R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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32第2章 障害者の雇用管理上の留意点を持った人材を企業に取り込むことにより、企業を変化させ活性化することで、多様性があり変化の激しいマーケットでの生き残りを模索しています。この、多様な価値観を柱とする企業戦略をダイバーシティ戦略と言い、企業経営の指針とするところが増えてきています。いまだに、障害者雇用を社会貢献や雇用率充足のためのその場限りの対応策と考えている企業もありますが、既に多くの企業では、多様な価値観を持った障害者を採用・育成し、本業での活躍を通じて企業価値全求められています。障害者は障害のない人と比べ、その能力や価値観などのばらつきが大きいところに特徴があるといわれています。ですから現在は障害者をも組み込んだ新しい人事労務管理のシステムをつくるよいチャンスだともいえます。本章では、企業が行う人事労務管理の中で基本となる雇用管理について取り上げます。「障害者の雇用管理」といった場合、障害のない人とは別の独自の体系があるわけではありません。障害者も従業員である以上、一般の雇用管理の対象となります。ただし、障害があることによる不利の部分をできる限り軽減し、能力発揮を促進するために雇用管理上の配慮が必要となることが多くあります。このような点を指して、ここでは「障害者の雇用管理」とよんでいます。本章の第2節から第10節では、雇用管理の各局面である「募集・採用」「配置・職場適応・定着」「職業能力開発」「賃金・労働時間等の条件」「継続雇用・退職」「健康と安全」「職場環境」「虐待防止」「カウンセリング」について解説します。本節では、障害者の雇用管理全般にかかわるテーマについて述べます。一つ目は社内での支援の仕組みづくり、二つ目はハードとソフトの両面からみた職場環境・条件の整備・改善についてです。また、最後に中小企業における障害者雇用の状況にふれます。従業員の雇用管理は、それぞれの企業が自らの判断と責任のもとで行うべきものですが、一方、企業は社会的な存在であり、その社会のルールである法を遵守する義務があります。特に障害者の法定雇用率制度は企業の社会的連帯の理念に基づいて定められたものであり、従業員43.5人以上の企業にとっては、この法定雇用率(2.3%)を達成することは重要な経営課題の一つといえます。障害者雇用の拡大は大きな社会的課題であり、障害者のことは「福祉の問題」であり企業が行う人事労務管理とは関係がない、法定雇用率制度への対応も未達成部分について納付金を納める方法を選択すればそれでよい、という発想はますます通用しなくなってきています。企業行動の変化が社会を変えていきますし、社会もまた障害者雇用に積極的な企業への支援を惜しまないはずです。また最近では、人事労務管理における考え方として「ダイバーシティ・マネジメント」が注目されており、女性や高齢者、外国人などと並んで障害者もその対象となってきています。グローバル化や技術革新の進展、従業員の価値観の多様化などの経営環境の変化の中で、人事労務管理についても、従業員個々人の能力や価値観の多様化をこれまで以上に重視したマネジメントへの改革・転換が1第節障害者の力を活かせる組織・職場づくり⑴ 障害者雇用の位置づけ 企業は社会の一構成員として経済活動をしています。このため企業が本業とは別に社会に役立つ活動を行うことは、当たり前のことであるとされてきました。障害者雇用についても、この一環として本業と切り離した社会貢献活動の一つとして取り組んだ企業が多かったのですが、最近は別の視点から障害者雇用に取り組む企業が増えています。これらの企業は、女性や高齢者、外国人そして障害者のように多様な価値観1法定雇用率の達成は重要な経営課題の一つ2社内での障害者雇用支援の仕組みづくり第2章 第1節

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