうえで、同法の運用では、身体障害者を身体障害者福祉法の別表で、知的障害者や精神障害者等は、厚生労働省令によって別に定めています。なお、労働者災害補償保険法でも障害の程度を定めています。心身機能・身体構造健康状態(変調または病気)活動参加環境因子個人因子第1章 第2節

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