R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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27第3節 企業経営と障害者雇用1967年に公害基本対策法が公布、施行され、1971年には環境庁が設置された経緯があります。さらに1990年代、国際的な規制緩和の進展により海外直接投資が増加し、経済がグローバル化するとともに市場競争も激しさを増しました。地球規模での環境破壊、鉱物資源や生物資源の獲得競争の激化、児童労働のような人権問題と労働問題、アンフェアな商慣行の強要などについて、グローバル化を推し進める多国籍企業に対して、投資家や消費者、市民活動団体などが、その行動に注目するようになったのです。そして、このようなグローバル化の進展により生じた諸課題の対応について、国際的な合意の形成がなされることになります。1998年のILO「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言(新宣言)」や2000年の「国連グローバル・コンパクト」、OECD「多国籍企業行動指針(改訂版)」などです。これらの政府系国際機関の活動と国際的なNGOの活動、例えば国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)がCSRの議論を進める原動力となりました。欧州においては、域内各国での差異はありますが、CSRが政府主導でなされていることが特徴です。政府機関である欧州委員会は2001年に「グリーン・ペーパー」、2002年「通達」、2004年の欧州CSRマルチステークホルダー・フォーラム「最終結論と勧告」、2006年「通達」によりCSRに関する欧州委員会としての方針を示しています。近年では2019年12月にEUからの温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする欧州グリーンディールを打ち出し、気候中立な社会、経済の実現に向けて官民あげて取り組むとしています。一方アメリカでは、企業による社会貢献は、かねてよりフィランソロピー(Philanthropy)が盛んでしたが、現在においては株主だけでなく、広くステークホルダーの利害に対する責任ある企業行動であると意識され、多くの企業が関心をもっているとされています。例えば、「顧客・従業員・地域社会・株主」の4つのステークホルダーに対する責任を具体的に明示すコンプライアンス(法令等の遵守)についてわが国で関心が高まったのは、1990年代以降の度重なる企業の不祥事の発生にあります。粉飾決算やインサイダー取引、リコール隠し、違法カルテル、耐震偽装、食品偽装など枚挙にいとまがありません。経済のグローバル化にともない、国境を越えてビジネスをしていくとき、現地の法令や文化的背景を学びその国の法令を遵守することが必須となります。当初は税務や財務、取引慣行や販売戦略等を中心に進められ、雇用管理の場面においては、労働時間の適正化などが特に重要な対象として捉えられてきました。今日では、IT技術の進展から個人が簡単にWeb上にリアルタイムに画像や映像等の情報を提示できる環境になり、組織内部で仕事をする個人レベルでのコンプライアンスが意識されるようになっています。そしてコンプライアンスが重視される領域は企業活動全体に拡大する傾向にあり、企業の社会的責任と重複する概念となってきています。「企業も社会の良き市民たれ」は、米国の企業の多くで共有される理念といわれますが、そのように考えますと単に法令に触れないように「マニュアル」などを整備するような予防的な姿勢ではなく、自らが積極的に責任を果たしていく姿勢が企業に求められているのではないでしょうか。企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility(以下「CSR」という。)は、法令遵守を前提として、それを超えた範囲と水準に広がる企業の自主的な規範形成への営みです。後述するように、各国で推進する組織、方法は異なります。それぞれ企業の行動を規定する法制度が違い、雇用慣行と労使関係も異なるからです。そしてCSRは、社会の企業観や文化とも密接に関係します。「自主的」な取り組みですから、唯一の定義、方法があるわけではありません。CSRの議論の源流は1960年代から70年代にあります。1976年にOECD「多国籍企業行動指針」、1977年にILO「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」が示されました。わが国においてもこの時期に、公害問題で企業の社会的責任が厳しく問われ、1コンプライアンスと企業の社会的責任(CSR)3第節企業経営と障害者雇用第1章 第3節

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