令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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3重度視覚障害者の雇用のポイント第2節 視覚障害者127このように既にスマートフォン・タブレットは視覚障害者にも普及していて、今後は就労の場面でも益々視覚障害者のための雇用対策では、障害等級1,2級の重度障害者に重点がおかれています。視覚障害の場合、左右の視力の和が0.04以下、もしくは左右の視野がおのおの10度以内で両眼視能率の損失率95%以上が1,2級の重度障害者です。したがって、重度視覚障害者という場合は、全盲者と、支援機器を利用すれば普通文字の読み書きが可能な重度の視覚障害者が含まれています。ここでは、重度障害者を念頭において、雇用上の配慮事項について述べます。視覚障害者の雇用にあたっては、⑴通勤と職場内移動、⑵コミュニケーション、⑶職種・職務内容が最も重要な配慮事項です。重度視覚障害者を雇用するにあたって、特に雇用主が心配するのは通勤における安全です。自宅から職場までの通勤経路を単独で安全に歩行できるのか、交通機関の乗り換えは大丈夫か、ラッシュ時の混雑に対処できるのかといったことが懸念されます。しかし、彼らは特別支援学校(盲学校)や視覚障害リハビリテーション施設で歩行訓練を受け、白杖を使っての安全な歩行技能を身につけています。一方、歩行技能は身につけていても、全く初めての場所を重度視覚障害者、特に全盲者が単独で歩行するのは大変困難です。したがって、数回程度にわたって通勤経路の確認を支援者とおこなえば、それ以後は単独で通勤することができます。最近では、盲導犬を利用する人も増えています。盲導犬は主人が仕事中には、待機場所で静かに待っています。全盲者の職場内移動についても特に問題はありません。初めに職場内を案内し、位置や経路を確認しておけば、その後は単独で移動できます。同僚などといっしょに移動したり、外出するときはガイドヘルプ(手引き)が便利です。視覚障害者がガイドする人の肘を軽くつかんだり、肩につかまるなどの方法でガイドされることになります。狭い場所を歩行する場合は、縦に並んで2人が1列になるようにします。慣れているところなら、視覚障害者は単独で移動できます。いつもガイドヘルプが必要という訳ではありません。活用されるようになっていくと考えられます。きちんと歩行技能をもつ視覚障害者の場合は移動能力は高いので、職場内での点字ブロックの設置や誘導チャイムの設置、トイレの改造などは必要ありません。しかし、視覚障害者が通常使用する通路には日ごろから物を置かないように注意する必要があります。外に開くタイプのロッカーの扉等も、開けたままだとぶつかってしまうことがあります。ロービジョン者でも、夜盲がある場合や強い視野狭窄がある場合は、必要に応じて通勤訓練をしておくのが望ましいです。同じ通勤経路でも昼間と夜間では明るさや照明の状況によって見え方が変わってきます。また、視野が狭いと横方向から来た人や物体に気付くのが遅れてぶつかりやすくなります。周りの者がこの点に注意する必要があります。周囲の人たちに注意を喚起する意味で、ロービジョン者が白杖を持つのも一つの方法です。明順応や暗順応の障害がある場合は、照明や採光に配慮が必要です。見え方は個人により違うので、職場のロービジョン者に確認するとよいでしょう。階段のステップや段差などで、そのエッジ部分とステップとの間のコントラストが低い場合は、ロービジョン者が識別しにくくなります。昨今では、視覚障害者が働く職場では多くの場合PCが配置され社内ネットワーク環境が構築されています。社内での情報伝達のために電子メールやグループウェア上の掲示板などを利用している場合も少なくないです。電子メールはスクリーンリーダーでの読み上げには問題ありませんし、グループウェアについてもある程度の製品でスクリーンリーダーでの読み上げが可能です。スクリーンリーダーが対応している環境では全盲者でも問題なく社内で伝達された情報を確認することができます。回覧文書が印刷物の場合は、拡大読書器等で拡大して読むことのできる視覚障害者は問題ないですが、全盲者の場合は周囲の人が読み上げてあげる、あるいは、電子データを別途配布するなどの方法があります。同じ部署の人の予定についても、グループウェアで確認することができます。同じ部署⑴ 通勤と職場内移動⑵ コミュニケーション

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