R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
65/359

63第4節 障害者の職業能力開発第2章 第4節⑴ 配慮した話し方障害者とのコミュニケーションの多くは言葉で行います。「職業訓練の指導の流れ」や「職業訓練の指導のポイント」でも触れていますが、言葉は使用頻度が高く日常的に使いますから、指導者は障害者一人ひとりにあわせた配慮した話し方を最優先で習得したほうがよいです。例えば、発達障害者とのコミュニケーションにおいて、こういうことが起きなかったでしょうか?指導者「この書類は申請を行うのに必要な書類です。明日の申請に間に合うように忘れずに持ってきてください。」本 人「わかりました。必ず持ってきます。」 《明日になって》指導者「昨日言っていた申請書類を持ってきましたか?」本 人「はい、ここにあります。どうぞ。」指導者「何も記入していませんよ!どうして!」本 人「え!!」 これは、障害者本人に「暗黙の了解(お互いに常識的にわかるので言葉から省略している部分)が読み取れない」という障害特性があるのを失念して、指導者が配慮した話し方をせずに指示を出したことでトラブルが発生しました。もし、配慮した話し方をしていたら防止できたトラブルです。よくみると、指導者の指示では「申請に間に合うように持ってくる」としか喋っていません。書類の必要事項を記入することを伝えていません。なぜなら、常識的に「申請に間に合うように」から「必要事項を記入済みにする」という意図が伝わるので、喋らなくても相手に伝わるものと無意識に判断して、暗黙の了解5職業訓練での話し方の工夫にしてしまったのです。しかし、暗黙の了解を読み取ることができない障害者本人には伝わりませんので、必要事項を記入しません。けれども、言葉として指示のあった「間に合うように持ってくる」は守っています。ですから、必要事項を記入していない障害者本人を責めるのは間違っています。指示通り行動しているからです。暗黙の了解を読み取れないのは障害特性なので、簡単には改善しません。障害者本人に合わせた配慮した話し方を指導者がする必要があります。また、コミュニケーションに課題のあることが多い発達障害以外であっても、配慮した話し方は必要となります。一般的には、視覚障害者であれば、「あれ」「それ」といった指示代名詞を使わずに具体的に示しながら話します。聴覚障害者であれば、音の情報から得る状況判断が困難なので、周囲の状況を含めた説明を含めながら話します。精神障害者であれば、プレッシャーや誤解を与えないように話します。発達障害者であれば、曖昧な表現や暗黙の了解を使わずに話します。ただし、何に配慮して話すのかは、一人ひとり異なります。目の前の障害者本人をよく観察し、そしてどのような話し方だと意思疎通できるのかを話し合って、配慮した話し方を決めることが大切です。⑵ 理解しやすい話し方障害のあるなしとは関係なく、指導者は以下の事を守って話す必要があります。これは理解しやすい話し方の基本中の基本です。・聞き取りやすい適切な速度で話す。・全員が聞き取れる声量で話す。・「えっと」や咳払いなど、話と無関係な感嘆符やションをし、ホームポジションやそれぞれの指の動作範囲と役割を変えて、片手障害に合ったタイミングを創り出していくのです。④ 身体尺度仕事の作業を進めていくときには、作業途中で出来映えの判断をしながら進めていきます。このとき、出来映えの判断要素は長さ、温度、色、形など作業内容によってさまざまです。一般的に、長さであれば物差し、温度であれば温度計といったように標準化された測定器がありますが、作業途中の判断尺度は標準化された測定器を使わないことが多いです。つまり、作業途中での判断は自分の身体を通した尺度を用いていることが多いのです。長さであれば掌や指の長さ、温度であれば色の変化や音を基準にして判断します。ここで、障害による制限によっては、判断尺度自体を置き換える必要があります。例えば、知的能力の制限から数量の判断が苦手な場合は、製品を積み重ねた高さを尺度にして判断する方法に置き換えます。このように、障害者一人ひとりの特性に配慮した判断尺度を創り出していくのがポイントです。

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る