R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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24第1章 障害者雇用の理念と現状⑴ 雇用主の不安と対処障害者を採用する意思はあるものの、実際に受け入れるには様々な不安があって、どうしても一歩を踏み出せない場合があります。一般的に指摘される事業主の不安は、例えば、①生産性が低下して能率を維持することが困難、②労務管理のノウハウがない、③向いた仕事がない、④不測の事態が起きたりその危険がある、⑤経済的負担が増大する、⑥標準的な作業方法を適用できない、⑦人間関係の維持が難しい、といったことです。こうした不安は、客観的な根拠のないままに否定的で非好意的な態度をとる「偏見」や、過去に経験した少数の障害者からのイメージですべての障害者を見る「ステレオタイプ(絞切り型)」な評価に起因することがあります。そうした偏見やステレオタイプの根拠は、障害のある人に対する断片的で偏った情報を基にしている場合が多いでしょう。では、実際に障害のある人を採用した事業主の方々は、どのような人でしょうか。図5は、二次元の軸上で四つのタイプに事業主を分類した結果です。このX軸は「雇用した後の対応」を示し、指導や環境の整備を重視するのか、それとも採用後は放置するのかに6雇用主の対応と支援体制よって分けています。またY軸は「雇用の過程での志向性」を示し、人間的な温かさから受け入れるのか、それとも労働力を重視するのかで分けています。このタイプ1と4は、採用の余地さえあれば、教師や親、ハローワークなどの関係者の依頼に基づいて、希望者をできるだけ受け入れようとする場合です。タイプ2と3は、本人の生産性に強い関心を持ち、事前に各種の検査等で労働力としての将来性を慎重に見極めたうえで採用に踏み切る場合です。また、タイプ1と2は、雇用した後の指導や訓練を重視し、作業環境を整備する努力を継続して実行する場合であり、タイプ3と4は、採用のときに期待したとおりの働きがあるとの前提に立ってそうした対処を考えず、教育や訓練に特別の配慮をしない場合です。障害者を雇用する事業主の方々は、タイプ1や2の態度、中でも、タイプ1が望ましいとされます。つまり、就職後の訓練と雇用管理を前提とした採用です。これは前述したように、「障害」のあり方は個人特性と環境要因との相互作用によって決まることを踏まえた結果ですし、実際にも、これらのタイプの事業主の下では、たとえ知的障害の人であっても継続的に雇用されることが多い傾向にあります。図5 事業主のタイプ第1章 第2節

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