R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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64第2章 障害者の雇用管理上の留意点音を抑えて話す。・板書しながら話さない。板書を終えた後に障害者本人を見て話す。さらに理解しやすくする話し方のポイントを紹介します。まず最初に、理解しやすい話し方をするためには、指導者は一方的に話し続けてはいけません。指導者は話の節々で障害者本人の反応を確認しながら、話を続けましょう。この反応の確認方法は、障害者本人の観察で構いません。指導者は話にあわせてうなずいているかどうかを観察します。また、時々障害者本人に質問してみて、話を理解していたかどうかを確認するのもよいでしょう。もし、集合訓練で指導していて、指導者が理解しやすい話し方をしているのなら、多数の障害者がうなずいたり、指導者の方を向いて熱心に話を聞いているかどうかを判断基準にします。ところで、うなずいていなかったり首をかしげている障害者が多数を占めているときは、指導者は理解が難しい話し方をしている可能性が高いです。このような場合、障害特性による影響以外で考えられる原因には、次のようなものがあります。・指導者が障害者本人の知らない専門用語を使って話している。・指導者が話している状況や場面について、障害者本人は経験がなく想像できない。・話の前提となっている背景や状況について、障害者本人は理解していない。・指導者が話す順序が時系列に沿っていない。すなわち、これらの原因を排除することで、指導者は理解しやすい話し方ができます。まず、障害者本人が専門用語を知っているかどうかや、状況や場面の経験があるかどうかについては、障害者本人の持っている知識や経験から確認できます。日常のコミュニケーションで把握しましょう。また、話の前提となっている背景や状況については、指導者が当たり前と感じているために、うっかり障害者本人に説明することを忘れてしまうことが多いです。指導者がベテランであればあるほど、無意識のうちに説明を省略してしまう傾向があるので、注意が必要です。そのため、意識的に基本的な部分の説明も話の内容に盛り込んでおきましょう。ここで、動機づけを例にして、理解しにくい話し方と理解しやすい話し方の例を紹介します。なお、障害者本人はインターネット技術を習得するために訓練を受講しているという設定です。ただし、訓練開始直後なので、障害者本人はインターネット技術の基礎的な知識は持っていません。次の例は、障害者本人の知識の範囲内から大きく外れ、背景や状況の説明が省かれた、理解しにくい話し方になっています。おそらく、この本を読んでいる多くの方も理解が難しいでしょう。なお、網かけの部分が障害者本人の知識の範囲内から大きく外れた箇所です。【理解しにくい話し方の例】インターネットはTCP/IPによって接続されているから、これを知っておくことはとても重要です。例えば皆さんは、ネットワークに輻輳(ふくそう)が発生して困ってしまうことがよくありますよね。これは、セグメントの分け方に問題があるかもしれません。この授業で習った知識を用いて、快適なインターネット環境を構築しましょう。もし、専門的な知識と経験を持っている人なら、この話は容易に理解できます。指導者は専門的な知識と経験を持っているので、無意識のうちに、前述のような話し方をしてしまったのです。次の例は、前述の【理解しにくい話し方の例】とまったく同じ内容を話しています。ただし、障害者本人の知識の範囲を考慮して専門的な部分の言葉を変えています。さらに、説明を省いている背景や状況も追加しています。網かけの部分が言葉を変えたり、話を追加した箇所です。【理解しやすい話し方の例】インターネットは、全世界の各種機器が利用できるように、TCP/IPと呼ばれる統一された技術仕様とルールによって接続されているから、これを知っておくことはとても重要です。例えば皆さんは、ネットワークがとても重たくなって困ってしまうことがよくありますよね。頻繁に重たくなるときには、そもそもネットワークの設計に問題があるかもしれません。TCP/IPを知ることで、どのようにネットワークを設計したらよいのかがわかります。この授業で習った知識を用いて、快適なインターネット環境を構築しましょう。この例のように、無意識のうちに障害者本人がまだ覚えていない専門用語を使ったり、背景や状況を省略することはよくあることです。そのため、専門知識や説明の省略をしても障害者本人が理解できるレベルはどこなのかを、指導者は常に把握する必要がありま第2章 第4節

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