R3障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(デジタルブック版)
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82第2章 障害者の雇用管理上の留意点⑷ 保健指導① 生活習慣病に対する注意障害者の多くは運動不足気味で精神的ストレスが多いために、生活習慣病の重要な予備軍となっています。たとえば、脊髄損傷者では損傷部位以下の筋肉によるエネルギー消費が著しく減少するために、受傷以前と同じ食生活をしているとほぼ確実にメタボリックシンドロームとなります。また、脳卒中による障害者の場合には、ほとんどの場合、発症以前から高血圧や糖尿病などを有しています。したがって、障害者においては、栄養指導や衛生管理、運動指導などが、障害のない人にも増して重要です。一人ひとりの障害者が健康の自己管理をしっかり出来るように、啓発や支援に努めます。② 生活習慣病検査の際の注意医療機関で行われる検査の中には身体的負荷があるものがあります。たとえば、MRIなどの画像検査では一定時間同じ姿勢を保たなくてはならないため、障害の種類によっては大きな負担となります。また、MRIは体内に金属や心臓ペースメーカーなどが埋め込まれている場合には禁忌です。胃透視検査を障害者に実施することは、転落や造影剤排泄遅延などの危険を伴うために、望ましくありません。⑸ 障害の特性の認識と理解それぞれの障害の特性をよく認識し、どのような健康管理が必要かを理解していれば、不安や恐れを感じることなく積極的に障害者を受け入れることができます。就労を目指す障害者の多くは、健康の自己管理を学んでおり、普段の生活においては障害のない人と大きく異なることはありません。障害別にみた特徴と雇用上必要な配慮についての詳細は第3章を参照してください。とくに、改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」(資料編第4節参照)と「合理的配慮指針」(資料編第5節参照)をよく理解し、遵守することが求められます。以下に、日常の健康管理業務のなかでの指導や処置、配慮など、参考となることの概略を述べます。4各障害別の健康と安全の留意点⑴ 肢体不自由者の健康と安全(第3章第1節参照)① 脊髄損傷、二分脊椎脊髄の損傷による障害は損傷部位(脊髄高位)によって大きく異なります。損傷部位以下の脊髄と脳との連絡が絶たれることによって、両側性の運動麻痺や感覚障害、自律神経障害をきたします。頸髄損傷では、両手両足と体幹の運動麻痺と感覚障害(四肢麻痺)をきたします。胸髄損傷の場合には両下肢の麻痺(対麻痺)をきたします。いずれの場合も麻痺の程度は完全なもの(完全麻痺)から不完全なもの(不全麻痺)までさまざまですが、ほとんどの場合、日常生活には車椅子を必要とします。脊髄損傷者で特に注意しなくてはならないのは自律神経の障害です。運動麻痺は一目瞭然ですが、自律神経の障害は外見からはわからないので理解され難いという問題があります。自律神経は、血圧や脈拍、体温などの調節や、排尿排便に関わる膀胱や直腸の運動など、生命の維持に不可欠な重要な機能を担っています。そのため、最も重度の頸髄損傷の場合には、車椅子に座っているだけで血圧が低下して失神してしまったり、夏期にはうつ熱状態になって意識朦朧となったりします。作業場の室温など環境調整に注意を払う必要があります。車椅子を常用している場合に最も生じやすい合併症は臀部などの褥瘡です。運動麻痺のために長時間同じ姿勢でいるために特定の部位に圧力が集中することによって生じる循環障害に加えて、自律神経障害による血流調節の障害のため、運動麻痺だけの場合よりもさらに褥瘡ができやすい状態であることをご理解ください。脊髄損傷者に生じた褥瘡はきわめて難治性で、しばしば入院や手術を必要とするため、長期欠勤の原因になります。臀部の褥瘡の予防のためには、一定時間毎に両上肢で車椅子の肘掛けを押して体幹を持ち上げ、臀部にかかる圧力を減らして血流を促すことが必要です。これをプッシュ・アップと言いますが、作業に集中しすぎてこれを忘れることが無いように、「プッシュ・アップしていますか。」などと声掛けする配慮が求められます。そのほか、褥瘡の予防には、適切なクッションの使用や皮膚の清潔保持も大切です。褥瘡に続いて多いのが尿路感染です。神経因性膀胱とよばれる膀胱機能の障害のために、尿道カテーテル第2章 第7節

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