R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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21第2節 障害のとらえ方応えようとする活動です。対処の仕方は、すべての人が同じ方法である必要はなく、どんな方法であろうとも、与えられた課題に結果として応えることができればよいのです。「適応」とは、こうした対処行動を通して、「満足」と「充足」の双方を高めていく過程です。その定義は、「生活体が、ある特定の生活環境のもとでその機能を円滑に維持し続けている状態」です。したがって、良い適応状態とは、個人の行動が社会の規範に合致し、しかも、それによって個人の感情が安定している状態です。こうした適応に至る道は、短期間で終了するのではなく、生涯にわたって続き、職業生活の全体を通して向上させていくことになります。これはまた、キャリアを形成してゆくことでもあります。つまり、図2の「QOL(生活の質)」の向上は、そうした適応の過程すなわち、キャリア発達を通して得られるとみなしています。⑷ サービスや支援の戦略適応性を向上させてQOLの充実に向かうには、個人と環境や集団の双方に対する、併行した支援が必要です。図2の下方にある「介入と支援」の矢印の方向は、このことを示しています。双方の側からサービスや支援をすることで、個人の「満足」と環境や集団の「充足」が、らせん階段のように上昇して適応の向上に至ると考えています。このように、サービスや支援は、個人の側に向けて「機能の発達」を促す方向と、集団や環境の側に向けて「資源の開発」を促す方向の、二つの戦略があります。① 機能の発達個人の側に向けた支援である「機能の発達」は、いいかえると、能力開発です。これはさらに、「技能の発達」と「技能の活用」に分けられます。「技能の発達」は、まだ習得できていない個人的な機能を、教育や訓練で新たに学習して発達させることです。また、「技能の活用」は、既に習得した機能的な特性を、実際の環境の中で十分に活用できるように訓練することこのように、職業的な自立に向けた支援を進めるには、個人特性と環境要件の双方を的確にとらえることが必要になります。5個人特性と環境要件のとらえ方⑴ 個人特性の把握仕事に従事するのに必要な個人特性は、「ワークパーをいいます。例えば、初めてワープロを使う人は、その使用ソフトを習得するのにゼロから一生懸命に学習します。それが「技能の発達」に相当します。これに対して、既にワープロを打てる人でも、就職先の事業所で使っているソフトが自分の学んだものと違う場合には、改めて学習し直します。けれどもそれは、初めてワープロを学ぶときよりもずっと楽に学習できて習得も早いものです。これが「技能の活用」に相当します。② 資源の開発他方で、環境や集団の側に向けた支援である「資源の開発」は、既存の企業や組織や機関、さらには制度などの様々な社会資源を「調整」したり「修正」することをいいます。「資源の調整」は、社会資源を選択したり、活用の仕方の調整や援助によって、個人の特性に応じて活用できる資源を結び付ける支援です。また、「資源の修正」は、個人の価値観や必要性に応じて、既存の社会資源そのものを改善していくことをいいます。例えば、働きたいという人がいれば、その能力や興味や価値観などに応じて、地域の生活支援の機関を含む様々な関係機関と調整することが必要になるでしょう。また、ある事業所に就職することを目指しても、その作業環境や仕事そのものが本人の能力に見合う内容でない場合には、作業場の改善や職務の再設計、あるいは新しく仕事をつくり出すといった修正をすることも考えなければならないでしょう。⑸ 役割の代替こうした戦略の中で、特に、職場の集団や環境に対する「資源の開発」は重要です。なぜなら、それは、「役割」そのものを変える働きをするからです。「役割」の内容を変えることで、障害のある人の職業生活への参加を保障するとともに、個人のニーズが達成されて「満足」を得る機会も増大します。前述した障害分類の思想は、こうした職場の集団や環境などの「環境因子」の関与こそが、社会参加の道が開かれることを主張しているのです。第1章 第2節

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