令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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124見えなくなり、中心部とその周辺に少し視野が残ります。求心性視野狭窄の読みについてですが、視野の中心部が正常であれば読みへの影響は比較的少ないです。しかし、視野が狭いため、行末から次の行の文頭を見つけたり、ページのレイアウトを把握したりという探索作業については著しく困難になります。歩行に関しては、一般に視野が10度を切ると困難が生じると言われています。視野が狭いため横方向からの人や車などの往来に気付きにくくなったり、曲がり角や目印の探索に困難が生じたりします。② 中心視野欠損代表的な原因疾患として加齢黄斑変性症が挙げられます。中心視野の部位である黄斑部の機能が下がり、中心視野に欠損が起こった状態になります。通常の見る動作においては、視対象を視野の中心でとらえて固視することを特に意識せずにおこなっています。このように無意識のうちに中心視野で視対象をとらえるのですが、その中心視野が見えない、あるいは見えにくい状態なので、読みと顔の認知に困難が生じることになります。読みについては、視力の高い中心視野に欠損があるために、周辺視野を活用して文字を読む必要がありますが、周辺視野の視力は中心視野に比べて低いため、視対象に極端に接近する必要のある場合があります。欠損していない周辺視野の部分で視対象をとらえる訓練がおこなわれることもあります。移動については、中心視野の欠損のみによって移動が困難になるという事例はほとんどありません。眼では、適度な明るさで視対象が結像するように、虹彩が網膜に入る光量を調節しています。カメラでいう絞りの機能と同等です。虹彩に病変があれば光量の調節ができず、明るすぎてまぶしい、あるいは暗すぎて見えにくいといったことが起こります。角膜混濁や白内障などにより、角膜や水晶体などの光が透過する部分に混濁が生じると光が散乱し、まぶしさを感じることもあります。このように適度な光量の調節ができなくなると、文字の輝度のコントラストの低下が起こり、読みに支障が出てきます。コントラストが低くなるに従い読むことのできる文字サイズが小さくなっていきます。淡い配色によるコントラストの低い文字は、視覚正常の人であれば読むのに支障のない範囲であっても、光量の調節機能が低下しているロービジョン者では読むことが難しくなることがあります。就労する上では、カラーがふんだんに用いられた資料を取り扱う機会がありますが、輝度コントラストの低い色の組み合わせがある場合には、文字や図などの情報が背景色に埋没してしまうこともあります。照明の状態も読みに大きく影響することがあります。網膜色素変性症の場合、杆体細胞が配置されている領域の視野が欠損していると夜盲となり、照明が低下するとほとんど見えない状態になります。また、見えにくいために目を近づけて見ると、頭の影が出来て見えにくくなることがあります。このような場合、一定の明るさが確保されるよう、影などができないよう照明に配慮する必要があります。一方、白内障などで光が透過する部分に混濁があると、蛍光灯の明かりや窓から入ってくる日光等の光により眩しさを感じ、コントラストが低下することがあります。このような場合、ブラインドやカーテンなどにより窓から入ってくる光を調節したり、照明を調節するなどの配慮が必要になります。色覚は錐体細胞が担当しています。赤・緑・青それぞれに対応する3種類の錐体細胞があります。例えば、赤に対応する錐体細胞では、赤い色に対応する波長領域の光を受けると錐体細胞の受容器が反応します。その結果、錐体細胞が興奮し、その情報が視覚中枢に伝達されます。3種類の錐体細胞の興奮の度合いにより視対象の色が知覚されます。杆体細胞は周辺視野に多く分布し、光の有無を感じるだけで色の識別はできません。錐体細胞の機能が低下すると杆体細胞の影響により全体的に色が白っぽくなったり、黒っぽくなったりします。また、眼の状態により実際の色とは違う色として認識している場合もあります。このように、残存する錐体細胞の機能と杆体細胞の影響により、色の知覚が難しくなったり、実際とは違う色に知覚されたりします。以上のように、視覚障害を考える上では、視力のみならず視野についても考慮する必要があります。視野障害の有無とその部位により、視覚障害のタイプも変わってきますし、それに伴い配慮すべき事項も変わってきます。コントラストの低下や錐体細胞の状況によ⑷ 明順応と暗順応の障害⑸ 色覚の障害

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