R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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62第2章 障害者の雇用管理上の留意点フィードバックに対する指導のポイントは、①現状把握、②原因追及、③本質追究、④対策樹立、⑤目標設定という流れで行うことです。①は自分の行動に対してどこが不十分かを気づかせます。気づかないときは、指導者がヒントを与えます。②は不十分な行動別にその原因を考えます。しかし、障害者の中には自分で原因を見出すことが苦手な人が少なくありません。その時は指導者が一緒に考えて原因を導いていきます。③は不十分な行動の中で何が一番の課題なのかを追究します。④は不十分な行動別にどのような対策が有効なのかを考えます。この時も指導者が一緒になって考え、障害特性を考慮した最も良い対策を検討します。⑤は対策のうちで重点項目を絞り、次の目標とします。なお、ミスに対するフィードバックは、ただ考えるだけではなく、実際に作業を繰り返してみることが大切です。⑷ 障害状況に応じた指導のポイント一般的に、技能や技術は教えられて覚えるのではなく、見よう見まねで覚えるものといわれています。一般論としてはそれでよいかもしれませんが、障害者の場合は一概にそうとも言えません。障害によっては、見ようにも見えない人もいるし、また、たとえ見えたとしても、麻痺などのためにまったくちがった身体(からだ)の動きになることもあります。しかも、自分の見え方や身体の動き方を感覚的に把握することに課題がある障害者は少なくありません。こうしたことから、障害者には見よう見まねの前の段階の指導、つまり、障害状況に応じた指導が必要なのです。障害状況に応じた指導とは、障害による作業の制限を障害者本人の立場から見極めて、指導者が改善策を発見することです。そのためには、作業におけるさまざまな身体の動きを想像し、あたかも自分の身体の中で障害を乗り越える試行を繰り返しながら、障害者本人の状況に応じた改善策を創り出していく必要があります。こうした「障害者の立場になった作業シミュレーションの視点」について、そのポイントを姿勢、目線、タイミング、身体尺度からまとめます。① 姿勢作業を正しく行うためには、まず、姿勢が基本となります。姿勢は作業における正否、安全、やりやすさという面から、最も適切な体の構えかたをする必要があります。したがって、仕事を始めるに当たっては、つねに姿勢を確認するのがポイントです。例えば、障害による機能的な制限から猫背で正面をきちんと向けない場合を考えて見ましょう。猫背は作業姿勢として無理な構えが多いために正確な動作ができず、疲労もかさみます。このような状態を回避するには、その人の状態に合わせた構えかたをシミュレーションしてみると、身体の重心のズレが判明します。そこで、この状態を調整する工夫として、例えばリュックサックを背負わせるといったような改善策を創り出して行くのです。② 目線姿勢の改善策が創り出せたら、次は目線の改善策です。目線とは、作業時に手先の動きや作業の対象物のどこを見ているかです。作業内容によって全体を見ている場合もあれば、一点に集中している場合もあり、この目線が正否に大きく影響します。とくに、障害によって見える範囲が限られる場合や、見えていない場合での把握が重要です。この見える範囲の確認は、医学的な情報を踏まえつつ、障害者の動作や作業結果をベテランの経験と鋭い観察眼によってシミュレーションしながら突き詰めていきます。例えば、通常の見える範囲が狭まっていることを確認するために、ボールをいろいろな方向から転がして受け止められるかを観察します。その上で、見える位置や体の姿勢などを変えて、作業上の制限の解消を図って改善策を創り出していくのです。③ タイミングタイミングとはカン・コツに通じるもので、一言で表現しにくいものです。いわば、作業を進める上で、手先の動きのちょうど良い頃合いというようなものです。この感覚は、言葉で伝達できる判断とは異なる感性的な側面があります。つまり、外からの刺激を身体全体で受け止める感覚であり、実際の経験に基づいて次第に習熟していきます。しかし、障害者の場合は、身体的及び精神的機能の一部が損なわれているために、タイミングの感覚に微妙な狂いを生じます。そこで、指導者が自ら障害状況を思い浮かべて作業を再現し、障害者の動きの欠点を把握することが大切です。こうすることで、障害特性に応じたタイミングを引き出すことができます。例えば、片手に障害があった場合、両手によるタッチタイピングをいかに片手だけで行うかを考えてみましょう。指導者は片手だけでタイピングのシミュレー第2章 第4節

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