R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
36/359

34第2章 障害者の雇用管理上の留意点⑶ 受け入れ環境の整備T社では、取組の結果、雇用率が向上し、プランに掲げた目的を達成することができました。その要因は、敢えて法定雇用率達成に的を絞った施策を取らず、障害者雇用を「自社の新しい価値を創造するための経営戦略」として位置づけることで、全社的かつ継続的なバックアップ体制につなげたことだと言えます。経営戦略としたため、具体的な施策に落とし込んだマスタープランが通常の事業計画同様に策定され、各施策の達成に向けて優先的にPDCA❷サイクルを回し続けることになり、計画途上で生じた課題や問題に対して、会社全体から必要に応じて資源や人材のバックアップが受けられる体制が整備されました。たとえT社の「課題発掘チーム」のような、従来の組織を超え専門性の高いチームを編成することが難しいとしても、障害者雇用に関心があり協力的な人々を支援グループ(サポーター)として障害者雇用に結びつけておくことはとても効果的です。 例えば、各職場に障害者雇用担当を置き、定期的に情報交換や研修などスキルアップを行い、障害者雇用の現状と取組を周知することにより、継続的に障害者雇用に関心を持ってもらう。また、障害者を受け入れていない部署に受け入れている部署の見学を義務付けることで、障害者雇用に常時関心を持ってもらうなど、組織的かつ継続的な活動ができます。また、支援グループ内の意見を吸い上げることで、見逃していた課題が見いだせると共に、新たな解決方法も見つかるかもしれません。さらに、障害者雇用を支える人材を社内から発掘することにもつながり、障害者雇用に関わる人材が増えることで、それら人材の経験や専門スキルが活かされ、当人のキャリアビジョン構築にも役立つなどの多くの利点があります。 ⑷ 社内周知活動の具体例このように、障害者雇用を進めていくためには、経営者層、採用担当者、障害者受入れ部門はもとより、全社員が障害者雇用に関心や理解を持つことが大切です。しかし現場では「社内全体に障害者雇用への関心が薄いように感じます。社内の関心を高めるにはどのようにすればよいでしょうか?」と担当者が悩んでいることが多いのも事実です。そこで、社員に障害者雇用の必要性を浸透させ、障害者を受け入れる環境の整備と社内コンセンサス形成を図るための主な取り組み事例を以下にあげてみます。① 社内(経営)会議などで周知・検討社内(経営)会議などにおいて、障害者雇用の必要性を周知するとともに、取り組みを推進していくことを提案し社内の合意形成を図っていきます。この場合、雇用率の充足状況など、数値化したデータにより課題を具体的に示します。また、支援機関や支援制度の内容にも触れた雇用計画を提案するとさらに説得力が増すでしょう。② 社員研修の実施社員向けの障害者雇用に関する研修会を開催し周知啓発を図ります。企画や講師派遣については、地域障害者職業センター等に相談すれば、助言や協力を得られます。社員に障害者雇用のイメージを持ってもらうには、働く障害者の動画をDVDで見ていただくのが早道です。なお、高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者雇用に関する啓発DVDを無料で貸し出しています。また、社内報などに障害者雇用に関するコーナー欄を作成し全社員に周知している企業もあります。地域障害者職業センターや中央障害者雇用情報センターで、様々な資料を作成しておりますので、お気軽にご相談ください。③ 職場実習の受け入れ等いざ採用となると、不安や知識不足から心理的抵抗感が生じることもあるでしょう。このような場合には、障害者を短期インターンシップで受け入れてみましょう。実際に障害者と働くことにより具体的イメージを持つことができます。また、一緒に働いてみると抱いていた不安も薄れ、受け入れの抵抗感も少なくなります。地域の特別支援学校や就労移行支援事業所などでは、就労訓練の一環としてカリキュラムに職場体験実習を組み込んでいるため、常に職場実習先を探している場合があります。⑸ スモールステップで取り組み開始障害者雇用支援の仕組みは、各社それぞれ事情が異なりますのでこれが定番というものはありません。ですから、「案ずるより産むが易し」です。まずは❷ PDCA:Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4段階を繰り返すことによって、生産・品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のこと。第2章 第1節

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る