R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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28第1章 障害者雇用の理念と現状第1章 第3節る企業もみられます。一方でアメリカの企業経営に対する考え方は「株主至上主義」が強いと言われてきました。しかし2019年8月には、日本の経団連のような経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブル(BR)が幅広いステークホルダーに配慮した経営をすることを推奨すると声明を出したことからもアメリカの企業もCSRについてさらに重きを置くことになりそうです。欧州と異なりアメリカでは、政府機関による積極的な関与や法規制は好まれませんが、市民個々人の社会的関心の高さ、例えば人権運動や、1960年代のベトナム反戦運動など自由を尊ぶからこそ公正を追求する国民の倫理観が、CSRを推進する主体となっており、多くのNPOやNGOがこれに関わる活動をしています。日本においては、前述のような公害問題や当時の利潤を優先する風土の中での相次ぐ企業不祥事の発生から、企業経営者が自ら危機感を共有し、そのことが日本におけるCSRの議論の進展に寄与したと考えられます。日本経団連が「経団連企業行動憲章」を制定したのは1991年、バブル経済が崩壊した年でした。その後、1996年12月17日改定、 2002年10月15日には「企業行動憲章」に改定し、2004年5月18日の改定を経て、2010年9月14日に4回目、2017年11月は5回目の改定が行われてきました。この過程で1996年改定は、消費者・ユーザー、株主、地域社会、従業員、取引先など広くステークホルダーとの関係も含め10か条の「経団連企業行動憲章」となり、またこれに関する「実行の手引き」も作成されました。2004年改定は、前文で社会のCSRの取り組みに対する注目の高まりに言及し、「ステークホルダーとの対話を重ねつつ社会的責任を果たすことにより、社会における存在意義を高めていかねばならない。」とし、それらの取り組みについては「情報発信、コミュニケーション手法などを含め、企業の主体性が最大限に発揮される必要があり、自主的かつ多様な取り組みによって進められるべきである。その際、法令遵守が社会的責任の基本であることを再認識する必要がある。」とあり、CSRを強く意識した改定が行われています。またこのとき「実行の手引き(第4版)」も改定されています。2010年改定では、ISO 26000(社会的責任に関する国際規格)の観点から改定が行われています。また企業だけが社会的責任を負うということではなく、あらゆる組織が自らの社会的責任を認識し、その責任を果たす(SR: Social Responsibility)の考え方について言及し、前文では「とりわけ企業は、所得や雇用の創出など、経済社会の発展になくてはならない存在であるとともに、社会や環境に与える影響が大きいことを認識し、「企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)」を率先して果たす必要がある。」としています。2015年に国連で、持続可能な社会の実現に向けた国際統一目標である「SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」が採択され、その達成に向けて民間セクターの創造性とイノベーションの発揮が求められている中で経済成長と健康・医療、農業・食料、環境・気候変動、エネルギー、安全・防災、人やジェンダーの平等などの社会的課題の解決とが両立し、一人ひとりが快適で活力に満ちた生活ができる社会の実現を目指すことは国連で掲げられたSDGsの理念に合致するとして、SDGsの達成を柱とした考え方が盛り込まれています。経済同友会が「第15回企業白書 『市場の進化』と社会的責任」を公表したのは2003年であり、この年は日本のCSR元年と称されています。CSRについて経済同友会は「企業と社会の相乗発展のメカニズムを築くことによって、企業の持続的な価値創造とより良い社会の実現をめざす取り組み」としています。そして「持続可能性(sustainability)」をキーワードとして掲げ、「経済・環境・社会のトリプルボトムラインにおいて企業は結果を求められる時代になってきている」として、CSRは、「企業と社会の持続的な相乗効果に資する」、「事業の中核に位置づけるべき“投資”」であり、「コンプライアンス(法令・倫理等遵守)以上の自主的な取り組みである」と記しています。CSRを企業の「経済的」責任とする考え方や「コスト」「フィランソロピー」との考え、「義務的」「法令遵守」とする考えを越えた取り組みを企業自ら目指し、社会に対する責任ある行動を希求し、積極的に取り組んでいることが見て取れます。2015年9月の国連サミットで、国連加盟193か国により採択され、加盟国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標であるSDGsも、図にある17の「ゴール」と各ゴールのもとに169の「ターゲット」が示され、それらを244の指標で測ることになっています。SDGsは、企業の役割・責任について、2030アジェンダ第67条で「民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である。我々は、小企業から協同組合、多国籍企業までを包含する民間セクター

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