R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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33第1節 障害者の力を活かせる組織・職場づくり第2章 第1節体の向上を計るという取り組みを行っています。これら企業は障害者雇用を経営戦略の一部と位置づけているのです。以下の「T社」の事例は、障害者雇用は経営戦略であるという視点から、障害者支援の仕組みづくりに取り組んだケースです。【ケース】T社は「ダイバーシティ&インクルージョン❶」を経営戦略の一つと位置づけて障害者雇用施策を推進していたが、障害者雇用の方針を立案する本社人事部と、採用や雇用管理を行う現場との連携が希薄であったことから、会社の方針が実際の採用活動や雇用管理にうまく反映されていなかった。そのため、会社として障害者雇用を推進していくのは本社人事部であることを明確にした。また、現場に精神保健福祉士の資格を持つ社員がいたことから、当該社員の意見を踏まえながら、精神障害者の雇用を進めていった。⑵ 現場主義の仕組み作り経営理念の浸透や人事制度の改革は、通常は本社施策立案部門を中心とした本社主導で行われます。しかし、障害者雇用の拡大は、単に施策立案部門の主導だけではなかなか進みません。それは、実際に障害者を配置する(している)部門の協力がないとすぐに限界がくるからです。T社では、現場担当の精神保健福祉士が障害者雇用施策の企画についても関わるようになったことから、従来円滑ではなかった本社人事部と現場の連携が円滑に進むようになり、「採用活動をどの程度推進して良いか」とか「労務条件の見直しが可能か」といった、現場サイドの質問や疑問がダイレクトに障害者雇用施策に反映されるようになっていきました。このように、施策立案部門と雇用現場間で情報が円滑に伝わるようになると、課題が迅速に把握でき、その対応について社内の多くの人の知恵を活かすことができます。社内で障害者雇用を拡大するに当たっては、これまでの狭い経験や情報に基づく偏った障害者イメージからの検討はできるだけ避け、むしろ障害者が配置される雇用現場のマネージャーや従業員の創意・工夫を引き出す仕組みをつくり、それを人事労務部門がサポー❶ インクルージョン:多様な人々が対等に関わり合いながら一体化している状態を意味する国際的な概念。ノーマライゼーションをさらに進めた考え方。トしていくことがきわめて重要です。障害と一口にいっても、その内容は多種多様であり、 また、配置される職場の仕事の内容も多種多様で両者の組み合わせは無数にあり、どれがよいかは事前になかなか予測できないものです。ましてや職場の環境・条件の改善によっては、職務遂行上の障害は軽減する可能性もあるのですから、こうした点を考慮すると、仕事に精通している職場部門のメンバーが障害者を交えて十分に話し合いながら、障害者雇用を拡大していく機会や仕組みづくりがより理想的だといえます。【ケース】T社では、製造現場を長年経験した社員が精神保健福祉士として勤務していることが強みとなった。当該社員が現場の業務内容と障害の特性を熟知していることから、新たな業務開発にあたり、現場との業務開発交渉が円滑に進むようになった。更には、精神障害者を理解したうえでの心理的な安全を考慮した職場環境作りは、精神障害者の安定かつ長期の就労に貢献した。これを受けて障害者雇用促進施策の検討に際し、この強みを活かして、会社として精神障害者の採用を積極的に推進することを目指しマスタープランを策定した。このプランには①精神障害者雇用を強みとした雇用施策を実施する②安定的で長期的な就労を目指す③現場をバックアップする組織を本社に整備する④ジョブコーチなどの専門資格の取得をめざす等、現場の意見を反映した具体的かつ効果的な内容を盛り込んだ。さらに、計画を実行するためには、より広範な分野に及ぶ専門的な知見が必要であると考え、専門的なスキルを持った社員で構成する「課題発掘チーム」を本社に組織し、直接・間接的に精神障害者の雇用促進・定着に取り組む体制を整えた。課題発掘チーム(例)メンバー役割産業医健康管理・安全衛生等精神保健福祉士専門家との連携企業在籍型ジョブコーチ業務遂行支援、会社への助言職業生活相談員職業生活全般の相談など産業カウンセラー障害者、管理者へのカウンセリング建築士執務環境整備・改善など社会保険労務士労働条件等の管理※課題に対して「事後対応型」から「予測対応型」へと切り替えることができ、障害者とも話し合う機会が増え、長期就労を目指せる環境が整った。

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